とある国の 第二章 コクチョウへ
第三話 異質な人物
ペインを仲間に引き入れたアルト。次なる旅の目標地点は彫刻を基調とした「コクチョウ」という地である。
「コクチョウという地には、かの有名な彫刻と呼ばれる物があるそうです。ペインさんは彫刻についてご存じでしょうか。」
「石を削って作る置物みたいなものでしょう?」とペインが聞き返すと、アルトはある本を取り出した。
「彫刻とは、木や石、金属といったモノを彫り刻んで像を形作ること。と、この本には記されています。石だけでなく金属も彫刻に含まれるという特徴があります。」
「じゃあこのコインも彫刻って言えるのかな。」ペインはアルトから得た金貨を手に取りだした。
「理論に従えばそのように言えるのではないでしょうか。」
「なるほど理論ね。って私はあなたに理論の愚かさを説かれた気がするのだけれど。」と半ば怒りを込めた物言いでアルトに返事をした。アルトはこのことについてばつが悪そうにしていたが、ふと何かを思い出し、再び本を開いた。
「実践とは常に正しい理論を踏まえて行うものである。」
「はあ。ちなみにその本はなんなの?」とアルトが持つ本について質問を投げかけた。良く聞いてくれたと言わんばかりの形相でアルトはその本について語りだした。
「この本は「文化の根」という本です。私が生まれたときから手にしていた本であり、この中にはこの国の歴史と文化に関する言葉が記されています。ペインさんを説得した際の言葉や、先ほどの解説は、すべてこの本から引用しました。私にとって羅針盤となる重要な本です。」
「文化の根っていうと、この国にある大きな木の名前よね。何か関係があるの?」
とある国には5つの島があり、それぞれに文化芸術が根付いています。その一つの島には、この国を象徴する文化の根と呼ばれる大木が存在しています。アルトが持つ「文化の根」という本は、この大木とともに歩んできたこの国の歴史から名づけられており、抜き出された記憶その物であるため、世界に一冊しかない本である。
文化の根は、現在彼らが旅をしている島の北に位置しており、クロノテージ王国の支配下にある。クロノテージ王国に占領される前の王であったサイショ王は、この文化の根を守っており、アルトと「文化の根」を始まりの地まで守り抜いた人物である。
「つまり、文化の根を守ってくれていて旧友でもあるサイショ王の助言で、芸術の能力を持つ人達を集めています。そうすればクロノテージ王の企みである文化の根の記憶を抜き出すことを排除できるのではないかと考えており、現在旅をしているという話です。」ペインは微笑みを浮かべ、アルトと歩みを進めた。
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