第04話 猫の情報網

「住所だとここら辺なんだけど…」

「先輩、多分ここです」

「マジ?あ、表札も丹下って書いてある」


 翌日午前中。

 私といとか先輩は店番をみな先輩に託して猫探しにやってきた。


 お店は店長が来るらしいのでたぶん大丈夫。



 いとか先輩が丹下さんの家のインターホンを押す。


 『は~い』と返事があったので「おはようございます。喫茶 めいどの藤山ふじやまとしきです。きなこちゃん探しの件で来ました」と答える。

 すると『すぐ出ます』との返事。


 本当に10秒も経たないうちに昨日の夜の依頼人、丹下たんげ 絢音あやねさんが出てきた。


「朝からありがとうございます。……今日は普通の服なんですね」


 絢音さんが少し驚きながらそう呟いた。


「あぁ…あれはお店の制服なんで」


 いとか先輩がそう返した。


 流石にメイド服で外を出歩くのは嫌。恥ずかしい。

 それに猫探しをするのにあの服は不向き。


 という訳で、今日の私達は汚れてもいいズボンの私服。


 …幽霊が着替えるって変な話だけど。


「おねえちゃんたちいらしゃい!」


 そんな元気な声と共に心春こはるちゃんも出てきた。

 私達は心春ちゃんにも挨拶をする。


 そして、いとか先輩が本題に入る。


「それで、この辺一帯は探されたんですか?」

「はい……それでも見つからなくて……」

「あ~…わかりました。とりあえず暗くなるまでは探してみます。丹下さんはどうします?」

「こはるもさがす!」

「この子もこう言ってるので、私達も探してみようと思います。あの…着いて行ってもいいですか?」

「あ~……いや。それはちょっとご遠慮いただけると…」

「探し方は企業秘密なので」


 私達は毎回、少し幽霊だからこその反則技みたいな感じで猫を見つけている。

 だから、人間には見せれない。


 いとか先輩と私の言葉に絢音さんは「わかりました」と答えてくれた。

 だけど……。


「こはるもいく~~~!!」


 心春ちゃんは一緒に行きたいらしい。

 でも残念だけど例外はないから諦めてもらうしかない。


 もう既に「お姉ちゃんたちはお姉ちゃんのやり方があるらしいから、心春はママと2人で行くわよ」となだめられている。


 私はそれを見ながら「連絡先とか交換した方が良いですよね」と聞く。


 その言葉にいとか先輩は肯定してから、ショルダーポーチの中を覗く。


 多分メモ帳を探してる。

 でも、その必要は無い。


「いとか先輩、既に準備してますから」


 私はそう言ってからショルダーバッグからメモ帳を取り出す。

 「流石しき、準備が良い」といとか先輩が褒めてくれている。


 誉め言葉をありがたく受け取りながら、メモ帳のページを千切って絢音さんに渡す。


「私といとか先輩の番号です。何かあったら連絡ください。

 あと、絢音さんの番号を聞いていいですか?」

「はい。もちろん」


 そして私はペンを取り出して、絢音さんが読み上げる番号をメモ帳にメモをする。


 メモが終わった私はいったんメモ帳とペンをポケットになおす。


「では、いってきます。何かわかるか、暗くなったら連絡します」

「お願いします」


 私といとか先輩は一礼してから丹下さんの家を後にする。

 後ろから「こはるも行く~!」という声が聞こえるけど気にせず歩いていく。


 着いてきたら驚かせてしまうから。


~~~


 とりあえず、丹下さんの家から路地2つぐらい離れた場所まで移動してきた。

 近くに誰もいないことを確認してからいとか先輩が口を開いた。


「さて、しき。やり方は覚えてるよね?」

「もちろんです。聞き込みですね」

「そう。あと霊体に成るときと実体に成るときは絶っ対、人に見られちゃ駄目だから」

「わかってます」

「よし。じゃあ何かわかったら連絡して。私はあっちに行くから。気を付けてね」

「はい。わかりました。先輩も気を付けて」


 私といとか先輩はそれぞれ別方向へ歩き出す。


 聞き込み相手を探しながら歩く。



 私達の猫探しの基本は聞き込み。

 普通じゃないのは聞く相手。



 私達が聞く相手は猫。



 私は幽霊に成ってから、猫を始めとした動物の言葉がわかるようになった。


 もちろん私だけじゃない。

 いとか先輩も、今日は店番をしているみな先輩もわかるようになったらしい。


 ちなみに、猫の中でも幽霊が見える子と見えない子がいる。

 だからが見える猫を探さないといけない。



 つまり私達は、猫に猫の居場所を聞いて猫探しをする。


 これが結構見つかる。

 流石は猫の情報網。


 ちなみに人間らしくいるときは聞こえない。

 だから話を聞くときは霊体に成らないといけない。



 そして、第一にゃんこを発見した。

 駐車場に止めてある車のタイヤの隣に白と黒の猫がいる。


 私は周りに人がいないことを確認してから、霊体に成る。

 そして猫に近づいてしゃがんでから話しかける。


「あの、茶色の子猫知りませんか?」

「んにゃ~お?んにゃ~」


 耳に入るのは普通の猫の鳴き声。


 しかし、何故か何を言っているかわかる。

 …何回かやってるけどやっぱり変な感じ。


 ちなみに言ってる内容は『茶色の子猫?見てない』とのこと。


 残念だけど知らないらしい。

 私は「ありがとうございます」と言ってから立ち上がる。


 ……これは長くなりそうな気がする。



 私は気を引き締めなおして、次の猫を探しに歩き出した。

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