第6話

三枝という男の見てくれは、眉に掛かる程の長さの茶髪に猫目の優男という風貌であった。彼の口からは流暢な現地の言葉が流れ出し『大丈夫ですか、お嬢さん。』と手を差し伸べつつ膝をついて相手の顔を覗き込んで女性の反応を伺う。


『え、えぇ...大丈夫で...す。そ、それで貴方達は、何者なの?』と怯えを見せつつ彼女は三枝を見つめ返した。


『日本という、東にある国から来ました。聞いたことはありますか?』と三枝は笑顔を浮かべ優しげに聞いた。すると少女は頷きを一つ返した。


『それは良かった。よろしければ、あなたの名前をお聞かせ頂けますか?』と聞いた所、少女はグゥエットと小さな声で呟いた。「ふむ、月か...中々に風情のある名前じゃないか」と彼女の名を聞いた三枝は優しげな笑顔を浮かべ納得した様に頷いていた。


そして、そこまでいって漸くグゥエットは三枝が手を差し伸べてくれていたのに気がついた様で羞恥のためか顔を仄かに朱に染めつつ慌てた様子で手を取って立ち上がった。


『グゥエット、貴女に頼みがあります...。近くの村に私たちを案内してくださいませんか?お恥ずかしい話ながら...私たちはここの土地勘が殆どないので、土地や食物に関する情報を頂きたいのです。』と真面目な顔をして三枝はグゥエットに問いかけた。


『わ、分かった...。じゃあ、私の村に行こう...!助けてもらったことも併せて話せば力を貸してくれると思う....。』だから...あんまり見ないで...。と消え入りそうにその声は尻すぼみになっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼の日の約束 スピンオフ 青春期回想録 イオ・ロゼットスキー @Argath

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る