第4話
出立の日付が翌日に迫った...。
荷物を纏め終わったあと、少し街中を歩いていると、歳の近い後輩のセツに呼び止められた。
「先輩...本当に行ってしまうんですね...。」
高垣の家に拾われる前からセツは俺に良くしてくれていたからなんだろうか...。彼女の泣きそうな顔を見たくなくて、安心させるように
「あぁ、行ってくる。まあ、行くと言っても場合によってはすぐに帰ってこられるさ...。」
だから安心して待ってろ...などと言えなかった。
セツの目があまりにも真っ直ぐだったから...。だからこそ、「大丈夫だ、必ず帰ってくる。」そう言い換えた。
そんな問答をしていたら、聞きつけた街の人たちに囲まれてしまった...。誰も彼もお通夜のような顔をし、その様な空気を醸し出していた。
ここに集う皆同じ思いだったのだろう。
だからこそ、近くを通りがかった親父の「お前ら何白けた
そして、口々から「そうだ、マサを送り出す俺たちがこんなに沈んでたら、マサに心配させちまう!」「そうだな」「よっしゃ、一杯飲んじまいますか!」
と言った言葉が出てきた。
そして、街一番の食堂で、町民みんなで飲めや歌えの大騒ぎ....。誰もが思っていた、「向こうでは辛い思いを沢山するんだ、だからこそ此処での思い出は楽しい物にしてやりてぇ」と。
そして、夜は更けていった。
そして、翌朝。
出兵の時には、街を挙げての万歳が執り行われた...。
空は鉛色の雲が重苦しく垂れ込み、青空を犯していた。
同じ街に住む婦人会長を務めていた、定食屋の女将さんから千人針を渡された...。「無事に戻ってくるんだよ...」渡す時に、俺を迎えにきた兵士に聞こえてしまわないよう、首元を引き寄せ優しく囁いた。
その言葉に頷きを返すと、「はい!この身を、お国のため、粉骨砕身の覚悟で戦って参ります!」と胸を張り、宣誓を立てた。真っ直ぐを見ることなんて出来なかった...。鈍色の空を睨み、『戦って生き残る』ことを『家族』の皆んなに誓った。
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