第39話 勇者シオリ視点、転生勇者VSドラゴン

 王城上空ワイバーンとの戦闘より少し前。


「ハヤト殿、リンカ殿は前衛を! シオリ殿は各隊の回復支援を頼む!」


「「「はい!」」」


 騎士団長のマルクさんが素早く指示を飛ばす。


 とんでもないことになってしまった。

 草原で騎士団と演習の予定だったのに。いきなり実戦に変更だなんて。


 しかも、相手は――――――



「「「「「ギュアアアアアアア!!」」」」



 頑丈そうな鱗、恐ろしく獰猛な牙。これは生物なのかと思うぐらいの巨体。そして空に羽ばたく大きな翼。


 ドラゴンだ―――


 その巨体が【結界】の裂け目から一匹また一匹と侵入してくる。


「なんなのよ……あれ」

「ああ、ヤバいな。前衛といってもどこが前かもわからないね」


 リンカちゃんとハヤト君が緊張の声を漏らす。


 先行して侵入したワイバーンの群れは、すでに王城へ向かってしまい戦闘が始まっている。

 対応してくれているのは王城の守備兵にルーナ姫、聖女様。そして……ショウタさん。


 ドラゴンたちは体が大きくて、一気に【結界】内には入ってこれない。

 ゆえに草原の騎士団も、迎撃の体勢に入ることができた。


 向こうではショウタさんたちが頑張っているんだ。


 だから……


 ここは絶対に通すわけにはいかない。


 こんなドラゴンたちまで王城に行ったら……王都は焦土と化してしまう。

 それだけは防がないと。


「―――魔法隊! 攻撃準備!」


 マルク隊長の号令で、王国魔法使いさんたちが一斉に杖を上空に構える。


 私達も各々攻撃魔法の準備にはいった。


「放てぇええ!!」


 次々に魔法使いさんたちから魔法が放たれる。炎の玉、氷の槍、風の刃、空が攻撃の色で咲き乱れる。


 ドラゴンたちは……


「うそ……」


 そのままなにも無かったかのように王城を目指すドラゴンたち。



 そんな……いかせない!!



「―――疾風衝撃魔法ウィンドブラスト

 ―――氷結槍魔法アイスランス!!」


 私の右手から疾風の刃、左手から氷結の槍を同時に放った。最近訓練でおぼえたての二重詠唱だ。


「ハヤト! あたしたちもいくよ!

 ―――はぁああああ!


 ――――――飛翔斬撃かざきりのたち!!」


「よし!

 ――――――上級光弾魔法ハイライトバレット!!」



 リンカちゃんとハヤト君も、私にあわせて一斉に攻撃を叩き込む。


 強烈な攻撃が、上空を飛ぶ先頭のドラゴンに次々と命中した。



「――――――ギャガァアアアア!!」



「くっ……」

「う、うっさいわね! あのトカゲ!」


 凄まじい咆哮をあげて巨体を揺らすドラゴン。上に乗っていたであろう下級魔族が、バラバラと落ちていく。


「でも、効いてるみたいだよ!」


 先頭のドラゴンがこちらに顔を向けてきた。


 やった、こっちに注意を惹きつけることができたのかも!


 だが、その考えはすぐに恐怖に変わる。


 その恐ろしい口が大きく開かれたからだ。


 さらに後続のドラゴン数匹も同じようにこちらに顔を向けて、その獰猛な口を大きく開け始める。


「え……こ、これって!?」

「なに? なんだかすごい力がドラゴンの口に集約されていくみたいよ!」


「勇者殿! ブレスがくるぞ!

 ――――――魔法隊ぃ、魔法障壁を展開せよ! 急げぇええええ!!」


 マルク隊長が怒号のような命令をだした。


「ふぁ……こ、これがドラゴンのブレス……」


 マジックシールドが幾重にも展開されるなか、草原全体の空気がビリビリと振動をはじめる。

 まだ放たれてないのに、とんでもない威力を秘めてるってことが分かった。


 あ、足から崩れてへたりそう……


 って!


 違う! ぼーっとするな! 恐れるな!

 ショウタさんなら絶対怯まない。私も第一軍団との戦いで学んだんだから!


 私の今できること。それをするの。



「聖なる力よ、我が言葉に応えここに守りの結界を!

 ――――――勇者の守護持続結界ブレイブロングシールド!!」



 即席の【結界】が草原の王国騎士団を覆う。


「おお! 勇者さまの【結界】だ!」

「我らには勇者さまがいるぞ~~!」



「――――――ギャルガガガガァア!」



 空から聞こえるドラゴンの大きな咆哮。


 それが鳴り終わった瞬間―――


 数匹のドラゴンからブレスが放たれた。


 とてつもないエネルギーの塊が、容赦なく地上に浴びせられる。

 魔法隊の人たちが展開したマジックシールドが、ガラスのようにバリバリと割れていく。


「くうっ――――――!?」


 思わず声を漏らすほどの衝撃が、【結界】に走った。


 なにこれ! 重すぎる!?


 でもここで耐えなければ、リンカちゃんもハヤト君も騎士団のみんなにも直撃してしまう!

 私はおなかにグッと力を入れて【結界】を維持する。


「シオリ! 鼻……血がっ!」


 うわぁ……気張りすぎて鼻血でてるっぽい。


 でも、ここでへたるわけにはいかない!


 ブレスが放たれて数秒ほど……ドラゴンはブレスを放ち切ったのか、【結界】を圧迫していた重みから解放された。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 な、なんとか耐えきった。


 その瞬間【結界】が粉雪のようにバラバラに砕け散った。


 一回の【結界】展開で、一回凌ぐのが精一杯だ。


 あんなのまたきたら……


 だが、ドラゴンたちは再びブレスを放つことはなかった。

 その変わりに私達の上空を旋回し始めたと思ったら、降下してくる。


「ドラゴンが来るぞ! 総員地上戦準備!」


 なんと王城へ向かおうとしていたドラゴンたちが地上に降りてきたのだ。

 ドラゴンの上に乗っていた魔族や魔物たちが、ぞろぞろと地表に降り立ちはじめる。


 さっきの【結界】を脅威とみなしたのかもしれない。


 とにかく、こっちに注意を引くことには成功したようだ。


 王城のほうをチラリと見る。


 所々で煙は出ているけど陥落はしていないようだ。それに大教会の上から光が漏れている。

 たぶん聖女様の攻撃魔法だ。


 ショウタさんもそこにいるはず。


 頑張っているんだ。


 今までずっと頼り切りだったけど、彼は今ここにはいない。


「シオリ、ハヤト! くるわよ!――――――絶対ここで食い止めるわよ!!」


 リンカちゃんが私たちに檄を飛ばす。


 うん、頼ってばかりじゃダメだ。


 私は手にした聖杖をグッと握りしめた。






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