魔女と男の子と秘密の庭園
蒼穹月
第1話
僕の部屋には好きな物が無い。
「げえっ、また女男が変なもん読んでる!」
「男なのに変だぜ!」
「へーん!へーん!」
好きな物がある場所は誰かが来る。そして殆どの場合顔をしかめて、同じ学校の人が来たらこうしてからかって邪魔してくる。
いつもの事。
でも小さな田舎の村じゃ僕の読みたい本は学校の図書館か、女の子のいる家にしか無い。必然的に学校の図書館しか行く場所が無くて、毎回絡まれる。
今も僕が読んでる本を取り上げようとしたから、僕はサッとその場から離れて本を本棚に返した。
大抵からかって来る人って途中で止めてなんてくれない。直ぐに僕に追いついて突き飛ばされた。
「男の癖に逃げてんじゃねーよ!だせぇ!」
「そうだそうだ!」
「逃げるなんて生意気なんだよ!」
とんだ難癖もあったものだなぁ。
でも、こういう人って反応を返すから図に乗るんだって本で読んだ。
僕は顔を見る事もしないで黙って立ち上がると、また突きとばそうと手を出したその男子、クラス違うから名前は知らないけど、兎に角その子から逃げる。
幸い図書館は棚が行き止まりにならないように配置されてる。それに狭いから直ぐに受付まで逃げ切れた。
受付の子は残念ながら僕の味方をしてくれない。ううん、この学校の生徒は大抵しれくれない。あの男の子が怖くてってのもあると思うけど。
だから僕は何も言わずに図書館を出た。向かうは職員室だ。流石に彼等もそこでまでからかって来ないし、大抵その途中で悪態付いて引き返してく。
「せんせぇ~助けて~かよ!キモイんだよ!」
「卑怯者!これだから女男は!」
今日も途中で引き返そうとして、でも残念ながら今日は彼等にも、そして僕にも運が無かったみたい。
「こら!お友達にそんな言葉使うんじゃないぞ!」
偶然そのさらに後ろから厄介な先生が来ちゃった。
熱血漢って言えば聞こえは良いけど、この学校で一番常識にうるさい先生。
「
誤解?
ああ、本当にこの先生のこういう所。村の風習に根付いてる理解出来ないことは全て非常識だって目で見る所。
本当に嫌だ。
ただ同年代に生まれた。ただ同じ学校いいる。ただ同性。だから友達。だから同じ事をして遊ぶべき。
生き辛い。
いつもだったらこのまま指導室に集められて、延々と説教という名の常識の押し売りが始まる。
でも。そう、でもこの日は何だか違った。
何もかもを放り出してしまいたい思いが溢れて止まらなかった。
昨日もお父さんとお母さんに男らしい趣味を押し付けられたからかもしれない。
この日は心がいっぱいいっぱいだったんだ。
だから、先生が彼等を挟んで反対側の遠くにいたから。
駆け出した。
何処に行く当てがある訳じゃなかったけど。それでも、走った。
走って。
走って。
走って。
誰にも会いたくなくて人目を避けて走り続けて。
気付いたら森の中にいたんだ。
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