第四話『二十四時の震天冷嵐(シンデレラ):震』
「じゃあ、次、行きましょうか。
わたしは、その場で、右足のつま先を、今度は氷の床の上に、トンと突き立てる。
「出力八〇パーセント!
今度は細い柱のような光線を発射するのではなく、海に向かって放射状に冷気を爆散させる。
目線が数メートル、高くなる。それは、山がすくすくと成長している証拠。技の名の通り、海中には、あっという間に氷山が出来上がる。山肌は、海上からは見えない、海底まで続いている。
わたしは、氷山の頂きに立つ。
今度は
フィギュアスケート選手のスピンのように、回転し始める。
一秒間に十二回の、高速回転。目は、回らない。
「
あっという間に……
氷山の底、つまり海底に到着。
わたしの周りは、井戸状になった氷の壁で守られている。
足元で、
ここからは、地震エネルギーの小出し作業。毎日のこまめな地震エネルギー放出によって、巨大地震のリスクを低減する。
今度の
つま先を地面に当てて念じると、地震を起こすことができる。
この共振を、地中奥深く、つまりは地殻内部に使うわけなんだけど、採用する振動数は、地殻内に多く存在する二酸化ケイ素が長い年月をかけて結晶化した『
「この辺りの地殻の
お、クォーツ時計の水晶
「振動数三万二七六八、
ドクドクと、心臓の鼓動のような
「
わたしはそう叫ぶや否や、もう一度左足のつま先に意識を集中する。
そして氷の井戸の遥か先の空を見上げ……
「
海上へと大ジャンプ。ほとんど、瞬間移動。
脱出と同時に、ゴゴゴゴゴゴ、と、大きめの揺れ。
氷の井戸は崩壊、氷山は粉々に砕けた。
「出力
わたしは右足のつま先から、さっき作ったのよりも一回り小さい
比較的大きな氷の欠片を見つけ、そこに着地。
「よし、今日の
空。
黒いキャンバス上を、五つの金属塊が、『V』という点字を形成して、流れゆく。
ああ、見たくないものを見てしまった。
すぐに報告ね。
国防省専用チャネルで音声通信を開始。
「
「おう、
「ヨンマル連邦軍の戦闘機がいます。どうしますか?」
「何っ!? レーダーと軍事衛星では確認していないぞ?」
「ですが、確かに見えました。五機の編隊飛行が」
「本当か……ああ、たった今こちらでも捕捉した。では、威嚇射撃を頼む。くれぐれも当ててはいかんぞ?」
「承知しまし……あっ! 雲に隠れた。もう、見えづらいわねっ! また後で連絡します」
ああもう、今日はこっちの方も残業なのね!
「
雲の上へ。
うわ寒っ!! |このシンデレラ風の
遠くから、頑張ってみるか。
「出力
飛び蹴りの姿勢。
編隊飛行のやや外側を目掛けて、極細の氷の柱を放つ。
おっ、いい感じにキワキワ……
「あっ」
そんなことはなかった。
一機に
撃墜とはならなかったものの、
確かに機体に損傷を与えた。
わたしは海上に、控えめなサイズの氷の足場を作り、そこに降り立つ。
再び音声通信。
「大臣、申し訳ごさいません」
本当に申し訳なさそうな声で。お天気キャスターの時のように声を作っているわけではない。
「なぜ謝罪する? まさか……」
ええ、そのまさかなのです。
「掠りました」
「何っ?」
「ギリギリを攻め過ぎました。一機、煙を上げていますが、飛び続けてはいます」
「……」
「五機とも百八十度進路を変えて、引き返していきます」
「わかった。君は何も気にしなくていい。今日は早めに帰って、休みたまえ」
「はい、申し訳ございません……」
プツゥン
わたしは通信を終了し、暗い夜の氷道を、一人滑り出した。
〈第五話『靴の謎』に続く〉
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