今日もわたしは、デフォルメされた気象衛星画像が大きく映るモニターを背後に、今朝のおトイレのごとくク（・）ソ（・）長い指示棒を振るう。

「では、トルネイド情報です。気象省（・）によりますと、トルネイド十号『ハレハレ』は、中心気圧八九〇ヘクトパスカルと、あ（・）の（・）ニセ湾トルネイドに匹敵するほどの勢力でハナテン地方に上陸する見込みです」

　とは言ったものの……さて、どうなることやら。

「ゆら……じゃなくて、東雲さん、今回のトルネイド十号の進行スピードは非常に遅く、通称『トロトロトルネイド』と呼ばれていますが、いつもの台風と、どのような違いがあるのでしょうか？」

　おいクソアナウンサー、わたしのことを名前で呼ぼうとするな。キショいから。この舞央仁（まいおじん）とかいうクソ男は、わたしのストーカーだ。心の内を吐露できなくて、イライラする。しゃーねぇ、笑顔笑顔。

「トルネイド十号は、極（・）め（・）て（・）強（・）い（・）勢力を保ったまま長（・）期（・）間（・）、列島に滞在するので、甚（・）大（・）な（・）被害が予想されます。そして、トルネイドの中心から離れた地域でも、線状降水帯が発生する可能性が非（・）常（・）に（・）高いです」

　そうはならないっつーの！　あー、台本通りにやるの、だるいなぁ。っていうか、『線状降水帯』なんて意味不明なワードが出だしたの、いつから？　わたしの大学時代にはそんなのなかったわよ？　あっ、年齢がバレる。

「線状降水帯ですか。怖（・）い（・）ですね。我々は、どうすればいいのでしょう？」

　知るか、自分で考えろよ。

「えー、とにかく、河川の増水、洪水、土砂崩れなどの災害に、十分にお気をつけください。はいー、次行きましょう」

　わたしは手をパンパンと叩き、放送後のデートのお誘いが鬱陶しいアナを威嚇（いかく）する。

「東雲さん。災害といえば、近頃は巨（・）大（・）地震への備えも叫ばれています。先日はハナテン地方で大（・）き（・）な（・）地震がありましたよね。我々は、来（・）る（・）べ（・）き（・）北海ライオネル地震にどのように備えれば良いのでしょうか？」

　来るべき、だって？　冗談じゃないよ、わたしのスケジュール帳に、勝手に『地震』って書き込まないでくれます？　あとお前、わたしはオッケー出してないのに勝手に高級料亭の予約をするな、バカタレ。

「みなさんは、気にしなくていいです！」

　そう。だって……

「ええっ？　気にしなくていいって、どういうことですか？」

　文字通り、ですが。

「おい東雲何言ってんだ！　台本と違うぞ！！」

　ディレクター、うるさ。

　もう気にすんなって

　だってさぁ

　トルネイドも地震も、ぜーんぶ、災害なんて……

「みなさんは、いつも通りに過ごしてください！」

　わたしが防いじゃうもんねっ！

〈第三話『二十四時（まよなか）の震天冷嵐（シンデレラ）：天冷嵐』に続く〉