第22話

サーシャ視点


私がこっそりとラルフ君の部屋を覗くとラルフ君はカーミラ様への手紙をどのように書くか悩んでいた。


だって、カーミラ様は王太子のせいであんな事になったのたけど、貴族の世界では悪しざまに言われる可能性が高い。


もちろん、多くの貴族はカーミラ様が悪いのではないと知ってはいる。

知ってはいるけど、認めるのは別だ。


貴族の大半は、自分がどれだけ得をするか、どれだけ幸せになるかが大事で、自分の事だけを第一に考えている生物だと言ってもいい。

当然の事ながら、アラベスク公爵家よりも王家についた方が得をすると考える貴族は数多くいるだろう。


例え、祖父によく似たあの女好きが悪いと分かっていても、背後に王家にいると気を使うものだ。

ラルフ君も王家やその他の貴族を相手にする事に対して、頭を悩ませているのだろう。


でも、悩むという事はカーミラ様の事を好きになっているということだろう。

だって、カーミラ様の事を何とも思っていないなら手紙の返事に悩む必要はないのだから…。

お父様もラルフ君やカーミラ様、それから生まれてくる子供の事だって守ってみせると言っていた。


私だって、他人からラルフ君を守ってきた。

例え、ラルフ君の一番が私じゃなくなっても変わらず守ってみせる。


それに、カーミラ様もラルフ君と同じくらい可愛いのだ。


私はミリアムというメイドのおかげで、ラルフ君とカーミラ様と3人で一緒に話をした時の事を思い出す。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



私がカーミラ様に引っ付き、頬擦りをしたら、


「ちょっと姉さん!カーミラ様に失礼だし、引っ付き過ぎだよ!」


ラルフ君がそう止めるけど、私はカーミラ様に更に引っ付く、フラウもミリアムも止めようとするけど、カーミラ様を害するようには見えない伯爵令嬢の私に手を出せずにオロオロしている。


「えー、だってカーミラ様がこんなに可愛いらしいのが悪いわよ。それに、義理の妹になるんでしょ。今から仲良くしておきたいじゃない。」


私の言葉にカーミラ様はハッとして、


「サーシャ様、いえ、義姉様、私で良いんでしょうか?」


カーミラ様は両手で私の両手を握ってきた。


「もちろん!カーミラ様なら大歓迎だよ!」


カーミラ様がとても喜んでくれている。

これで良いんだ。


ラルフ君と安心したように、


「姉さんありがとう。」


と言ってくれた。


ミリアムがよかったですねとフラウに問いかけていたけど、フラウは、


「カーミラ様とラルフロッド様もよかったけど、カーミラ様とサーシャ様も尊い・・・・。」


と鼻を押さえていた。


カーミラ様はフラウの様子には気付かず、私に再度、尋ねてくる。


「サーシャ様、でも……本当に、嫌ではありませんか? さっき抱きつかれたのも……。私というかラルフロッド様にお気を遣って親密な態度をとっていただいたのではないでしょうか?」


カーミラ様はまだ少し頬を赤くしているが、少し寂しそうにそっと視線を落とした。


私が親密な態度をとったのは、ラルフ君が側にいるからだと思われたのだ。


少し寂しそうなその態度、さっきまで毅然とした公爵令嬢だったのに、カーミラ様は年相応の恋する女の子の態度をとる。


ああ、カーミラ様はこんなふうに可愛い反応を見せてくれるんだ。

私は思わず、その頬に手を添えた。


「嫌なわけないよ。可愛い義妹ができて、私は嬉しいんだから。小さな頃、私は妹も欲しかったんだから。ラルフ君に何回も女の子の服を着せたくらいだからね。」


そう言ってニッコリと笑うと、ラルフ君が、


「姉さん!そんな小さな頃の恥ずかしい事を言わないでよ!」


私の言葉を聞いて、メイドのフラウが、


「ラルフロッド様が女の子の服を……。」


そう言って、想像を巡らせているとフラウが突然、鼻を抑えて、


「それも良い!」


「フラウ………。」

「フラウさん……。」


カーミラ様とミリアムがフラウをじっと見つめる。


カーミラ様は、ううんと咳をして気を取り直して、


「っ……義妹ですか。とても嬉しいです!」


と私の手をもう一度両手で握る。


「うん。私にとっては、もう可愛い義妹だよ。ラルフ君のお嫁さんになるんだから。」


ラルフ君も横で顔を真っ赤にして、


「姉さん。まだ早いからね。カーミラ様にも考える時間が……。」


カーミラ様はラルフ君の方を向き、


「ラルフロッド様、私は問題ありません。サーシャ様に…いえ、お義姉様に気に入っていただけたらとても嬉しいです。」


カーミラ様は恥ずかしそうだけど、嬉しそうに、もっと強い力で私の手をぎゅっと握りしめる。


「私、お義姉様がラルフロッド様といつも一緒にいて、仲の良いご姉弟だなと思っていて、申し訳ないですけど、私とラルフロッド様との事、反対されると思っていました。今日は……私、お義姉様の事も好きになってしまいました。」


その言葉を聞いて私の胸の奥が、温かくなる。


「私はね。カーミラ様がラルフ君を大事にしてくれるだけで嬉しいの。」


「もちろんです。あの……義姉様が良ければ、義姉様の事も大事にします!私、ラルフロッド様と2人でいるのも嬉しいのですが、お義姉様と2人、女性同士でも仲良くしたいと思います!」


その言葉があまりにも真っ直ぐで、可愛くて、私は思わずカーミラ様に抱きつく。


「うん!私もカーミラ様と仲良くしたい!

可愛い義妹と2人なんて最高!」


「ふふっ……義姉様、嬉しいです。」



カーミラ様の笑顔は、淡い春の風みたいで――見ているだけで心がふわっと軽くなる。


ラルフ君が、ぽつりと呟いた。


「……姉さん、僕よりカーミラ様と仲良くなるの早くない?」


私はラルフ君の言葉に頷く。


「当然でしょ。カーミラ様が可愛いんだから。」


私がそう言うと、ラルフ君は少し口をとがらせ、


「僕だってカーミラ様と2人で仲良くしたいからね!」


私はその言葉に大きく頷く。


「 もちろんよ。カーミラ様とラルフ君が結婚してくれないと私の義妹になれないでしよ!」


カーミラ様はそのやり取りを見て、可憐に笑った。


「ふふ……こうしてお二人のやり取りを見るの、私も好きです。」


「私もカーミラ様の笑顔を見るの好きよ。」


「義姉様……そんな、照れてしまいます……。」


と、そこで、さっきまで鼻を押さえて震えていたフラウが、ミリアムに支えられながら小声で呟いた。


「……だ、だめです……この3人、尊い……尊すぎて……本当に……無理……。」


ミリアムはフラウを支えつつ、声をかける。


「フラウさん、しっかりして下さい!今ここで倒れたら、フラウさんが変な人に思われちゃいますよ!!」


――騒がしいふたりに、カーミラ様がくすくす笑う。


そして私は、そっとカーミラ様の肩に寄り添った。


「これからいっぱい仲良くしようね、カーミラ様。」


「はい、義姉様。どうか末永く……よろしくお願いします。」


――こうして私たちは、“姉妹”としての最初の一歩を踏み出した。


この後、私は、フラウにもう少し、ラルフ君とカーミラ様を2人で話をさせてあげたいと言ったら、フラウが大きく頷いて、


「おまかせ下さい!私の母親が美味しいお菓子を食べると幸せになるって言っていましたので、サーシャ様には私の父親から教えてもらった秘密のレシピのお菓子をお出ししますので、どうぞこちらへ!」


フラウに連れて行かれて、お菓子とお茶をご馳走になった。


お菓子は美味しかったんだけど、フラウが私がお菓子を食べているところを幸せそうにじっと見ているので少し食べにくかった。


私は、あまりこちらを見ないでと言いたかったけど、フラウがあまりに幸せそうに私を見ているから何も言えなかった。


そしてお菓子を食べ終えたら、フラウが本当にメイドかしらと思われるぐらい鼻息を荒くして、


「サーシャ様はカーミラ様とお揃いや対になった服を着るのはどうでしょうか?ラルフロッド様は男性ですので、挿し色とかタイやスカーフでお揃いにするのですが、女性同士だとドレスにできるのでやり甲斐がありますよね!」


と聞いてきたので、私は、


「うん…。カーミラ様が良ければ、私は問題ないけど…。同じようなドレスを着たら気にされないかな?」


フラウは私の言葉を聞いて更に鼻息を荒くして、


「大丈夫です!お二人共、とても愛らしくして差し上げます!」


フラウの目が少し怖い…。

私がうん…。

と言葉に詰まりながら返事をしていたら、あのミリアムでも私が気不味そうにしているのに気付いたのか、


「フラウさん!先ほどから様子がおかしいですよ!少し落ち着いて下さい!」


と言いながら、フラウを必死に制止していた。

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