第45話 黒幕

「すずめさま」


 障子を開けて、昼間なのに薄暗い部屋に入ると、1段高くなったところに、女性があぐらをかいて座っている。

 その手前まで進んで、腰を下ろす。


「首尾よくいっておるか?」


 あやしい雰囲気を出す、すずめ。


「はッ………追加の妖怪を準備しておりますが、それがその、邪魔が入りまして」


 正座をして、一礼するヤギュウ。

 グミちゃんも、同じ行動をする。


「それは、クニヤスさまのことを言っておるのか?」


 殺気立つすずめ。


「いや、その。名前までは存じ上げませぬが」


 冷や汗の出るヤギュウ。


「ねぇ、この女って誰よ?」


 グミちゃんが、我慢の限界がきて、口を開くと、


「シッ!」


 制するヤギュウ。


「えぇぇ………」


 口を、歪ませるグミちゃん。


「とにかく、クニヤスさまには手出しするな。他の者は、どうなろうと構わん。よいな、わかったか?」


 なにやら、不穏なことを言っているすずめ。


「はい。しかし、なぜです?」


 ヤギュウが、なにやら引っ掛かるので聞くのだが、


「は?」


 ギリッと、睨み付けるすずめ。


「いえ。なぜ、そのクニヤスさまだけ助けようとされるのです?」


 絞り出すように聞くヤギュウ。


「それは、お主には関係の無い事であろう」


 突き刺さるように言うすずめ。


「ハッ。失礼つかまつってござりまする」


 グッと、畳に額が付きそうになるほど頭を下げるヤギュウ。


「わかればよし」


 強烈な殺気が、やわらぐ。


「ははァー」


 頭を、上げないヤギュウ。


「ねぇ、誰なの?」


 グミちゃんが、小声で聞くが、


「お主も、下げろ」


 グミちゃんの頭を、押さえるヤギュウ。


「イテテテテ」


「もう、下がってよい」


 片ヒザを立てるすずめ。


「ハッ。出るぞ」


 部屋を出るヤギュウ。


「むぅぅ」


 グミちゃんが出て、障子を閉めるヤギュウ。


「クニヤスさま………」


 惚けた顔をするすずめ。


「ねぇ、あの女。ただ者じゃないわね」


 廊下を、歩きながら聞くグミちゃん。


「あぁ、グミちゃんさんも気がついたか?」


 首を振るヤギュウ。


「えぇ。なにあのまがまがしい気配は?」


 すさまじい霊気を感じたグミちゃん。


「あれには、事情があるのだ」


「事情? どういった事情なの?」


 興味が出るグミちゃん。


「それは言えぬ」


 口にしたくない様子のヤギュウ。


「あっそ。それと、クニヤスさまって?」


「あの少年のことを言っておると思われるが、なぜ手出しするなと言うのか謎である」


 腕組みするヤギュウ。


「そうなんだ。それで、どうするの?」


 ヤギュウは、人をあやめるのをヨシとしないのだが、あの女性はそうではないらしい。


「チッ。邪魔者は排除するように言っておったのに、どうされたのだ」


 そもそも、計画の障害は倒せと言っていたすずめ。


「えっ?」


「とにかく、言い回しからするにクニヤスさまの周辺は、排除してもよいということだろう」


 苦々しい顔をするヤギュウ。


「うん、わかったわ」

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