第27話  医者でも考え過ぎることはある

山中は進むに連れ空気は薄くなる。

只でさえ私を背負ってる千理は息が上がり

足取りも重かった。


「幽香。千理が持たない一旦休憩しよう」

「分かったよ。葵君」

「大丈夫!私は大丈夫だよ葵ちゃん。だから行こう?」

「千理。焦りはこの世界では死因の原因を招く。休める時に休み動ける時に動く事。それに私をおぶって山中を歩くのははできない。よくやった。今日はここらで休もう幽香。私が見とくから幽香も寝ろ」

「すまない葵君」

「ごめんね。葵ちゃん。わたしのせいで」


申し訳なさそうな顔をする千理に私は頭を撫でた。


「気にしなくていい。気づかない私のせいでもあるから」



私にも千理のように焦っていた時期はあった。身体が改造され上手く動かせずガムシャラにリハビリをしていたとき師匠に言われたこと。

「自分のペースでいい。焦る事が命取り」

だと。今の千理はあの頃の私と重なって見えた

今の私にも自分のペースで成長する事がどれだけ大切なのか少しはわかるつもりだからだ。


2人が寝れるスペースがある場所を少し歩き確保する。枯葉と枯木だけで私は火を起こしてる最中幽香は横になったまま私に聞いてきた。


「葵君。千理君に全然指導してないのを見るに君はまだ安藤君の事を気にしているのか?だったらそれは大きな間違いだ。あれは」

「事故って言いたいんだろ?違う。私が指示を出しあいつが忠実に守った結果死んだ。なら私が殺したも同然だ。これは変えられない事実だ。あんな二の舞を見たくもないし起こしたくないから弟子を取らなかった。ナツキは私のことを許しはしない。生きているなら私に恨みの念を抱き復讐しに来るから」


苦戦した中火がついた。


「膝を治さなかったのも白露君に対し罰が必要だと思ったからかい?」

「少しでもあいつが私の愛弟子だった事を忘れないようにっていうのもある。私があんな場所で待機なんて言わなければナツキは生きていたから。タラレバはもういい、夜は長い明日に備え寝ろ。」


微かに千理の方から音がしたが特に動いた様子はなかった。

幽香からナツキの話題を振られるとは思わなかった。白露夏希しろなつき私が初めて組んだ相棒。そして私が過去に一人だけ私の流儀を唯一教えた結果死なせた人間。私が誰かの師匠になるという事をしなくなった人だ。

あいつも千理のように私に絡み、はにかんだ笑顔が印象に残る奴だった。私とアイツで組んだ仕事でアイツは殉職した。

ドイツへ帰りたくないのは

ドイツはあいつを思い出す国だからだ。


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