新章突入・キミは職を喪ったのだからエロ女になれ!

 2024年11月20日。

 給料計算の締め日にて職を辞する流れとなった。

 新生活は唐突な終わりを迎えた。

 否だ。

 終わったわけではない。

 わざわざ滋賀の山奥から京都の郊外に引っ越してきたのだ。

 借りた部屋には諸々に買い揃えた家電があるし、二千冊程度の書籍があるし、これらを実家に運び込むスペースはないのだ。

 どうやら新生活を継続せねばならない。

 他人事のように言っているが実際そうなのだ。

 今月の収入は良しとして、来月からはアルバイトをして何とか食いつながなければならない。『人生の終わりだよ』と思ってもそう簡単に終わってくれないのが人生の厄介なところである。


 自殺などと大それたことを催す気合は、小心者ゆえにできそうもないし、低空飛行ながら此岸で生活を送り、状況が持ち直すようあがいていく所存である。



 なぜにこのような窮地に陥ったのかはVRChatでトークショーを行い45分にわたって、友人たちに傾聴いただいたので語りなおすのが億劫である。

 したがって失職にあたっての経緯を語るのは控えさせてもらう。

 要するにタイムリーなデカめの不幸だったのでトークショーで滑り散らしたから経緯は伏す。

 このヤケクソなトークショーの後にサブタイトルの事件は勃発する。


 さてこのトークショーを行った退職当日は友人の誕生日でもあった。

 陰気なイベントから一変、彼を主役に祝賀会となった。

 そして、夜も更け始めた午前1時を過ぎたころ、私の友人が誕生会の会場にやってきた。

「おはD~やあ鮎河くん! 職を喪ったか鮎河くん!」

 見上げるほどデカい狐耳のアバターを駆るS氏は開口一番に私の現状を確認する。

「もうね下人よ下人、闇バイトで強盗たたきをせにゃ喰っていかれんやもしれんね……ははは」

 雑で粗野な冗談で返す私。

「なら鮎河くん! DしようD!」

 Dとは朝一にXで乳輪がはみ出た際どい写真をセンシティブフィルタなしでアップロードする、倫理観が崩壊したバーチャルエロ女を指す仲間内のスラングである。

 痴れ者になれとS氏はいうのだ。

「まずはこの三匹の中から選ぶのじゃ!」

 S氏の握ったQVペンが三体のアバターの名前を書きだす。

 マヌカ、セレスティア、竜胆。

 これらのアバターはブラックフライデーにて半額セールがなされているアバターである。


「じゃあ竜胆で手を打ってもらいたいのですが……」

「駄目だよ鮎河君! キミはセレスティアになるんだよ! フレンチメイドも贈ろう! 君はDになるんだよ! 狂気を発散するんだよ鮎河くん!」

 どうやら私は壊れたオオキド博士にマサラタウンを追い出されるようだ。

 ダイレクトメールにはセレスティアと破廉恥フレンチメイドのギフトコードが送付されていた。


 私のPC作業環境はダブルモニターだ。

 セカンドモニターに開いたunityにTポーズをしたDにならんとするセレスティアが編集かいへんを待ち構えている。

























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