第32話「静寂のセピア」

「白瀬、時間的要約をまとめて来たぞ」

「先生、まさかまた持論を披露するのですか」

「察しがいいね、いづれ天才になるなお前も」

「そうですか、では私からも一言、」

「なんだ、世辞はいらんぞ」

「いえ、その格好はなんですか」

「これか、これは新春の浴衣だよ」

「それって女性が着るものです、男は袴ですよ」

「な、なんだと、そんなの知らん、気持ちさえこもってればいいんだよ」

「また藪から棒に、意図悶着をしますよね」

「そうだとも、それでこそできる男、そして真の漢なのだよ」

「はい、そういったしてやったぜ、発言はご遠慮ください」

「そうか、勝気でいるには、幾分不心得だったか」

「ですね、てか、はやく脱いでください、それ私の浴衣なので」

「しかし白瀬よ、お前は小柄なんだな」

「あーせんせ、そういうのはいいですから」

「何がいいんだよ、君だって幾らかは成長しているとでも言うのか?」

「せんせい、一つ言っときましょう、浴衣はですね、もともと正装服でして、江戸時代に用いられた、古典服なんです、なので、その発言は全人類を否定したことになりますからね」

「そうかい、たいそう女もいないだろ、年代も年代だし」

「あーせんせい、いいですか、女はいつの時代も居ます、そして令和になった今でも、江戸城は存在します」

「ほー面白い事を言うね、現代に過去があるのか」

「そうですよ、建物は残ってます、そして知識や伝統は今でも受け継がれてます」

「言い話じゃないか、君もやるようになったね」

「いえ先生、これは常識です、決してあしらうための快苦ではありません」

「そうかい、ならば、江戸城行くか」

「また奇想天外ですね、短絡思考というか、言葉に乗せて、言葉を言ってるだけ、これでは決して、終われませんよ、ってか女が苦労します」

「そういえば女も男が好きとは知ってたが、それはそれで袴と浴衣に、由来があるのか?」

「あー百姓一揆の事ですね、あれは貴殿のお祭りみたいなものです、袴ではないですが、確かに、男は着物を着てます」

「そうだろ、だから祭りをしないか?」

「やっぱり先生はだめですね、」

「乗りの悪いやつだな、そこは乗ってこないと、落ちるものも落ちんぞ」

「何言ってるんですか、先生ってやっぱり御厄介になりそうですよね、いろいろな面で」

「そうだな、だとしても、生きてはいる、これでいいのではないか、何も考え事をして、大器晩成に生きても、損するだけだろ」

「まったく人は損得ではありません、人間的資質これは個人に既存してるんですよ」

「そうか、ならば資質は私にあって世界にないのではないか、だって私が怠慢を覚えるのは、そこに背くべき行為があるからではないか」

「ですが、それを悪というのは、甚だ、じり貧ならないですね、もっと大きく生きなければいけませんよ」

「まったく、君ってやつはいつになっても言葉を使って、学びを促進どころか、飛ばしてしまうよな、もしじり貧などと浅ましい感慨で言葉を丁重してるなら、私はすでに、一介の王になっているよ、言葉ではない、世界は脈によって決まるんだよ、才能など皆無だね」

「またまたそのように言葉をあおって、でも彼らは生まれた地点から、盛大に虚偽をならい、言葉を道徳を教え込まされます、それは血であっても、宿命に近いです、だから、誰もが怠惰などありえません、言葉を言葉で返すだけのなのは先生だけですよ」

「だとしたら、君は言葉以上に何を知りたいんだ」

「経験です、経験を知りたいんです」

「またまたそんなことで収まれば世界は楽でいいね」

「先生、わたしはいつだって、言葉の上に立っています、だから言った以上叶えますからね」

「そうかい、なら検討を祈るよ」

「はい、もう知りませんからね」

「なんだそれは、」

「いいですよー」


二人として生きても、一人を感じる白瀬。

言葉の上に言葉がある先生、

誰もが地に足をつけるが

これはきっと、歩くためで

階段を作ることではないのだろう

それでも梯子があれば

上るのだろうか


まだ謎は多い、

これは決して終わらないだろう。

そんな挑戦だ、永遠の挑戦だ。

この言葉の上に建てるのは果たして誰か、ぜひ見てみてほしい。

なんて喜劇を望むあなたなら、考えるまでもなく、笑うのだろうがね。

それもまた一興である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る