第2話 凪の心

「…………」

「……?」

 凪さんがチラチラとこちらをみている。

「あの、凪さ……」

 呼びかけようとするも、直ぐに逃げてしまう。

「またか……」

 今日まででこの事例が10件近く。

「何かやらかしたかなぁー……」

 図書室の角っこでずっと本を読んでいる振りをしてこちらをみている。

 怪奇行動を友人に相談してみる。

「それは、お前に恋をしているんだな」

「恋? 魚の鯉じゃなくて?」

「魚じゃない方。お前って時々というかかなり鈍感だから、気がついてないだろうけどな」

「誰が鈍感野郎だ」

「いや事実だし」

 ぬ。

 こいつは失礼なやつだな。

 こいつの名前は大谷森。

 容姿、よし、責任、よし。

 ただ残念なのは同級生を好きになれないことだった。

 そんな奴と今年から友達になった。

 それでも結構仲がいいと思っている。

「でも、お前のことを気にしているのは間違いないと思うがな」

「そんな単純なきっかけでいいのか?」

「恋なんてそんなもんだろう」

 ウム、と謎に頷き、彼は促す。

「なんだなんだ」

「お前が彼女のところに行くんだよ」

「でも逃げられるぞ」

「壁ドンでもすればおけ」

「えぇ……」

 全力で困惑する俺に興味が無いかのように、彼は凪さんの所に連れていこうとする。

「試しに俺が話してみるわ」

 そう言って彼女に話しかけようとすると——

「やぁ、凪さん」

「何か用」

 話かけた瞬間、何か鋭いものが感じられた。

「ヒェッ」

 とても冷たく、尖った声が聞こえた。

 凪さんってあんな感じで関わらない人には冷たいんだな……。

「無念……」

 胸を疼くめながら、彼は俺のところに戻ってきた。

「いつも彼女はあんな感じなの?」

「いや全く。あれの30倍ぐらい優しく接してくれるぞ。お前嫌われた?」

「そんなハズは……」

 彼女は心底嫌そうにため息をついて、外を見つめている。

「どうしたもんか……」

 頭を抱え、俺も外を覗き込んだ。


————————


 頭を抱え、結局どうすることもできずにそのまま放課後になってしまった。

 昼休みは図書委員会の仕事を放棄して机で昼寝をしていた。

 凪さんはいつも通り、本を読んでいた。

 帰る道が同じだから、そこはかとなく気まずい。

「「……」」

 二人とも口を閉じたまま通学路を通り、帰路につく。

 今のこの道は二人以外に学校で通学に使っている人はいない。

 二人だからこそ、聞ける状態なのに、日和って聞けない。

 でも、なんだかこのままではいけない気がして。

 このまま家に帰ってしまったら、今後もこの状態から脱却できないような気がして。

「でも、今じゃない。」

 そう訴えている自分がいるような気がして。

「今のうちにはなさなきゃ」

 そう訴えているような自分がいるような気もして。

(……話すなら、今じゃないとな)

 そう決心をし、息を飲む。

「あ、あの」

「なに?」

 なんだか恐怖を感じているような声色。

「や、特に意味はないんだけど、今日何で一日中俺を避けていたのか、よければ知りたくて……」

「……」

 なんだか、恥ずかしそうなような顔をしている。

 その答えは——

 顔を赤らめて、こうつぶやく。

「……今はまだ、その、気持ちの整理が、ついてないから……」

 なんだその解答は!?

 こっちまで恥ずかしくなってくるじゃないか!!

「でも」

 続けて凪が言う。

「嫌いで避けてるとかじゃ、ないから……」

 アカーン!!!

 その解答はアカーン!

 脳天を突き抜けて何かが話しかけてきた!!!!!!!!!

「ちょwwwおまwww絶対好意あるやんwwwww」

 なぜか脳内にギャルな天使が出てきた。

「いやいやwwww好意あるとかwwww100億年はやいんだけどwwwwwww」

 そしてギャルな悪魔も出てきた。

 て、おい。

 悪魔よ。

 辛辣ではないか?

「……本当に嫌いで逃げてたわけではない?」

「…………」

 無言でコクンとうなずく凪。

 相変わらず丸眼鏡でおさげを下げていてぱっとはしないが、それでもいい子なのだ。

 なんだろう、このイケナイナニカを聞いている感覚は。

 いや、、、!単純になんで逃げてるのか聞いてるだけだし、、!

 俺は問題がない!、、、はず。

「と、とりあえず今日はもう遅いから、明日また話そ! またね!」

「お、おう、、?」

 何かわからずそのまま手を振ってしまった。

 彼女はいつもよりも笑顔だったような気がする。

「……まあ、明日のことは明日の俺に任せればいいか」

 そんなのんきなことを考えながら、俺も家に帰ってきた。


——結局、答えはわからないままだけど。


————————


(ああああああああああああああああああ!!!)

 凪は家に帰ってきてからずっともだえていた。

(私ってば本当にバカ! なんで彼のことが好きすぎて避けてるのに、それを直接言えないの!? 本当に逃げてるだけなんだけど!?)

 内心ではずっと心が乱れていた。

「凪ー! ご飯できたよー!」

「後で食べるー!」

「早めに食べちゃいなさいよー!」

「わかったってー!」

 母に呼ばれても「後で食べる」と一蹴し、そのままベッドに再びダイブ。

 さっきの彼の顔を思い浮かべて、またジタバタ。

(碧くんはやっぱりイケメンだなあ、、。それに比べて私はこんなおさげなんかつけて、、、)

 自分と彼を比較して、いかに自分が下の存在にいるかが理解できる。

(明日、ちゃんと話し手誤解を解かないと……。一生このまま後悔はしたくないから)

 そう決心をした。


————————


「…………」

 碧斗はベッドに寝そべり、天井を見つめていた。

 俺って、なんでこう、うまくいかないんだろうなあ……。

 天井の一点を見つつ、ぼーっとした顔で何も考えずに、先ほどのことを反芻していた。

 今思えば、俺の人生って何かと引っかかってばっかり何だよなあ、、、

 でも、最終的にはなんだかんだ和解している場合が多い気がする。

 まあ、今後も何とかなるだろうな、と、軽く見ていている。

 碧斗は天井を見つめて、そのまま眠りについてしまった。


 彼は夢を見た。

 過去に小さな女の子と約束をしたような夢。

「碧斗くんと結婚できる年齢になったら、結婚するんだ!」

 そういっていた小さな女の子。

 髪は伸ばしたままで、顔は子供のアイドルにいそうな感じで。

 でも、いつか。

 そんな夢を見て、ふと思った。

 その子はどこかで見たことがあるようなないような……。

 彼女と最後に交わしたセリフがあったような気がする。

 なんだっけな、あろー、いん……あうと……?

 だめだわからん。

 ま、今度覚えていたら母親に出も聞くか。

 そう思い、深い眠りについた。

 


+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-


for our future 未来の自分たち selvesのために……


+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-


 そんな感じの、単語だったような……




















最初の投稿から1年経ちますね、、

何をしていたんですかね私は、、、

頑張って書きます、、、

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図書館にいる君は、いつも本を読んでいる 小日向 雨空 @KohinataUla

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