8.古い巻き添えの余波

エクストロスは、見つからなかった。生体でも遺体でも。蓋の内側にも外側にも。




ケンナールの身柄は、ラッシルには渡さず、コーデラに連れ帰った。ただし、今後、この件では、ラッシルとは協力していくため、情報は提供する。


グラナドは連日、議事堂と魔法院を往復した。ファイスとオネストスは議事堂の方、俺とハバンロは魔法院の方、二組交代で、護衛をした。シェードは治療後に復帰したが、ミルファと共に、魔法教育と訓練の方に、力を入れるようにした。また、フィールもシィスンやゲイターでの経験から、少しでも高いレベルの水魔法の技術を、正式に学ぶ学ぶために、ミルファ達の鍛練に、途中から参加し始めた。レイーラは、シェード入院中は、付き添っていたが、退院してからは、以前のように、神殿で励んだ。


ライテッタは一命を取り止めたが、直ぐに復帰は無理だった。グランスは、操られていたとはいえ、味方を刺してしまったのだから、本来なら、処分は免れなかった。しかし、ライテッタが減刑を嘆願したので、「後遺症」が出ないことがわかるまで、入院して、検査を受けることで、厳罰は無くなった。本人は放心状態で、どちらにしても、復帰は先のことになる。


グランスの恋人は、行方をくらましていた。彼の入院していた騎士団の病院で働いていた、看護師だった。名前の他は、黒髪の小柄な女性、という以外の事は、病院側には殆ど情報はなかった。雇った理由は、クーベル市民病院の紹介状を持っていたからだ。だが、紹介したのは、本来は別の女性だった。その女性は、黒髪で目の色も同じ茶色で、背格好もだいたいあっていたが、年齢は違っていた。雇い主は、少女のように若く見えたのは驚いたが、都会の女性には珍しくないので、特に問題にしなかったそうだ。


本物は、途中で行方不明になっていた。


これを受けて、アリョンシャが、ラズーパーリから王都までに、彼女が辿った足取りを追う、と、調査に旅立った。




一方、アルトキャビクは、「蓋」をした後は、嘘のように沈静化した。エレメント値は、キャビク島だけでなく、コーデラとラッシル全体で、見本のような正常値に戻った。複合体以来、監視を続けていた各所でも、同様だ。しかし、土地柄により、偏りはあるのが普通なため、一ヶ月後には、自然の状態に戻った。


キャビク島住民の間では、火山噴火をグラナドが納めた、と噂が広がり、一気に王室派が増えた。グラナドは、これを、「偶然の皮肉」と自嘲的に言っていた。




敵から連れ出した三人と、先に幻影の森の時に、保護した少年とを面通ししたが、知り合い通しだった。マントの女は、「エウィン」と名乗った。北部出身で、ポルトシラルで名の通った学校に、奨学金で寄宿していた。その時出会った男性と、結婚してアルトキャビクに移ったが、夫と彼の父親が、事故死してしまった。義理の母親のつてで、エクストロスが逗留していた城で働くようになった。そこで、ルヴァンに会い、「誘われ」た。


ルヴァンは、「原聖女教会」の民間聖職者だ、と名乗っていた。原聖女教会は、キャビク発祥の会派だ。デラコーデラ教の前身である、アルコーデラ教から直接派生した、とされているが、現行のアルコーデラ教よりも、「保守的」(控えめに言えば、の話だが)な教義と、極端な厳罰主義と禁欲主義から、いわゆる「カルト」と、見なされていた。ルヴァンは、自分を改革派、穏健派だと言っていた。エウィンは、特に宗教熱心ではなかったが、それが返って、褪せて淘汰されたはずのものを、彼女の目には、新しく画期的な物に映るよう、「魅せて」しまったようだ。


彼女はルヴァンと婚約していたつもりだった。こういう形で切り捨てられたので、彼女は、知ってることを喋ってくれた。


彼らは、社会に不満のある、若者中心に人を募り、エクストロスの元に集めていた。テスパンの時と違い、誰でもという訳ではなく、一定以上の教養のある者ばかりだった。理由は、キャビクで伝説になっていた、古代魔法の検証をしたかったからだ。魔法体系自体は、エクストロスから提供された物で、集った者達が、解読する必要はなかったが、キャビク古代語は必要だった。


その、伝説でしかなかった術は、


「永遠に生きる術。」


「双子王による魔力の奥義。」


「時空を越える術。」


「選ばれた者に力を分ける方法。」


である。


どれも、今まで、敵がやろうとした事だ。しかし、このような術は実現不可能で、魔法院でも神殿でも、実施のための研究はしていなかった。だが、エクストロスは、一応、「実現」してしまった。どうやったかは、謎だが。


エウィンは、エクストロスは、


「正当なキャビクの王の子孫で、双子王に連なる者」を名乗っていた、と言った。だが、キャビクの王室の直系の血筋は、とっくに絶えていた。庶子の血筋は、ラッシルのヴォツェク伯爵家に辛うじて繋がるが、エクストロスは、彼等とは無関係だった。


カオスト公爵は、結婚不可能な年齢で、未婚で妊娠した若い娘から、子供を引き取る施設を持っていた。この施設自体は、正規の物だったが、カオスト公爵は、不正規に、ここからエクストロスを用意した。


公爵は、親の名前は控えていたので確認したが、母親は、とある王都の富裕な商家の娘で、出産後は、二年で結婚して、コーデラを出ていた。夫とシーチューヤにいることが確認されたが、施設からは、彼女には、子供が最終的にどうなったかは、知らせていない。


エクストロスとグラナドが対面していないから、確証はないが、エクストロスの中身が、「古代の魔法体系に詳しい人物」に代わっているのだろうか。しかし、仮に俺達の融合型や、新型に近いものだとして、形に収まるまで、彼はどこに漂っていたのだろう。古代人の霊や魂みたいなものとして、そんなものがあったら、なぜ超越界は見過ごしたのか。


しかし、重要なのは、彼がどこから来たか、より、どこで何をしようとしているか、だ。




双子の男子は、北部の孤児で、最近連れてこられたため、あまり内情は知らなかった。施設で付けられた名前は、エトン、トベイと言ったが、意味は「長男」「次男」程度なので、ルヴァンが、「エルオス」「トビアス」と改めて名付けたそうだ。


エクストロスは術のため、双子を何組か集めていた。エルオス達は、比較的能力が高いので、じっくり育てられる予定だったようだが、今回の任務のために「準備」された一組が、直前にいなくなったため、急ごしらえされた。双子はもう二組ほど居たようだが、お互い交流は持てなかったので、殆んど知らなかった。エウィンも、双子ごとに世話する「係り」が違うので、他所は知らなかった。


その当たりを、ケンナールから聞き出したかったが、彼は黙秘していた。というより、内部の細かいことは、知らなかったようである。知ろうとしなかった、と言ったほうがいいだろう。彼の関心は「復讐」であって、「新秩序」でも、「キャビクの復権」でもなかったからだ。




「奴が黙秘しているってことは、復讐の芽が、まだ摘まれていないって、事かもしれない。」


と、グラナドは言った。


「ソーガスとルヴァンは、島の壊滅が目当てじゃ、無さそうだ。ただ、二人が同じ目標をも持っている、とは思えない。」


ある夜、魔法院から早めに戻ったグラナドと、珍しく皆で揃って夕食を取った。食後、ミルファはハバンロが、レイーラはシェードが、カッシーはファイスが部屋に送った。俺はグラナドについて、クラリサッシャ女王の所に行った後、私室まで送る。明日は会議が少し早くからあるので、遅くはなれないが、


少し話をした。


俺は、


「それは、彼等がこれからやろうとしている事が、島を吹き飛ばしてしまうような、大規模な事だ、という意味かな?」


と尋ねた。


「島を吹き飛ばすまでかどうかはわからんが…ただ、あの時、地下の奥にエクストロスがいた、と仄めかしてただろう。彼は、魔力は弱いから、そのままなら、恐らく、大量のエレメントは受け取れない。穴を塞いだせいで、地下の彼に集中して、ああなったとして、ソーガスとルヴァンは、塞いで島を救う派、ケンナールは解放して島を壊滅させる派だとすると、生じた結果は、逆だ。


ソーガス達が目的を遂げようとすれば、反対にケンナールの目的に到達するかもしれない、だから、様子を見ている、そんな所だろう。」


ソーガス達、というが、今もソーガスなのだろうか。最後のあの様子、一見、エレメントが入り込んで複合体になった、と見えるが、宿主が人間の場合、ただ入り込んだだけで、なった例は過去にもない。もっと別の何かがある。


「もっと、別の何かがあるな。」


俺の考えを、グラナドが口にした。


「どっちにしろ、このままで終わりにはならないだろう。ソーガスが慣れるまでは身を潜めていると思うが。


念のため、キャビク島の伝承を調べてみたが、双子王そのものが口頭伝承文学だ。だが、古代文字が出てきたってことは、隠された文献が存在する可能性も…。」


眉間に皺を寄せる様子に、話の深刻さを忘れて、少し微笑ましくなってしまった。


「なんだ。にやにやして。」


様子が可愛く見えて、とは、言いにくい。言うかわりに、俺は、手をのばした。


「お前、こういう、話の遮り方は…。」


と、微笑んでいる。だが、ノックの音がし、グラナドは、大声で


「入れ。」


と言い、俺は離れた。


オネストスだった。失礼いたします、と、礼儀正しくドアを開けたは、礼儀を失して、俺達を目を見開いて、交互に見つめた。


「なんだ、陛下のお呼びか?」


とグラナドが言うと、はっとして、


「いえ、お部屋に向かわれる時に、『明かりが見えたから、夜更かしせずに休むように。』、と。明日は早めの会議ですから。」


と答えた。グラナドは、俺に退室を促した。俺は、


「お休み。」


と、言って、出た。


出たとたん、オネストスから、


「明日、お早いのはわかってるんですから、気を付けてください。」


と言われた。


返事をする前に、オネストスは、足早に進み、あっという間に見えなくなった。呼び止めようとしたが、逆に呼び止められた。


背後を見ると、アリョンシャが立っていた。


「遅くにごめん。殿下は、お休みかな。」


「いや。まだだと思う。」


「じゃ、悪いけど、お知らせして。僕は、オネストスに言って、陛下を。君は殿下と『二人で』、陛下の所に。」


と、転送で移動した。


俺は、慌てて、出た部屋に取って返した。


グラナドは休むところで、まだ完全には着替えていなかった。俺が戻ったので驚いていたが、アリョンシャの事を伝えると、


直ぐに服を整え、女王の所に向かう。


女王の私室には、アリョンシャとクロイテスと、リスリーヌがいた。そして中心に、見知らぬ女性が立っている。短い金髪の、小柄な女性だ。濃い紅いブラウスに、黒レースの帽子、夏服にしてはスカートは黒い重たそうな生地だ。昔、「山間いの未亡人風」、とか言われていた服装に似ている。しかし、彼女は、ドレスアップでこういう格好をしているのではない。飾りやアクセサリーが無く、普段着としてこういう服を着ているのだと見てとれた。


女王は、彼女を指し、いきなり、


「グラナド、この女性、どなたか解るかしら?」


と尋ねた。いきなりの質問に、俺は驚いたが、グラナドは、静かに彼女を注視した。


「すいません。お名前は忘れてしまいましたが、お顔はなんとなく見覚えがあります。私がギルドにいた時に、クエストでお会いした方だと思いますが。」


覚えてないなら、賢い言い方だろう。女性は、覚えてない、と言われて、ほんの僅かだが、眉を動かした。グラナドの方の表情は変わらなかったが、俺はこの様子から、ああ、覚えているな、と思った。


「この方、アルビクカの宿屋のお嬢さん。アサーナさんというの。彼女は、従姉妹が、貴方の子供を妊娠したのに棄てられて、自殺した、と言っているわ。」


俺は驚いて、女王陛下の前だというのに、「え?!」と大声を出した。グラナドは俺を見て、


「違う!俺はソフィアさんとは何も。話しただろ?!」


と素で言ってしまって、我に帰り、


「失礼いたしました。」


と女王に畏まった。女王は、


「『接待』に当たった、この人は覚えていなくても、そのソフィアという女性は、覚えているのね。」


と言った。アサーナの顔に、さっと紅が差したが、女王はそれは無視して、グラナドに、「話しなさい」と一言言った。


グラナドは、だいたい、俺に言ったのと、同じ内容を語ったが、一応「紳士」なため、際どいところは、上手く言い抜けた。


「夜中で、薬が効いて、朦朧としていたので、正確な様子はわからない。アサーナさんがいたかどうかは覚えていない。」


「ソフィアを覚えていたのは、仕事の補佐をする『班長』だったので、彼女以外とはあまり話さなかったため。」


「まだ『子供』だった自分は、何が起きたか解らず、同行した冒険者に、詳細を聞いた。」


「『真面目なソフィアが知ったら止めるから、彼女抜きで計画した』と言う話を、村人から聞いた。」


等々。


女王は、グラナドに喋らせた後、皆に向かって、


「事件のあらましは、ギルドマスターから聞いています。ピウストゥスは、王子の身分を隠していたけど、子供が出来ていたら、放っては置けないので、追跡調査もしました。その結果、妊娠した者は居なかった、と解りました。同行したギルドメンバーも、同様です。」


と語った。だが、アサーナは、


「あの、でも、殿下は、身分の高い女性と、どうしても結婚しないと、王様になれないんじゃないのですか?だから、結婚する前に、ソフィアに子供がいたら、まずいからって。」


と、おずおず言った。一瞬で空気が凍った。リスリーヌが、短い嗚咽を漏らした。女王は落ち着いて、一呼吸すると、


「村の人達、特にソフィアさんのご遺族が、なぜ、そのように、話をされたのか分からないけど、時期から見ても、ピウストゥスは無関係でしょう。長く見積もっても、ミルファ嬢達と、リンスクのにいた頃と同時に、プラティーハにいなくては、ならないわ。」


と言った。どうも、ソフィア自身がグラナドのことを、言い残したわけではないらしい。


アサーナは、がっくりとうなだれた。女王は、


「ハーストン。」


と、クロイテスの、背後のカーテンに呼び掛けた。カーテンの奥から、騎士ハーストンが現れた。


女王は、


「彼女を控えの間に。」


とハーストンに言い、リスリーヌに、


「後で戻る時に、『お部屋』に。」


と言った。「お部屋」は独房か尋問室か。いや、女性と言うことで、リスリーヌの元、神殿に留置するようだ。ハーストンは礼儀正しい立ち居振舞いで、アサーナを連れ出した。


「彼女は、何をしたのですか?私に不敬というだけで、尋問でしょうか。」


とグラナドが女王に尋ねた。女王は、


「確かに、ああ信じこんでいたなら、個人的には同情するけれど、だからと言って、グランスを騙して一服盛っていいわけではないわ。まして、反コーデラ組織に協力なんて。」


と静かに答えた。グラナドは驚いた。アリョンシャが調査していた件の話なら、アルビクカの話だけで終わるはずはなかった。しかし、グラナドは緊張が最大限だったのだろう。ここで張り詰めたものが、一気に切れたのか、少し、ふらっとしていた。俺が支えたと同時に、女王が椅子を薦めた。


女王に先を促されて、アリョンシャが話し出した。


「ギルドでマスターのルパイヤにも確認しましたが、ソフィアと言う女性は、亡くなった時は、村を出て、プラティーハで学校に寄宿していました。そこで事故で亡くなりました。友人達とハイキング中に、大雨ではぐれ、川に落ちたということです。


彼女には、付き合いはじめの恋人がいたらしいですが、友人は顔や名前は知らなかったようです。死亡した時に名乗りでなかったし、葬儀にも姿を見せていないので。


ルパイヤには、死亡した後で、彼女の両親から、『手紙に、プラティーハで昔の知り合いに、何人か会った、と書かれていた、村娘が会う余所者なんて、毎年、蜜蜂退治を頼んでいた、ギルドの誰かだ。』と捩じ込みがきたそうです。


だから、おかしな方向の噂が立ったようですね。


それはそれとして、アサーナはソフィアの死後に村を出ていました。クーベルではなく、北クシウスの病院で働いていました。そこで『勧誘』された、と本人は言っていました。病院に良く来る、白髪頭の男性で、『男爵』だと言っていましたが、はっきり名前はきいていないそうです。


偽の紹介状で騎士団の病院に勤めたようですが、彼女は、紹介状の持ち主がどうなったかは、聞いていませんでした。


持ち主は、クーベルを出て、船に乗ったまでは確認されています。アサーナはナンバスで紹介状を渡され、列車と馬車で王都に向かっています。残念ですが、行方不明の女性の消息は、追えませんでした。


グランスとアサーナが付き合い始めたのは、退院した後です。婚約していたわけではありませんが、彼女は『結婚するから』と病院を辞めて、グランスの家に通い詰めでした。今の彼女の手元にはないのですが、自称男爵から貰った『結晶』を、料理に混ぜていたそうです。


彼の自宅は、王都郊外にあります。祖父から、遺言で譲り受けた物です。アサーナは、同じく郊外の私立病院の近くにアパートを借りて、その病院に転職していた事にしていました。


彼女については、自宅に何度か行ったサリンシャから、証言が取れました。夕食の席で、アルビクカの出身だ、と口を滑らせ、グランスから、


『プラティーハと言ってなかったか?』


と聞かれ、慌てて、


『田舎だから、恥ずかしかった。』


と言った様子が、印象に残っていたようです。だから、本人確認できました。


で、サリンシャが、親切のつもりで、キャビク島の任務で、グランスが大変なことになった、と彼女に伝えたそうです。彼も、大怪我したらしい、とだけ聞いていたそうですが、殿下が負傷した、と噂も流れていたので、急に怖くなって逃げ出した、と言っていました。


確保したのは、アルビクカです。髪を短くして、金に染めて、両親の宿屋にいました。両親は、やっと娘が帰ってきた、と喜んでいたので、後味は悪かったですが、見逃すわけにはいきませんので。」


グランスは恋人に騙されて、謀反に荷担させられたわけか。それは放心状態にもなるだろう。


グラナドは、俺が呆れている間に、


「病院も調べたほうがいいですね。新人の看護師一人で出来ることとも思えません。」


と、頭を切り替えていた。


とたんに、リスリーヌが、


「御許しを。」


と、泣いて跪いた。グラナドは倒れたと思ったのが、直ぐに支えて助け起こそうとしたが、リスリーヌは、グラナドにしがみついたたまま、


「御許しを。」


と繰り返した。


グラナドが、どうしたんだ、と尋ねるより早く、リスリーヌは、思いを吐き出した。


「あのような者が、殿下に、あのような事を。あれは、全て、私のせいなのです。」


今度は、女王も、どうしたのです、と言った。リスリーヌは、顔を上げ、涙に濡れた目をグラナドに向け、言った。


「あの時、あの夜、ヴェンロイド師を、ディアディーヌ様の所に、橋渡ししたのは、私なのです。」






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