第4話 最終回 夏休み最後の夜

 ついにそのときが来た。

 わたしは愛の女神のごとき美しい萌の裸身を目にしていた。

 そして、わたしの痩せたからだを彼女に晒した。

 恥ずかしかった。

 萌の健康的で豊かな肉体に比べて、わたしのスタイルはあまりにも貧しかった。

 わたしは手で胸と股間を隠した。

「綺麗だよ、珠希……」と萌は言ってくれた。お世辞だとわかっているけれど、うれしかった。

 わたしたちはそれを始めた。

 夏休み最後の夜だった。


「あ……」

「うふっ」

「萌、やめて」

「カワイイ、珠希」

「だめ……」

「愛してる。大好き」

「わ、わたしも好き……」

「ぺろっ」

「あ、あ、あああ~」

 ………………

 …………

 ……

  

 40項目すべてを終えた。

 最後のはあまりにも素敵な体験で、脳がスパークした。

 天国のお花畑にいるようなふわふわした感覚であり、地獄で炎に焼かれているような圧倒的な感覚でもあった。

 本当のところは、どう表現すればいいのかよくわからない。

 萌を愛していることだけが真実だった。

「やりきったね……」とわたしは言った。

「やったね」と萌は答えた。


「次は冬休みだね」

「え?」

「あなたとあたしの冬休みの宿題」と萌が言って、わたしに紙を手渡した。

 それをちらりと見て、「嘘でしょ、またやるの?」と返答する。

 紙には次のように書かれている。


 1 一緒に除夜の鐘を聴く

 2 初詣に行く

 3 雪合戦をする

 4 温泉に入る

 5 渋谷のスクランブル交差点で愛を叫ぶ

 6 甘酒を飲む

 7 猫カフェに行く

 8 キスする(もっと深いやつ)

 9 セックスする(もっと激しいやつ)

 10 永遠の愛を誓う


「冬休みは短いから、10項目だよ~」

「もっと深いキスってどんなの?」

「さあ、あたしにもよくわからないな~。とにかく熱く激しいキスだよ~」

 わたしは呆然とした。

 そしてからだの奥底が疼いた。

 萌ともっと深いキスをしたい。もっと激しいセッ……をしたい。

 永遠の愛を誓いたい……。

 明日から2学期が始まる。

 さっさと終わってほしい。

 冬休みが待ち遠しくて仕方がなかった。


 少女たちの(エロい)夏 完

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少女たちの(エロい)夏 みらいつりびと @miraituribito

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