08 ◯◯帝国爆誕でありまぁす!!!
神都クロネスを餌に使い、やってきた神や天使をデウスを操って結界術で閉じ込め、録画していた放送で動揺を誘いつつ、仕掛けていた爆薬やマキナの上空からの艦砲射撃でまとめて一網打尽にする第一の計画は、女神の独断行動の所為でエクレールを殺せなかったのは痛いが、概ね成功したと言える…その事については散々叱ったから暫くは大人しくしてくれるだろう。
「ラ〜ストッ♪この国の名前決めよーよ!」
とは言え、まだやるべき事は沢山ある。女神の権能が弱体化している以上…対軍、対大都市に特化した戦略兵器…マキナのみでは、今回のように余程お膳立てをしない限りは、神や悪魔に勝つ事は不可能だろう。
「ねえ、ラスット…?」
後々の…『天界侵攻』を考えれば、まだ一隻しか船を用意出来てないのも正直辛い。鉱山といった地下資源の確保さえ出来れば、事前に女神に創らせた全自動工廠で造れる…が、下手に帝国の限りなく低い戦力を分散させる訳にもいかない。
「ラスット…ねえねえ、聞こえてる?」
現状…帝国は何かしらのエネルギーが供給されない限り、ただ壁が分厚くて高いだけのハリボテの城に等しい。徹夜続きで兵装に割くリソースがなかったとはいえ……はぁ。
「ラスト〜ねえ、ラストってば!!」
「むむ?どうしたでありまぁすか?」
「それがね…何度呼びかけても、ずっと上の空なんだよー!!」
「ほほう。こうなったら、アレをするしかないでありまぁすよ!!」
デウスも安定していないしエクレールが生存した以上、こちらの手の内を知られていて相手もそれを警戒し、対策して来る筈だ。今はこれから帝国に侵攻して来るであろう対神、対悪魔に特化した
「で、お前らは俺に何をしようとしてる?」
「「……ぎくっ。」」
真剣に今後の事を模索している俺の顔に勝手に落書きをしようとする2人に問いを投げた。
「そ、それは…でありますねぇ…ユティ姉が教えてくれるでありまぁすよ!!!」
「ええ!?私!?!?言い出しっぺはマキナちゃんでしょ!!『きっと、目を開けたまま寝てるでありまぁすよ〜だからバレないでありまぁす。』とか言ってたよね!!」
「はい捏造!!それ、捏造でありまぁす!!吾輩はそんな無礼な真似はしないでありますよ!騙されるなぁーでありまぁす!!主殿っ!!!」
「私の方がラスットとは付き合い長いんだからマキナちゃんが嘘ついたって事くらい分かるよねっ…ラ〜ストッ♪」
俺もこれくらいの馬鹿だったら…こんな事をせずに、カスラと施設の中で幸せな時を過ごせていたかもしれない。
「確かこの国の名称についての話だったか。」
「!!!そうだよ〜ラスットってば私の話ちゃんと聞いてたんだ…!!」
「名称…でありまぁすか。別に、今の『帝国』呼びでもいいと思うでありまぁすが……」
「考えてみてマキナちゃん。帝国だけだと、なんか…パッとしないじゃん!!例えば、『ラスト帝国』とかの方がカッコ良くないかな?」
「はえ〜…成程したであります!ユティ姉。吾輩大納得でありまぁす!!」
「でしょ、でしょ?」
そんな事を決めるよりも前にやるべき事が山積みなんだが…しかし決めてやらないと女神とマキナがしつこく来そうだから、仕方がない…本当に面倒だが考えてやるか。
「じゃあ、『マキ帝国』とかどうで…」
「「却下だ(だね☆)。」」
「即答!?主殿はともかく、ユティ姉まで…どうしてでありまぁすか!!理由を説明してくれでありまぁす!!!」
女神が俺に近づいてマキナに聞こえない程度で耳打ちした。
「初めて意見が一致したな。」
「うん…私が説明するから後は任せて♪」
そう言ってから、俺から離れてマキナに申し訳なさそうに言った。
「ラストってね。前にマキって神様に無様に殺されかけてたから…ね?配慮してあげよ??」
それを否定する気はないが、それとは別に今から女神の恥ずかしエピソードでも記録しておくか。それをいつか俺の手で殺す時に喉が枯れるまで聞かせてやるのも悪くない。
「そ、そうでありまぁしたか。ごめんなさい主殿。知らなかったとはいえ、心の傷を抉ってしまい…」
「別にいい。もう終わった事だ。」
マキナは申し訳なく俺に頭を下げた。その時何故か女神の表情が僅かに強張っていたのが気にはなったが…考えた所で時間の無駄か。
「ユティ姉は…何か閃いたでありますか?」
「う、う〜ん『ユティとお馬鹿な仲間達帝国』とか良いんじゃないかな…ねえラスット?」
これ…突っ込んだ方がいいのか。それとも真面目に言ってるのか?前々から相当イカレている奴だとは分かってはいたが、まさかここまでとは…まず長い。印象に残るかもしれないが、短くキチンと纏めていないと相手も覚えてくれないだろう。マキナやデウスは分からないが、俺は女神よりかは頭はいい筈だ。そして何よりも重要な事は…俺が一々それを口にしたくない。
想像して欲しい。
「フハハハハ…!!我が『ユティとお馬鹿な仲間達帝国』の領土を侵犯するとは…生きて帰れぬと思え!!!」
「ふん。逃げるか…腰抜け共め!!『ユティとお馬鹿な仲間達帝国』がまたいつでも相手になってやろう。」
……これは思っている以上にキツイな。
「…ユティ姉!!大丈夫でありまぁすか!?」
「うん…平気平気ー。私ってば超元気ー。」
「いや、声が死んじゃってるでありますよ!?」
考えている間に、女神が膝から崩れ落ちているが…立ちくらみか?弱体化している以上あり得る事なのかもしれない。
「…ユティ。その、悪いが…」
「うん…分かってるよ。ラスット…私が悪いんだから……長いんだよね。うん知ってるよ…ならさ。ラストは何がいいの?」
「…そうでありますね!そろそろ主殿の意見を聞きたいでありまぁす!!」
む…ついに俺の番か。何度か思考を巡らせてみたが結局は、国名なんて所詮記号に近いからマキナが言っていた通り、『帝国』呼びで全く問題ないと思ったが……
「えっと…ユティ姉は何故、吾輩をじっと睨むでありますか?」
「…何でもないもん!!」
「それ…絶対何かあるパターンでありますよ?」
せっかく名称を決める事になって、そのままでいいなんて言えば興醒めもいい所…か。
女神が例えで言っていた『ラスト帝国』…さっきのよりかは全然アリだが…俺の名前を誇張しすぎている気がするし…何故かは分からないが不吉な雰囲気がある。名前をそのまま国名にするのは無しだな。
なら、適当にこの場にいる3人の頭文字を合わせて『ラテマ帝国』…これなら響きは悪くないが、デウスやまだ造っていない
俺は自然と頭に手を当てていた。
冷静に考えると、国の名称を考えるなんて別にしなくてもいい事なのに何故、わざわざ貴重な時間を割いてまで真面目に思案している?たかが計画が一つ成功しただけで少し気が緩んでしまったのか…俺は。こんな姿を唯一の友だったカスラが見たら、確実に俺の前でゲラゲラと腹を抱えて笑い転げるだろうな……あ。
カスラ…ラスト
「…カト帝国。カト帝国はどうだ。」
「カト帝国……んん?それ、どっから出てきたのでありまぁすか?」
想像出来た返答とはいえ、言いづらいな。
——カスラ。施設でずっと一緒の部屋で17年間の時を過ごした…俺のたった1人の友。その正体は、公爵級の悪魔の1体…『全てを騙す悪魔』にして、俺がこの世界全てを壊そうと決めたきっかけになった人物。
「カト帝国…ん〜ラスットにしてはいいセンスなんじゃない?私、賛成するよ!」
意外な事に女神が食いついて来た。俺が言うのはおかしいかもしれないが…それでいいのか?行動パターンが全く読めないのは不気味でしかないが…この場合、好都合と捉えるべきか。
「マキナちゃんもこの名前でいいでしょ?」
「ナハハッ。元よりそんなに拘ってなかったでありまぁすから。それで決定でいいでありますよ!」
「じゃ、決定かな。ねっ、ラスト?」
「そうだな。」
これで話は終わったな。女神とマキナもこれ以上は話しかけてこないだろうし、次の策を練りながら、それと並行して世界地図の作成をするか。俺が知っている区域ならすぐにでも書き込める……確か、3つのボタンの内の緑のボタンだったか。作業机が出てくるのは…エネルギー的に、時間制限があるが…その間に終わらせれば…
「…まだ何かあるのか?」
2人が何か言いたげな表情でじっと見ていて渋々玉座での作業の手を止めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます