第5話 朝の教室
『それでね、』
チュン…チュン…
『あっ…もう朝だね。』
「あっほんとだ。えっ今何時…。」
教室の時計を見る。
「げっ、もう5時まわるじゃん。」
まさかこんなに話し込んでしまうとは。明日ってか今日も学校あるじゃん。準備全然してないじゃん。あー休みたい。しんどい。
『でもさ深夜の教室も良かったけど、早朝の教室もなんかいいね。』
初音が笑顔で俺に言った。
「…そっそうだね」
なんだろ。初音は可愛い女の子だと思う。でもなんかそれだけじゃない気がするっていうか。言葉じゃ説明できない。
でもとりあえず今は、朝日が刺した初音のその笑った顔から……目が離せない。
『ん?どうしたの?』
「えっ!あっいや何でもない。」
『それじゃあ私帰るよ。授業の準備とか何もしてないし。』
準備してもいつも寝てますけどね君。
てか俺も早く帰らないと。親が起きんのいつも6時ぐらいだからそれまでに帰らないと。色々めんどいし。
でも…、もう終わっちゃうのか。
ガラガラ…
『それじゃあまた学校でね。綾瀬くん。』
……!
「あっうん!また学校で…!」
初めて学校で名前呼ばれた……
──────
また、学校でか…。また話せたらいいな…
てかよく考えたら俺今日とんでもなくすげーことしたんじゃないのか。深夜の学校で女子と2人で朝までおしゃべり。いやいやありえん。夢かこれ。
帰路を辿る足が震える。実感が湧かない。
でも、深夜の教室で同じクラスの女子と話した。その事実だけが今ここにある。
「今日学校楽しみだな……」
それは生まれてから、感じたこと思ったこと、全部が嘘だと思うくらいに心の底から出た本音だった。
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