作中にこんなことばが出てくる。
――世界は海と同じくらい、命を賭けるに値する、知らないことに満ちている。――と。
本当にそうだ。こんなにも命をかけた恋を成就させていった生命体を知らない。
主要登場人物海洋生物学者。そしてお相手はタコ、シーザー。
研究者と研究対象。水槽越しに陸と海分かれて暮らす関係性。超えてはならない一線がそこにはあった。
ドタバタ研究コメディになる……かと思いきや、そうはいかせぬ驚きの展開。嵐の夜に秘密の行為。次々と他のタコが消えていくホラーのような事件。
タコの好奇心旺盛な性格と、ある生態的特徴を、生かした、せつないラストシーン。
果たしてこれは、恋なのか、それとも行為を強いられたあとの症状なのか、海の音だけが残される。