第50話






「そっち行ったぞ! 任せた!」

「任されよ……『風刃』……ッ!」


 ムキムキマッチョは『風刃』を唱えた!


 ゴブリン型ゴーレムEに35のダメージ!

 ゴブリン型ゴーレムFに32のダメージ!

 ゴブリン型ゴーレムGに41のダメージ!

 ゴブリン型ゴーレムEをやっつけた!

 ゴブリン型ゴーレムGをやっつけた!


 ゴブリン型ゴーレムFの弓矢攻撃!


「甘いわね! 『風圧障壁』!」


 金髪ギャルは『風圧障壁』を唱えた!

 金髪ギャルはダメージを受けなかった!


「いくぜ……! 『真空弾』!!」


 イキリチャラ男は『真空弾』を唱えた!

 ゴブリン型ゴーレムFに87のダメージ!

 ゴブリン型ゴーレムFをやっつけた!




「と……こんなもんか。というか普通に魔物出るんだなこのダンジョン」

「でもゴブリンにしては何か動きが変だった気がするけど……何なのかしら」


 意外とこいつらの動きが良かったので、実況してサボってました。

 流石はちょっと前まで現役で冒険者やってただけあるわな。

 連携がスムーズだし、上層のうちは心配いらなそうだね。


 といってもまだ上層だ。推奨レベルにして5から10前後ってとこ。

 中層に入ってからが本番ってとこかな。



 それにしてもマッチョマンが全然筋肉使わない件。前衛ですらないし。

 それ何のための筋肉だよ!!



「お前らは大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

「大丈夫」


 私らは見た目が弱そうだからか、あんまり前に出してもらえてない。

 なので出番がない。別にいいんだが。この試験はパーティの評価の配分も高めみたいなので。


 ま、私は言わずもがな、黒髪ちゃんでさえ君たち3人まとめてよりも強いんだけどね。



「……! またゴブリン!?」

「おい、今、壁の中から出てこなかったか……!?」



 そういえばだが、ここの魔物型ゴーレム、基本的には生体部品が使われている。フレッシュゴーレムってやつだ。

 魔物の素材なんかを元に、こう、獣のお肉とかをいい具合に魔術的に混ぜ混ぜしながら変換したり整えたりして作ってある。

 ゾンビとかのアンデットとかとは違って、完全に魔術駆動なので安心安全だよ。(ただし術式構造の安定性による)

 データを元に行動もかなり再現されているので、実際のダンジョンの雰囲気づくりに大いに貢献してくれているのだ。動き方とかルーチンは多少機械的だけどね。

 見た目、というか外装ほとんど普通の魔物と変わらない。ただしこの辺も術式精度によるので失敗するとちょっとホラーなグロ注意になるけど。


 最初は単なる雑魚敵の配置のために作ったけど、副院長とかのアイデアなんかも色々盛り込んだ結果、ダンジョンの迷宮術式と連携してかなり複雑怪奇な術式になってしまっている。


 例えば、倒されたらダンジョンが回収して、ダンジョンの中で再生成する仕組みとか。

 生成用の素材も冒険者ギルドからの納品で大量にストックされているので、実質無限湧きと言ってもいい。


 割と大変だったけど、結構それっぽい感じに出来たんじゃないかな?



「数も強さも大したことないが不気味だな……突っ切ってさっさと次の階層に行くぞ!」

「ええ、やるわよ! 『風圧装甲』!」


 お、強化系付与術式の他人への行使か。

 これって自分への付与と違って、対象に術式と魔力を付与して継続的な出力をする必要があるから結構高度なんだよ。

 術式の構造も少し変わるから制御も難しくなるんだけど、中々やるね。



「……失礼するぞ」



 お?


「え?」

「わぁ」


 おもむろに筋肉男が近寄り、黒髪ちゃんともども、ひょいと両脇に抱えられてしまった。


 こいつらを警戒する必要性が皆無だったせいで抵抗する気にもならんかったが、なんだ?

 意外に丁寧な持ち方だし、やけに手馴れてる感あるが……。



「よっしゃあ行くぜ! 『順風走破』! ゴブリンども、そこをどきやがれ!」



 お、おおっ!?


 風を纏って加速したチャラ男がゴブリン型ゴーレムの群れに思いっきり突っ込み轢き蹴散らす。

 その後ろをギャルと筋肉with私たちが全力で走って付いていくという構図。


 えええ、いや、力技過ぎでしょ……!?


 なんだかんだ上手く行ってるから評価的には減点ではないだろうけど!



「うひゃぁ」

「おおー速い速ーい」



 思ったより快適だけど邪道だぞ!! 本当にそれでいいのか!?





・・・





 トレイントレインで走って行って、一気に中層に到達。

 途中でトラップなどにも引っかかることは無く、平和と言ってもいい、のだが……。


 なんか迷宮の製作者としてちょっと釈然としない……。



「お、宝箱か。遺跡っぽいダンジョンに似せて作ってあるっぽいからあってもおかしくはなさそうだが……どうする?」

「……無視でいいんじゃないかしら。私ら試験を受けに来てるのであってクエストしてるわけじゃないし」


「一応、宝箱の中身は自由に持って帰っても大丈夫って説明あったよ。トラップもあるから自己責任になるけど。一応加点ポイントにもなってる」


「そうなのか? 一応調べてから中身見てみるか……?」


 ここのダンジョンの宝箱の中身は魔術院で作られた魔道具の不良在庫が適当に入れられている。

 なのでそんなにいいアイテムは入ってないのだが。こいつらみたいな中級冒険者らへんの人の小遣い稼ぎにはちょうどいいレベルなんじゃないだろうか。

 まぁ最近の中身のラインナップに関しては私はノータッチなので詳しくは知らんが。


 そうそう、ところで、いわゆる普通のダンジョンの宝箱。あれってよくよく考えたら不思議な存在だよね。

 これ、もちろん人や魔物が設置してるのもあるけど、実は自然発生してるってやつもあったりするのよ。


 ミミックって魔物がいるんだけど、こいつって要は周囲の入れ物的な箱の形をまねて外殻を作る、一種の貝みたいな魔物なのだ。

 で、箱と言っても二枚貝的構造の殻を好むので必然的に宝箱的な形のミミックが多くなり、そういう天然のトラップみたいになってるってわけね。

 ただ、こいつらは貴金属や魔力を帯びた物を溜め込む習性があるので倒せばちゃんとお宝が手に入る。

 そして、中身が自然死すればそこに勝手に宝箱が設置されるっていう形になるわけだ。

 だから何故かぽつんと意味不明な場所に宝箱があったら、それは間違いなくミミックと考えていい。


 魔物としての強さは魔女さん判定20~25レベルくらいで意外に強いのだが、基本的にこっちから触れなければ動かない。

 というか他の大きな生き物がいる場合は触れられない限り一切動かない。


 触ったらワイバーンに匹敵するクラスの魔物がいきなり至近距離から襲ってくることになるので、腕に自信が無いなら怪しい宝箱は放置がおすすめ。

 外だとアホなゴブリンとかが餌になってることもあるが、逆に同じく貴金属大好きなドラゴンさんなんかには狩られてしまったりしてたり。

 悲しいけど、これが弱肉強食ってやつなのね……。


 で、このダンジョンにはそのミミックさんがたくさん放し飼いになってます。あんまり自発的に動かないので管理しやすいし。

 ちなみに、このダンジョン内で実際に生きている魔物はこいつとスライムくらいかな。あとは全部魔物型ゴーレム。



「忠告しておくと、中層からはミミックも出るって書いてあった。気を付けた方がいいよ」



 はい。そしてもちろんいま目の前にあるこの宝箱もミミックさんです。

 まぁ危なそうなら助けるが、この辺は評価ポイントにもなってるのでどこまで手を出そうかちょっと迷うね……。


 正直この忠告も結構グレーなのではと思ったが、まぁこれくらいはええやろ……。



「うげ、冗談……ではなさそうだな……ガチで本格的なダンジョンじゃねぇか……」

「罠判別用に鉤縄とかも用意しとけば良かったわね……」





「『激流槍』」





 空気を引き裂く、一瞬の鋭い音とともに。

 超高圧の水流が、一直線にミミックを穿ち抜く。





 ふむ、なるほど。黒髪ちゃんの魔術か。その前に『構造解析』を宣言無しで使ってたね。

 あと『激流槍』の術式は中級魔術としては、威力の割にそれほど難度が高いわけではない。

 でも、術式構成がしっかりしててロスもほとんどなく、出力もかなり高くなってた。

 そして、それは、非常に丁寧な制御がされていた。


 ……聖職者だっていうのに片手間の精度じゃないね。意外とやるじゃん。



「魔物、やっつけたよー」


「……え?」

「お、おう……ありがとな……」

「……」



 ポカンとしてるギャルと、ドン引きしてるチャラ男。

 筋肉男は顔に出さずともちょっと驚いてる様子。



「えーと中身はー……指輪?」

「ん、見た感じ、魔力補助具のたぐい。消費魔力を節約するタイプの奴。デメリットは無い」


「ふーん、でも私は要らないなぁ。誰か要るー?」



「お、おお!?」


 ポーンと放られた指輪をチャラ男が慌ててキャッチする。

 中級冒険者ともなれば魔道具の一つや二つくらいは持ってるだろうけど、高価なのは違いないし、十分当たりだろう。

 売ってもそれなりのお金になるし、ギャルとか結構重めの魔術を好んでる雰囲気だから自分で使うのもいいかもね。



「お前ら要らないのか?」

「要らなーい」

「右に同じ」


「なら有難く貰うが……魔力節約の魔道具か。俺やゼフィールよりビズ向きだな。やるよ、ほら」

「え」



 ?

 指輪を受け取り何故かフリーズした金髪ギャル。



「あ……ありがとう……」



 ……? え? 耳赤くない?


 あ。そういうこと? こいつそういうこと?

 へぇ、私のこと散々イジってきた癖に?


 ふぅん……ふふ……まぁいいんじゃないか。

 こいつら家名持ちと無しで身分差ありそうだけど、そういうの魔女さん好きだぜ。


 ああ、そうそう、一応この世界にも結婚するときには指輪を送る風習がある。

 まぁ前世と違って両方が送り合うんじゃなく、男が女にって感じの一方通行になるんだが。


 ……この手、使えそうだな。


 あいつと会って、もしまたなんか冒険するみたいな展開が有ったら、こんな風にあいつに指輪をもらって……。

 で、これを口実に、話を広げ、広げ……、いや……あいつ鈍感だもんなぁ……もっと直球じゃないと駄目か……。


 二人旅中も結構アピってたのにあんまり反応無かったし……チラチラ見てたから私に興味ないというわけじゃなさそうなんだが……。


 や、でも私からそういう直球は……やっぱこう……あいつから来てほしいというか……。

 なんならこう、強引に迫ってほしい感もあったり……。


 まぁこういう話をする前に、先にあいつを見つけなきゃならんのだけどね……。




 あぁ、あいつ今、なにやってるのかなぁ……。






・・・

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