第30話 獣人

 かのじょさんが言うことにゃ、獣人国には、俺達が思う獣人さんは居ないらしい。

「彼らは、人間との混血だからね、セコンディーナ王国、それもアキンダリアの周囲にしかいないわよ」


 そう、普通は、熊さんタイプ。

 人型で、耳だけとか、一部だけに毛が生えて他は人間などというのは混ざり具合により、ハーフやクオーターで人間に近くなっていく。

「オークと間違って、豚人を殺さないでね」

 そんな忠告を受けた。


 ただ身体能力では、人を凌駕するとか。

 だから普通は間違っても、逆に殴られるらしい。


 そして、精霊国には、森の人。俺達の思うエルフが居るようだ。

 ただ、皮膚はモンスターに近く、人間とは違うとか。

 美形は美形、ほっそりした体。

 長命とその辺りは、同じイメージのようだ。


 話を聞いて、八重がウキウキで、何かをしそうで怖い。

 と思ったら、もうやったよ。


 あるパーティのひとりがどう見ても兎人族。

 姿が消えた瞬間、背後に回り胸をもみしだく。

 胸当ての中にきっちり手が入っている。

「あっなにぃ。だめぇ」

 兎さんの特性は、そのままのようだな。


 地球では、飼育下のうさぎは、一年中繁殖が可能となっていて、年中発情期が訪れるらしい。


 八重に遊ばれている兎さん、すでに腰がかくかくなっている。

 ギルドの中心で、嬌声を上げて、いかされるのはどうなんだろう?


「流石にやめてやってくれ」

 仲間だろうか、猪の獣人さんが声をかける。

「あらごめんなさい。ふかふかだったからつい」

 素直に離れる八重を、兎さんがつい追いかける。

「こら、付いて行くつもりか?」

 そう言われて、兎さんの足が止まる。


 八重の向かう先には、フードをかぶった怪しい集団。

 見慣れない人型。

「けっ。余所者が。おい、ファニアいくぞ」

 兎さんは、後ろ髪を引かれているが、仲間についていく。


 嬉しそうな顔で戻ってきた、八重を睨み付ける。

「何をやっているんだお前は?」

 そう聞くと、にまっと笑う。


「ええ? 興味あるでしょ」

 そう言ってにまにまだよ。


「そりゃあるけど」

「着ぐるみみたいだけれど、しっかり肉があったわ」

 そう言って、うんうんと満足そうに頷く。


 まあ見た目からすると、興味はあっても性的な対象にはならない。少なくとも俺は。

 混血するって、ある意味すごいなと、変な感心をしてしまう。



 そんな騒ぎを起こしつつ、拠点となる家を借りる。

 どうしても、安い宿は物騒だし、高いところは、家を借りた方が安くなる。


 金はあるんだが、この世界、信用できる人間が少なすぎる。

 皆、強いから良いが、昼までもひったくりや強盗が出没をする。


 ホテルも物を忘れたら、すぐなくなってしまう。


「拠点もできたし、一狩り行くか?」

「そうだな、行くか」

「私たちは、掃除と料理を作っておくわ」

 そうして、男女で別れた。


 猪と鹿を狩ったが、獣人の子どもじゃないよなと、随分確認をしてしまったよ。

 流石に、知的生命体を殺して食うのは遠慮したい。


 そう、そんな事を思いながら帰ると、庭に一〇人ほどの獣人が転がっていた。


「なんだこれ? 食うのか?」

 つい、そんな事を聞いてしまう。

「そんなわけ無いでしょ」

 小林 未希こばやし みき小川 楓おがわ かえでが、馬鹿ねという感じで言ってくる。


 その後でも、家の中からも、三人ほど蹴り出されてくる。

「衛兵の詰め所はどこかな?」

 誰に聞くとも無しに言うと、冷たいお返事。


「門番に聞けば?」

「そうだな」

 そう答えて、門番の所へ聞きに行く。


 するとまあ教えてくれたのだが、来た兵達も獣人で、けり起こして解放しやがった。


「なんだ? 強盗だぞ」

 対応が気に入らなくて、言って見た。


 するとその答えは……

「何か盗られたのか?」

「いや盗られていない」

「じゃあ問題ない」

 そう言って、引き上げてしまった。


「この町あんまり良くないな」

「そうね。あっ、武神くーん手伝うわ」

 稲葉 沙織いなば さおりも向こうでクラス委員をしていた様な毅然きぜんとした感じはなく、デレデレだ。


 ケッという感じでそれを見送る、川瀬 陽子かわせ ようこ

 同じく、現地彼氏を失い仲良くしていたが、川瀬が武神に懐いてからは、少しすさんでいるようだ。


「大丈夫なのか?」

 その様子が気になり、声をかけたが、やはりケッっと言う感じだった。

「襲うぞこの野郎」

 本人には聞こえていないだろうが、つい口から出てしまう。


「えーあの子より、あっちがいい」

 なぜか横にいた八重が指を差すのは、星野 みゆきほしの みゆき

「あの子は調教次第で化ける。強く言えばえーと言いながら従うタイプね」

 そう言いながら、怪しく目が光るので、獲物の解体に引っ張っていく。マルタはすでに手伝っている。

 けなげに彼女は頑張っている。


 八重の調教の結果なのか、依存性は無くなったような気はするが、まあ少し大人になったのだろう。

 栄養が足りて、少し大きくなってきた。



「なんだよあいつら、人間のくせに無茶苦茶強えぞ」

 そうさっきの強盗さん達。

「ちっ、せっかくの小遣い稼ぎがふいになっちまった」


 そう混血の多くは、オスの獣人によって作られる。

 積極的に関わらなくとも、強引にされると癖になるらしい。種族によって、その形は人間のようにかわいくない。

 ドリル状だったり、抜けないように広がったり、複数本あったり、それはときに中毒のような快感を女性に与えるらしい。


 彼らからすると、力の弱い劣等種が人間。

 動物の性質が強い彼らは、屈服させ支配することを喜ぶ。


 そんな変態達に、捕まえて売る気だったようだが、彼女達はひと味違った。

 そう凶悪なくらいに。

 下手に手を出せば、この町の力関係が、ガラッと変わるくらいには……

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