スクールカースト最強でモテにモテまくった女子が卒業後に地獄を見て、そこから這い上がるお話。

木村サイダー

プロローグ 亜香里のキャラ説明と、どうしてもできてしまうスクールカーストをうまく中和するために私なりに思うこと

『モテる』=『幸せになる』ではない~序章 この物語の主人公『亜香里』という女性を想像するにおいて

 まずはちょっとお話しておきたいことが2つあります。1つはここで。もう1つは次のお話で──



 モテる女子と呼ばれる方々の生活って考えたことありますか?

 モテる女子は必ずしも幸せを掴めていますか?


 それは普通の女子、男子の生活、あるいはモテ男子の生活と同じ、あまり変わらないものだと思いますか?


 この話を手掛けた作者は、生まれ育った環境が親の特殊な職業の元、多くのモテる女性と呼ばれる人たちに囲まれて幼少期から青年期を過ごしました。その中で感じていたことがあるのです。


 これは作者がこの話を見ていただいた、特に男性の方に問いかけたいのですが、もし、あなた方が女性だったとして──


 こんな生活を13歳ぐらいからずっと続けていて、標準的な視点・感性を確保し続けることができていると思いますか?



 背は高く、立派な肩幅で手足は長く、12歳ぐらいから大人びた色っぽさを持ち、大きく胸は張り出し、腰は丸くなった。容姿もなかなかの端麗さ、それ以上に男たちを惹きつける艶っぽい魅力を持つ女の子。


 学校では色んな男子たちから熱い視線、キモイ視線、エロい視線を感じ、常に階段を上るときは下から覗かれ、目線は胸元のブラウスのボタンの割れ目に注がれる。


 身体のラインが出る体操着を着れば生徒だけではなく、大人からもその視線は注がれる。


 休憩時間になれば女子の友達が憧れの眼差しで自分を囲み、男子たちがさらに取り巻く。そこにいるのはサッカー部の主将だ、野球部のエースだ……上級生のクラスからは自分を見たさに教室の外に人だかりができている。


 1週間に一度や二度は誰かから告白され、街を歩けば陽気な知らない兄ちゃんがギャグとラップのようなテンポでナンパをしてきて、道路に立っていれば車が止まり『乗っていく?』と声を掛けられる。


 さらには学校帰りや学校の登校中に、男子たちが列を作って『一緒に行き隊』『一緒に帰り隊』ができる。女子もそんな人気者の自分に肖ろうあやかろうとして、チヤホヤと近寄って来る。


 他校からも自分見たさに男子たちが遠征してき、高校生たちからも熱い視線と声かけをもらう。

 もっと言うならお金を持っていることをちらつかせた大人の男たちですら近づいてくる。


 用事でタクシーを使えば数回に一度は運転手が料金をタダにしてくれたり──


 何も頼んでいないのにスウィーツ屋でパフェを男性店長の権限で倍盛にして料金はタダにしてもらえたり──


 コートが欲しいと言えば、別にあなたに買って欲しいと言ったわけじゃないと言ってもデパートで買って来てくれる男性がいたり──


 これらは全て本当にあった事例の一部です。



 この女の子の能力はそれだけではありません。こんな感じの子は運動神経も発達していて、体力が異常なほどあったように覚えています。


 彼女は、ただ大人の女性らしい身体をしているのではなく、天然で腹筋は薄っすらと割れ、運動神経は抜群で走らせれば部活をしている男子よりもまだ早く走れる。


 運動会ではリレーのアンカーとして出て、自分の前のランナーがべったになってしまっていても、彼女が走れば前のランナーたちをごぼう抜きしていき、見事に1位になって見に来ていた親御さんたちの大きな歓声を一身に浴びる。


 力も強く、到底女子なら、例えその中学校の一番悪いと言われている先輩がかかってきても一瞬で倒せる。


 その女の子は外見にも、体格にも、運動神経にも恵まれていた。


 中には反目な女子たちや、女の先輩もいる。『調子乗ってんなあ』と呼び出されて、謂れのないキツイお仕置きを受けるかもしれない状況が、こういう子にはある。


 普通ならこういう場面で、牙を抜かれるというか、萎縮させられて、同時に輝きを失ってしまうのですが……この子の場合、恵まれた体力によって逆に撃退してしまえるのです。


 あるいはこのような女の子に多い、卓越したコミュニケーション能力も併せ持っていて、そのような反目のグループとも仲良くなってみせたり、あるいは知人(怖い先輩など)を介して不戦協定を結んだりできるのです。


 ──怖いものなし……スクールカースト、学園ヒエラルヒーなるものは常に最上位クラス。


「君たち、右向いて」と一声言えば、多くの生徒を右に向かせれる……



 さて、こんな生活をアバウト13歳~18歳まで続けていたとして──


 あなたは『これが誠実な人からの、誠実な告白で、この手を取るべき』だ、と正しく判断できるでしょうか?




 むしろ一番刺激の強い、テンポの良い、一番取ってはいけない手を取るのではないでしょうか?


 もしあなたが男性で、こんなスーパーガールを好きになったとして、調子よく気持ちに余裕を持って告白できるでしょうか?


 さらにもしあなたが、それが初恋の相手、あるいは憧れて止まない相手で、それに比べて自分は恋愛経験がまだまだ未熟な立場だとしたら……この子を自分の良いように導くことができるでしょうか?



 逆に、何とも思わないで、我先に声をかけて口説く男たちがいます。


 その差はなんでしょう? ──何とも思わないからです。


 何とも思わない? 頭の線が切れているのでしょうか? そうかもしれませんね。


 けど、単純に、慣れているのです。そして他にもあてがたくさんあるからフラれてもさほど傷つきません。

 多くの口説いた女性の中の一人、というぐらいです。


 でも、そんなことはなぜか女性は分からないことが多いようです。うまい男になればなるほど、慣れているところを隠して、下手なフリをします。


 口説きパターンを6個も7個も持っていて、定型文を述べるかのように滔々と語り出します。だから緊張しないのです。

 後は反応を伺いながら、場数で培った経験値でアレンジを加えるだけです。



 そして……前者と後者、一概には言えないでしょうけど──


 どちらがこの不安定なスーパーガールとの縁を大事にしてくれるでしょうね?



 母親は多くの美人と呼ばれる女性の上に立つプレイイングマネージャーでした。よくその美人たちが泣きながら自分の『旦那』(ちゃんと籍も入っていないし、相手に嫁や子供もいる場合も多くあった)の悩みを泣きながら話していました。


 暴力、金、ケンカ、浮気、他の女の妊娠、博打癖、刑務所行き──じゃあ、なんでそんな男を選んだの?


 結論は言葉の上では色々ありました。しかし共通して言える、当てはまる答えは……



──いつの間にか、そういう『男』しか、『男』に思えなくなっていた。



 さらに追加して言うならば……


──私と付き合えば変わってくれると思っていた。


 そんなに甘くないでしょうね。だって『今』がうまく楽しく回っている人が『変わる』必要なんて、なかなか感じにくいでしょうから。


 それに女性と違って男性は、何もかも捨てて自分を変える、ということができにくい生き物です。

 おそらく自殺率が高いのもそういうところなのではないでしょうか?


 女の人もホントを言えば、何もかも捨ててあなたについていきます、というのは一時的なプレイみたいなもので、時間が経てば元の変えがたい自分に戻ってくるんですよね(笑)


 男はその一時的ですら、難しいようです……横道逸れました(笑)



 要するにこのように、刺激つよつよな日常を送っているために、優しさに溢れた異性のさりげない、それでいて誠実な手や声、というのは届きにくくなるのです。


 場合によっては男らしくない、面白くない……という態度を取ってしまうかもしれません。


 むしろ刺激のキツイ、周囲から見れば『そんなん危ないって、すぐ分かるやん』と言いたくなる人についていく。


 というのは、そのような人たちからのアプローチが普通になっていて、自分もそういう人たちの中に囲まれているから、至って刺激強めが普通になってしまっていくのです。



 プロローグ二つ目に入ります。


 ──はいちょっと待ってください。ここで読むのやめて出て行かないで。


(あなたの腕をつかんでガジガジと引く私……)


 もうちょっと私に付き合って欲しいです。

 早く亜香里さん、用意してっ!


 はい、というのは、ここが私の一番言いたいことだから。


 

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