第4話 訊問会の始まり

 風紀委員長、副委員長の上原くん、荒木さん、によって、寝取拓郎と虎田ましろは悲鳴を上げながら、視聴覚室に連行された。


「やめろぉっ!は、離せよ!」

「いやぁっ!は、離してっ!」


 バタン!


「「「「「「「寝取拓郎さん、虎田ましろさん、ようこそいらっしゃいました。」」」」」」」


「「…!!||||」」


 そして、視聴覚室の中では、妹のよしのを含む生徒会役員が前方に、風紀委員が壁一列に並び、冷ややかな目で見られ、声を揃えて抑揚のない挨拶をされたのに、彼らは息を飲んだ。


 風紀委員には、その役割柄、武道を極めている者も多く、大勢でかかって来られたら、ましろはもちろん、柔道部に所属しているとはいえ、大勢で県大会で万年予選敗退している寝取が敵うべくもなかった。


「こ、こんな大勢の前に連れ出して、何するつもりだよっ!!」

「そ、そうよっ!!暴力でも振るうつもり?訴えるわよっ!!」


 震えながらも威勢よく吠えてくる二人に、俺は言ってやった。


「勘違いするなよ?粛正の為に君達に暴力を振るうつもりはない。

 風紀委員の方々には、これから起こる事を全て見届けて貰うために来てもらっただけだ。」


「そう。我々は、ただ、今後の君等への対応の為、全てを見届けるのみだ。」


「そこの特等席に座るといい。」


「「!??な、何なんだよ(なのよ)…。」」

 ガタガタッ!


 視聴覚室の最前列、教卓前の席の辺りで、寝取とましろは解放され、上原くん、荒木さんの圧を感じてか文句を言いながらも席に着くのを見遣ると、俺達生徒会役員は前方のスクリーン近くに立った。


「上原くん、荒木さん、風紀委員の皆さんご協力ありがとうございます。

 さて、ここからは、生徒会役員主催で、裏切り元カノの(1-5)虎田ましろ&(2-3)間男に対して、NTRビデオレターについての訊問会を行なっていきたいと思います。


 まずは、NTRビデオレターを送られた虎田ましろの元彼氏にして、生徒会長の鷹宮義隆が、司会進行を務めさせて頂きます。よろしくお願い致します。」


「「!??」」


 俺がペコリと一礼し、周りからパチパチと拍手が起こる中、寝取とましろは不安気に顔を見合せた。


「生徒会副会長の黒崎直也くろさきなおやです。後程NTRビデオレターについて、解説役を務めさせて頂きます。よろしくお願いします。」


「「解説役っ!?」」


 続いて、生徒会活動における右腕にして、今回の件についても参謀役を引き受けてくれた頼れる後輩、黒崎直也がメガネを妖しく光らせて挨拶をし…。


「「生徒会会計(監査)の渥美空あつみそらうみ)です。後程虎田さんと寝取りくんの聞き取り調査の結果をご報告させて頂きます。

よろしくお願いします。」」


「「聞き取り調査?!」」


 可愛く小柄な外見ながら、しっかり者の双子の男女、渥美空、渥美海が揃って綺麗なリエゾンお辞儀をし…。


「生徒会書記の鷹宮よしのです。鷹宮義隆の妹にして、NTRビデオレターを共に最初に視聴し、兄が傷付く姿に胸を痛めておりました。

 ビデオレター送り主の寝取先輩、虎田さんがご体調が悪くなった場合の救護役を務めさせて頂きます。よろしくお願いします。

 寝取先輩、虎田さん。よかったら、訊問会の前に、こちらのミネラルウォーターをどうぞ。」


 薄青のふわふわの髪に白い肌、ぱっちりした大きな瞳。天使のような容貌の俺の妹、鷹宮よしのは、挨拶を終えるとそっと寝取とめぐりの机にペットボトルを差し入れ、満面の笑みを浮かべた。


「うふっ。毒など入っておりませんよ?

 訊問会では、ショックで気分を悪くされたり、倒れたりされる可能性がありますので、まずは、こちらで気を落ち着けて下さいね?」


「「ひいっ…!!☠」」


 生徒会役員が登場する度に驚いていい反応を見せていた寝取とましろは、よしのに優しく声をかけてもらったにも関わらず、悲鳴を上げた。


「じ、訊問会って、何する気だよっ?!女を奪われたのは、お前が甲斐性なかったせいだろ?大勢で復讐するなんて卑怯じゃねーかよっ!」


「そ、そうよ!まさか、あの動画を皆の前に見せて私達を晒し者にするつもりなのっ!?

 生徒会長のくせに、リベンジポルノなんて恥ずかしくないのっ!?」


 寝取とましろがパニックになって騒ぎ始めるのに、俺は呆れてため息をついた。


「君達、とんだブーメランだな!

 現時点で付き合っている彼氏にNTRビデオレターなんてものを送りつけてくる時点で、卑怯で、恥ずかしいマネをしているのは、君達の方だろうが!」


「「うぐぅっ!」」


 人差し指を突き付けて正論を主張すると、寝取りとめぐりは苦しげな声を出した。


「リベンジポルノどうこう言うなら、最初からこんなもの送るな!

 好きな人が出来たと別れ話をすればいいだけの話だろう。

 それならば、俺は仕方ない事と受け入れ、ましろと別れるだけで済んだろうよ。


 だが、君達の軽率な行動をしたせいで、生徒会長として学校に報告する義務が生じてしまったではないかっ…!

 このNTRビデオレターは、不純異性交遊の証拠として、風紀委員及び、先生方にするつもりだった…!」


「そ、そんなぁっ!嘘だろっ?」

「学校に知られて処分されるのっ?いやぁっ!」


 涙目になる寝取とましろに、俺は更に残酷な事実を突きつけなければならなかった。


「だが、この動画、何箇所もがあるのに気付いてな。

 先生方に提出する前に、君達に確認せねばならない事がある為、この場に呼び出させてもらったのだ。

 なぁ、寝取拓郎に虎田ましろ。これから質問する事に正直に答えてもらおうか?」


「「っ……!!」」


 俺が左目を眇め、ニヤリと笑うと、寝取とましろはガマの油のように突然大量の汗をかき出した。



*あとがき*


読んで下さり、ありがとうございます。


先週からたくさんフォローや、応援、評価頂きまして本当にありがとうございます✨(;_;)✨


今後ともどうかよろしくお願いします。


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