第12話
あくる日、王子は自分の口でテレビで全てを告白した。
彼の今までの苦しみに同情するものも多かったが、
「やっぱりトンボの王子はダメだ」
と非難する国民も多かった。
「姉と同じだ。育て方が悪い」
と母君も非難された。それでもこれまでの王子の死にたいほどの苦しみが解放されたこと、無事に戻って来たこと、そしで逃げるのでは無く自分の真実を告知したことは母としては嬉しかった。
また薔薇の王子がトンボの王子を助けに行った現場にいたのは歓迎された。流石薔薇の王子と世間ではもてはやされ益々の人気となった。
その後、國ではアルピノの差別禁止令が発令されルシェルは両親の元へ戻った。だれもルシェルに手出しをするものはいなくなり、爺は竜神の宮を守るために湖の小屋に戻った。
ある日、許可を得て王子はルシェルのいる村を訪ねてみた。
「あっ」
草原で木の実を積んでいたルシェルは王子を見ると懐かしそうに呼んで走ってきた。
「無事で良かった」
王子は言った。
「あんた、王子様だったんだね」
ルシェルは揶揄うように言った。
「もう王子じゃないよ」
王子は答えた。
するとルシェルは、今度は真顔で王子を見つめきっぱり言った。
「ううん、あんたは王子様さ。私を命がけで助けてくれた私だけの王子様だよ」
トンボの王子の瞳からとめどなく涙が流れ落ちた。
*****
この物語はこれで終わりです。
しかし、この王子がこの後、心優しき正義感溢れる青年に成長し、
ドラゴンフライ(トンボ)と呼ばれ国民に愛されたことをお伝えしておきましょう。
トンボの王子様 amalfi @amalfi
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