第5話

「おじい。この子、目が覚めたみたい」

15,6の少女が、顔を覗き込んで言った。

お爺と呼ばれた老人が近ずき、顔を覗き込んだ。

「おお、そうか。もっとあっためてやれ」

とボロきれのような毛布を掛けた。


王子は山小屋のようなところに横たわっていた。ここはあの世なのか。

言葉も無くキョロキョロして見ると、どうやら自分はまだ生きているようだった。


「僕はどうしたのですか」

王子は尋ねた。

「こっちが聞きてえ。あんな夜中に。あんな森でなにしちょった」

老人が言った。

「昨夜は、14番目の月夜で竜の神様にお供えを持ってったんじゃ。

月が明るいで、湖を見たらなんか大きなものが浮かんじょる。食われんようにと思って引っ張り上げたんじゃ」

「竜の神様は、女の神様なので男の子が好きなのよ」

少女が笑いながら言った。

「あんたはどこの子?」

王子は言葉に詰まった。

「お、覚えてないんです」

2人は顔を見合わせるとそれ以上何も聞かなかった。

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