番外編 自嘲 (アルダム視点)

 だから、私には自分が浮かれているという自覚があった。

 ……何せ今、契約とはいえ私はライラと婚姻状態にあるのだから。


 はっきりと言えるが別に私はこの状況になるように持っていた訳ではない。

 私は自分で勝負するときちんと決めていたのだから。

 この契約結婚は本当に偶然だった。

 最短で離縁を行うためには、婚姻状態にするしか無かったのだ。


「……思わぬ幸運を最大限利用しようとは思っているがな」


 そう、もちろん下心はある。

 しかし、今でも強引にことを進めようと考えは一切無かった。

 恩を仇にする気など一切私には無かったが故に。


 けれど、理由はそれだけではなかった。

 それこそ、初夜式のことを知らせにきたマリアが告げた言葉。


 ──ライラ様には想い人がおられます。


 ライラの想い人の存在だった。


「あの人も恋をするのか……」


 話を聞いたとき感じた言葉を漏らしながら、どうしようもなく鼓動が早くなるのを私は感じる。


 ──かつてライラ様が立ち上がるきっかけとなった言葉を与えた男性。フードをかぶった顔もしれぬ男性にライラ様は恋をしております。


 その時に感じたことを私はずっと覚えている。

 致し方ないとはいえ、こういう手段しかとれないことへの後悔と……それ以上に歓喜を感じてしまっている自分に対する嫌悪感を。


「……本当に私は浅ましいな」


 ──勝手を言うのは理解しております。しかしどうか、この結婚は契約結婚にしてはいただけないでしょうか。私の首でよければ、いくらでも差し上げます。


 そう言って、頭を地面にこすりつけないほど下げたマリア。

 彼女が普段どれだけ誇りある人間で、それ以上にライラを想っているその姿と対比して、自分はどうか。

 自分がマリアへと告げた言葉がよみがえる。


 ──これはあくまでお互いの利益の為の契約結婚です。頭を下げる必用なんてありません。なんなら、そのライラ嬢の想い人は私が見つけましょう。


 ……打算にまみれた言葉を。


「中々、自分が嫌いになりそうだな……」


 そう言って、私は思わず苦笑を漏らす。

 それでも、ライラをあきらめるという手段をとれない自身の業の深さを想って。


「その為にも、この身はライラに捧げよう」


 故に、私は改めて覚悟を決める。

 絶対に恩は返すと。

 思いを、全てを告げるのはその後だと。

 そう覚悟を決めて、私は小さくつぶやく。


「……その後でなければ、恥ずかしくて言える訳もないな。──私がそのフードの人物などとは」



 ◇◇◇


 私の他作品「パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき」、本日26時からアニメ放送になります。

 よろしければ拝見して頂けると幸いです!

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