第24話 どくんっ
なんだぁ。
なんだなんだぁ!?
「美味しい!
「あはは。ありがとう!」
「いつも
「どういう意味だぁ?
「兄ぃにこんな美人な彼女がいるなんて。」
「えぇー?美人〜??ふふっ。」
ちょ、彼女の部分は否定してくれ
「び、美人ではあるが彼女ではない!」
「鯨って、学校ではどんな感じなんですか?」
「んん。」
「確かに気になる!」
「頼りになるよ。」
「あは、兄ぃはどこでも兄ぃなんだね。」
なんなんだ、この食卓。
みんな、いつもみたいに喧嘩しない。
とにかく華やかだ。
飯もいつも以上に美味くできた……気がする。
俺はこの家が好きだ。普段でも十分。
でも今は、なんというか。
「んー!おかわりもらっちゃおー。」
あったけぇ。
「どした鯨。ぼーっとして。」
「え?あ、別に。」
「國重さん、雑炊にしますか?」
「あ、もらおうかな。鯆くん、だっけ?」
「はい!」
「兄ぃ!おかわり!」
「おぉ、
「うん!!」
鮫の調子も元に戻った。そう、こうでなくちゃな。
――
「お薬、飲めるか?」
「んん……。」
「そっか。じゃあちゅるちゅるで包もうな。」
「やだ……ちゅるちゅるも嫌い。」
「そんなこと言ってもなぁ。ぽんぽんまた痛い痛いだぞ?」
「やだよ。」
「鮫ぇ!兄ぃの言うことは聞いとくんだぞ!」
「だって……やなんだもえぇーん!!」
「ほれ余計なこと言うな鯱も。」
「別に、間違ってないし。」
「洗い物終わったよー!おや、大丈夫?」
「んお、悪いな
「ぜんっぜん!!よしよしー大丈夫ぅ?私もね、歳の離れた弟がいるんだけど。」
「そうなのか。」
「こうやって、よくあやしたなぁ。よーしよし。」
「言っても、もう4歳だぞ。」
「まだ4歳。甘えたいんだよ。ねー?」
「……。」
「……なるほど。」
それからしばらく、鮫は國重に任せた。
よっぽど心地よかったのか、すぐ眠りの体勢に。俺でもこんな早く寝かしつけられないのに……。いやはや、恐れ入った。
「……すぅ……。」
「寝ちゃった。」
「悪いな。俺、代わるよ。」
「ううん。もうちょっと、こうしてたい。」
「……すぅ……。」
「かわいい。」
「だろ?俺の弟とは思えん。」
「あはは、確かに。」
「……ママ。」
「マッ……!?」
『ドクンッ』
「いやぁーママってぇー。やだなーあははは!」
「やっぱ俺代わるよ。そろそろ、風呂にも入れなきゃだし。」
「あぁ、そっか。じゃ、私も失礼しよっかな。」
「あー!うん。」
――
「遅くまでごめんね。」
「それはこっちのセリフだよ。ホントありがとう!」
「ううん。楽しかった。鯨くん家がこんな賑やかなんて。」
「見ての通り、毎日お祭り騒ぎだよ。」
「じゃ、また学校で。」
「あぁ。」
『ドクンッ』
なんだ、この感覚。
『渡辺くん、文化祭でも店長やってくれたし。頼れる兄貴って感じ!家では本当に兄貴やってるんだ。』
『てか、近くで見ると腕ふっといなぁ。なんかスポーツしてんの?』
『弟くん達もめっちゃ頼りにしてるんだね。尊敬しちゃうなぁ。』
『いやぁーママってぇー。やだなーあははは!』
そんな、俺は当たり前のことを当たり前にこなしてるだけ。
何一つ特別なことはしてないはずだ。
なのに、『すごい』って言ってくれた。
國重、あんな顔もするんだな。学校じゃ絶対に分かんない。良いもん見れたって感じだ。
「さ、残りの家事やんなきゃな。」
いかんいかん、まだ色々やることがあるんだった。
――
「なぁ、兄ぃ。」
「なんだ鯆。」
「この前の人。」
「國重か?」
「そう。めちゃくちゃ可愛かったね。」
「……はぁ。生憎、そういう目で見てないんでな。」
「じゃあ今度来たら連絡先聞いちゃおー。」
「バーカ。國重も中坊の相手してるほど暇じゃねぇんだよ。」
「は?」
「彼女、モデルの仕事もしてるみたいでな。」
「そうなの!?通りでバカ可愛いわけだ。」
「あと『今度』は無いから安心しろ。」
「なぁんだ。あーあ、ざんねん。」
そんな迷惑かけられんだろ。
それぞれ、事情がある。特に彼女は忙しい。
ウチなんかで油売ってる暇は無い。
……ハズだよな?
「んー!おいしー!!」
え、なんでだ。
なぜだ。
どうして!?
「國重……どうしてまた?」
「学校帰り、鯆くんと偶然会ってさ。話してたらまたみんなに会いたくなっちゃった。迷惑だった……?」
「いや、俺は別に。」
「僕もー!」
「おー!」
「鯱くん、鮫くん!お姉ちゃん嬉しい!」
甘ったるい空気が流れる。
ぜんっぜんいいことなんだが、どうも慣れない。いや、慣れちゃいけないのか。
とにかく國重が楽しそうだし……いっか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます