第37話 状況整理
「ミミさん?」
「少し黙れ」
空を仰いだまま、目を瞑る。幾度も妄想した『満天の星空』が、ミミの脳内に拡がる。
「(ネザーランドのジジイ共はルピルの存在を知らなかったのか? いや、奴らがわたし達に伝えてきた『鍵』の子の外見情報は白い髪と赤い瞳。ルピルのものだ。じゃあリリンの方がイレギュラーなのか? しかしそんなミスはしない筈だ。そもそもさっき勢いで決め付けたが、あれだけ王族の外見を国民に秘密にしてきた奴らが、1滴でも王族の血が入った赤ん坊を態々外層に捨てる訳が無い。『失敗作』なら処分している筈だ。アルピナの夫達や、わたしの両親のように)」
ルピルとリリン。
何故、ふたりの王族があのスフィアに居たのか。間違いなく『崩壊』実験の邪魔であり、事実予定通りの『崩壊』ではなかった。
「(クーロンの『リリンを守りたい』気持ちは本物だろう。つまりはリリンが革命軍に来ることは、ネザーランドの計画の外。ではルピルは? わたし達と
「…………お前達が労働孤児をやっていたラムダ-4の工場に、大人の監督官が居たろう」
「ビールフのおっさんのこと?」
「ビールフ?」
「!」
クーロンがその名前を出すと。アルピナが反応した。
「知ってるのか」
「…………彼は私の子達を…………」
アルピナが説明しようとして。
はっとした。
「『革命の日に責任を取らされた』と言っていたわ」
「アナ・タイシャクテン!」
「!」
ミミが。
声を挙げて、アナを呼んだ。
「ルピルは『崩壊』前に、
「……ああ。そう聞いとるぞ。星間車で
「それは『革命の日』からか」
「詳しくは知らぬ。妾と出会ったのはターミナル街じゃから。奴らに聞け」
「!」
アナの視線の先。
ロゴマークの無い星間車が、割れたドームの穴から突っ込んで来てこちらへ向かってきていた。
「……地下へは?」
「まず整理する。リリンのこともあるしな」
***
「………………ビールフが、この件に噛んでいる……」
アナと、リリンを抱くアルピナ、そしてミミとクーロンを招いたリビングルームにて。それぞれの状況と情報を共有し、呟いたのはキルトだった。
「クーロン……っ」
エリーチェが、クーロンを力無く睨む。まさか、同じ孤児同士仲間だったクーロンが、ルピルを利用して戦争をしているなどと。あまつさえリリンを巻き込み、怪我を負わせた。
「……俺実は、救難信号。送ってないんだ」
「えっ?」
キルトが続けた言葉に、エリーチェは振り向く。
キルトは。
運が良かったのだと。黙っていたのだ。しかし今になって思い返すと、あの時。ルピルとエリーチェと3人で、
丁度ユリウス達が間に合ったのは、運ではなく。
「ビールフってこと?」
「あり得る、って思ったんだ。つまり、ルピルを『
「私の?」
アルピナは眠るリリンを大切に抱いている。彼女の娘は見付かった。判明した。
「いや……。奴らに実験体として飼われていた鉄ウサギはアルピナだけじゃない。その誰かの為だろう。ビールフという男は、『鍵の子』の管理を任されていたんだ。恐らく、誰が誰の子なのかまでは知らされていない」
ミミが推測する。
「つまり、ビールフの手によって『崩壊』計画は軌道修正を余儀なくされた。その結果が今だ。もう思惑はその男の手から離れただろうが、男も『
「なるほど」
その推測に、ユリウスが頷いた。
「それで。革命軍。怪我人とマスクの無い子供を俺の星間車で預かるのは良いけれども。これからどうするんだ。ルピルを返してくれるんだろうな」
「…………『虚空界否定論』ユリウス・フルフィウスか」
睨む。目の前のミミ・ネザーランドはユリウス達にとって、ルピルを誘拐し洗脳した悪人だ。特に、アルテが強く睨んでいる。
「わたしは今からルピルを追い、ネザーランドを討つ為に地下へ行く。他に誰が行く?」
「…………」
情報は整理された。
ラムダ-4に用意されていた『崩壊の鍵』はリリンとルピル。しかし革命の日にふたりとも行方不明。予備のリリンはクーロンによって、本命のルピルはビールフによって。その存在を『
イレギュラーが重なった今が、好機である。
「……妾は行くぞ。ルピルの友として」
「アナ。大丈夫なの?」
エリーチェの心配を余所に、アナが立ち上がる。少しふらついているが、その決意は堅い。
「お供します。姫様」
「勿論じゃ」
そして、そんな主を止めることなく。ワタオも続いた。
「俺も行く」
「私も」
「!」
キルトとエリーチェも。マスクを付けた。アルテが苦い表情になる。
「アルテさん。アルテさんは、ユリウスさんと一緒に居てあげてくださいね」
「…………!」
非常事態である。
アルテの一番の願いを、エリーチェは理解していた。
「おれも……!」
「クーロン。もうマスクが無い。この星間車にはふたつだ」
「!」
クーロンも立ち上がろうとしたが、キルトが止めた。
彼はキルトとエリーチェの着けるマスクを見て。
「それ……」
「ああ。ルピルが作ったマスクだ。密閉は完璧。なあエリーチェ」
「うん。クーロンはリリンに付いてなきゃ。全部終わったらちゃんと話しましょう。怒るからね」
「う…………っ」
クーロンは観念して座り直した。
「……という訳らしいが。ユリウス教授」
それぞれの選択を経て。ミミがユリウスへ話を振った。受けてユリウスは。
「…………」
本来なら、自分も行きたいと言うだろう。ただでさえ御伽噺だった
だが。流石に能力を使い切ったアルピナとリリンを放ってはおけない。アルテを置いて行くことも。
「キルト。エリーチェ」
「はい」
「ルピルを頼んだぞ。俺は君達を、大人と同じように頼りにする」
「はい!」
信じて送り出すしか無かった。
「あ、戻ったら中の様子をできるだけ詳しくレポートにでも纏めてくれると」
「決まったな。さあ行くぞ。アナ・タイシャクテン。それとキルトに、エリーチェ」
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