第33話 捜査会議
「いた。 2人だ」
【凶悪犯探知】は、俺の周囲に凶悪犯を前世に持つ転生者が居るか居ないかを知らせて来る。
それはマップレーダーのような画面に赤い色のついた輝点として表示される。
建物の中ならば建物の輪郭線の中に輝点があり、その場所は俺との相対位置で示される。
俺には凶悪犯の転生者の仲間が3人いる。
カレン、メイル、ルディだ。
カレンは奴隷契約、メイル、ルディは従属契約をしている。
カレンは対価を払って買っているし、殺人衝動を強制的に抑える必要があるのでそのまま。
メイルとルディは特殊犯罪独立捜査機関に所属するために主従契約を魔法で縛っている。
その3人も凶悪犯を前世に持つ転生者だから、【凶悪犯探知】に引っ掛かる。
それを新たな転生者と区別するのは、輝点の色だった。
彼ら特殊犯罪独立捜査機関に所属する者たちは、青の輝点で表示されるのだ。
俺の傍に2つと、河船のところに1つだ。
前者はカレンとメイル、後者はルディだな。
一般人は白に近いグレーで表示される。
輝度を落した白なのかもしれない。
そして、転生者本人に遭うと、その頭の上にも輝点が表示される。
それにより個人特定が出来るのだ。
なんとも便利なスキルだった。
今回、その赤い輝点が2つあった。
それも領主の館の中に。
「目標は2人、領主の館の中だ」
「複数が一緒って珍しいな。
だが、ぶっ殺せば良いんだよな?」
カレンの殺人衝動が酷い。
「つるんでるってこと?
類友ってやつか?」
メイルが何故一緒にいるのかを推理する。
「カーク、スケズリー、領主の評判や、何か異変が起きていないか調べてくれ」
「私たちは?」
「待機だ」
そして捜査が始まった。
◇
俺たちは捜査本部を河船の中に置いた。
河船が正式に特殊犯罪独立捜査機関の所有となったため、屋形船部分を自由に弄って使えるようになったのだ。
「街の雰囲気が悪い。
どうやら治安維持が厳しくて、しょっ引かれる市民が後を絶たないそうだ。
それも貴族のドラ息子がやっているとか」
カークが聞き込みの結果を報告する。
市民の顔が暗く、その原因が治安維持の名目で闊歩する貴族子弟の暴挙のせいらしい。
「それは俺も聞いた。
捕まると帰って来ないそうだ。
何か裏があるぞ」
スケズリーも同様の話を聞いていた。
しかも治安維持名目だけで帰って来れないとか、有り得ない話だ。
「ここの特産は鉱物資源だったな?」
「はい」
「その採掘は危険なため犯罪奴隷がやってるんだよな?」
「まさか!」
俺は事件の構図に気付いてしまった。
鉱山では慢性的に労働力が不足する。
その労働力を因縁レベルで捕まえた市民で補っているのではというものだ。
「犯罪奴隷にするには、それなりの手続きが必要です。
領主もグルと見て間違いないでしょう」
ここは領主の館に乗り込んで、凶悪犯の転生者の犯罪歴を調べる必要がありそうだ。
しかも、2人いるのだ。
となると……。
「息子は双子か?」
「いいえ、1人だそうです」
凶悪犯の転生者は、俺と同じ年代に偏っている。
つまり、2人が兄弟ならば双子ということになるのだ。
そうではないとすると、どういうことだ?
まさか、お互いに転生者と気付いて協力体制にある?
それは俺がカレン、メイル、ルディの3人を使っているのと同じなのかもしれない。
凶悪犯の転生者が組織として活動する、そういったことも今後は想定しないとならないだろう。
「ここの領主はケイマン男爵です。
金に汚いという噂です」
「男爵が共犯の線で接触する。
捜査機関として接触しない方が良いか?」
「まず、治安維持でうろついている息子を調べてみては?」
たしかに、そこで犯罪歴を見れば、だいたいの犯罪の構図が見えて来るはずだ。
「それでいく。
どこに行けば会える?」
「大通りに行けば直ぐかと」
カークが今にも屋形船部分から出て行こうとしたその時。
「誰だおまえらは!?」
ルディの誰何する声が辺りに響いた。
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