【完結】イピトAIは仮想空間をイネーブルする~未確認AIに高校生活を乗っ取られたら、もふもふワンコが助けに来てくれました。なぜか美少女アサシンに好かれてます~
Episode27 完成したAIと不穏の影
Episode27 完成したAIと不穏の影
仮想シミュレーションに合格すると、ノアがガイドラインに沿ってベストプラクティスする。
イピトAIノアをアシスタントにしてのプログラミングは、過去の事例に基づいたものなら、完璧にプランを実現することがでた。
いよいよ
ノアのプラネタリウムスタジオに関係者全員が集まる。
本当にセンスがあるのだ。
ゲームの中で使われていたモチーフのランタンだと思っていたが、今回は少し違った。
なんと、小型の水槽くらいの大きさの丸いガラス瓶のテラリウムだった。
降るような星空と赤い花が咲く花畑が背景になっている。
鈴菜が母親とみたプラネタリウムの投影映像の中で、一番印象に残っている風景だと説明された。
「あまりにファンタジー感満載だと大人になってから困るだろう?」
倫理監査AI『
そのテラリウムに鈴菜は感嘆の声を上げる。オーダーメイドなので、しっかりと依頼者の好みにも合わせてある。
「すてきー」
鈴菜は瞳をキラキラさせ感嘆の声を上げていた。
キュイーンと響く起動音を立てて、花畑の中にいつか見た紅龍の女王が現れた。
「鈴菜。ただいま」
「お母さん……」
鈴菜は感動のあまり大きな瞳から大粒の涙を流す。
言葉を失っていた。
「あらあら、まぁ、大きくなったのね。でも、泣き虫は変わらないわね」
「おかえりなさい」
感動のあまりその言葉しか出てこなかった。
そんな鈴菜と対照的に、鈴子は腰に手を当てとんでもない事を言い出す。
「鈴菜、ノワール君から転送された部屋が汚いのだけれど、昔からお掃除とお片付けが苦手だったわね。ちゃんとお掃除しなければ、お母さんは帰りたくないわ。早くお片付けしなさい。こんな素敵なものをもらっても、埃だらけにするだけでしょう?」
鈴菜は真っ赤になって周りを見渡す。
学校で人気ナンバーワン、憧れランキング一位の、意識高い系と思われていた女子生徒の部屋が汚部屋とは。
―――意外過ぎてみんながフリーズしていた。
鈴菜がノアに視線を合わせる。ノアは思わず視線を反らした。
「ノアぁ、内緒にって言ったよね!」
美少女の顔が怖い。
「違うよ。イピトAIの保有情報は引継ぎの際に全て共有される。偽装することはできないだろう」
「ひどい! みんなの前で言わなくたって!」
鈴菜は膝から崩れ落ちた。
「
「そんなぁ」
完璧美少女優等生がイメージガタガタな感じで泣き崩れていた。
鈴菜は思ったより親しみやすい。
交わされる親子の会話は、まるでボケと突っ込みの夫婦漫才のようだった。
「鈴ちゃん、誰にだって苦手なことはあるよ。みんなで買い物に行こう」
ある種のやさしさで
鈴菜の母親がいつまでも帰れないのは大変だと、慌てて三人で買い物と掃除にでかけた。
✽✽✽
余りにも散らかっているので、綺麗好きさんのお片付け心に火が付いたのである。
お仕事モードに入ってしまった
無表情で買い物リストを渡され「これを買ってきて」と言われた時、
「えっと、モップにちりとり、収納箱。だいたい買ったかな?」
「うん、買えたと思う」
間違えたら怖そうなので、二人とも真剣にメモ用紙をチェックする。身体能力的に怒らせたらシャレにならないと思う。
さらっと事前に逃亡した
鈴菜は
だからってサボるのは許せない。
今晩の晩御飯は
不貞腐れたタヌキの了解スタンプではあったが引き受けてはくれそうだ。
久しぶりにゆっくり日常を楽しめたような気がした。
ひたり、そんな表現が似合う粘着質な視線。
偶然目にした光景に、通りの男はニヤリと唇の端を上げた。
「蒼井
何か
邪悪な気配だけを残し、人波に消えて行く。
---続く---
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