ゲーム・ザ・マオウ ~魔王になってダンジョンを運営するゲームをやってみた~

孤宵

第一章 チュートリアル「白薔薇」

第一話 社畜、魔王になる

俺、いや、我は魔王である


ただし、ゲームの中だけ―――


「ああ、疲れた」


薄暗い天井を見上げながら、俺はそう呟く


片付けられていないデスク、山積みになった書類とか、色々が片隅にちらりと映る


そのせいで、いやでも仕事の事が頭に浮かび、また仕事に戻る


俺の名前は、立花隼人、年齢は、、非公開で


俺の現状、それは世間で言う社畜、である


アットホームな職場とかいう、クソの役にも立たない飾り文句に釣られて


早十数年、俺の同期はほとんど消えて、俺一人


皆、転職とか、やりたい事が見つかったとかで消えていく


「はぁ、またかよ」


郵便受けを覗いて、俺は一人そう呟く


またかよ、なんて言っちゃ駄目か


30を超えた辺りから、相次ぐ、友人からの結婚連絡、流石にもう嫌気がさす


俺はもちろん、独身、出会いは無し


まぁ家事は自分で出来るし、退屈でも、寂しいわけでもないから困ってはいないが


やはり、結婚はしたいという、なんとなくぼんやりとした目標がある


「明日は……土曜か、と言ってもすることないんだけどな」


社畜の休日なんて、寝るためにあるようなもんだ、趣味とか無いし


寝る、起きる、いつの間にか次の日、その繰り返し


休日特有の、何もすることが無く、時間が経っていく事への焦燥感だけがある


正直、辛い


「なにか趣味でもあればいいんだけどな」


趣味、趣味かぁ、しいて言うならゲームとか、漫画読むくらいか


そういえば、高校生くらいの時、シミュレーション系のゲームにはまってたな


街づくりとか、ダンジョン作りとか、けど当時金無くて


スマホの無料の奴しかできなかったんだよな


そうだ、PCは持ってるし、明日、シミュレーション系のゲーム買ってやろう


そうだな、街づくり系は結構やったし、魔王になってダンジョン作る系の―――


そんな事を考えながら、俺は眠りについた


明日への期待と、わくわくを秘めて


そしたら、そしたら―――


「なんだこれ」


起きた、そして、パソコンを動かしていた


そう、その時、見覚えのないものが瞳に映った


「ゲーム・ザ・マオウ?」


身に覚えのないゲームが勝手にパソコンに入っていた


魔王になって、ダンジョンを運営し、攻略しにくる冒険者の撃退


他の魔王と戦争するなど、色んな要素が盛りだくさん!


なるほど、ちょうど俺がやりたかったゲームなんだけど……


「取りあえず、やってみる、か?」


心に大きな不安と、少しの好奇心を秘めながら、俺はそのゲームを開いた


すると、画面がすべて黒で塗りつぶされ、次に白い文字が浮かびあがる


《ゲーム・ザ・マオウ》


《はじめから or つづきから》


つづきから?いや、俺がこのゲームをプレイするのは初めてのはず


まぁなんかバグとかだろう、俺はやってないから、当然はじめから―――


そんな事を考えながら、はじめからの方にカーソルを合わせ、選択する


すると、部屋全体が光に包まれ、俺は、なんか引き込まれる感覚を味わう


「はああああああ」


くるくると回る感覚、宇宙空間に放り投げられたような感覚


それを一通り感じた後、何か堅いものにぶつかる


「ここは……」


周りにある、石で作られた壁と床、そして、なんとなく感じる不気味な雰囲気


《■■迷宮ダンジョン、新たな支配者の存在を確認、権限の移譲を実行します》


脳に、誰かの声が響く、AI、自動音声のような命が籠っていない声だ


《成功しました、迷宮ダンジョンの主、新たなる魔王の誕生を確認しました》


「魔王……?」


俺は誰もいない薄暗い空間の中で、一人そう呟くと共に


近くにあった鏡に映る見覚えのない白髪の男の姿を見つめていた―――


名前 立花隼人?


職業 魔王


称号 特になし


持ち物 特になし


能力 不明

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