第2話 駅が怖い

 ちょっと人生のネタ作り気分で、新幹線利用をせずに広島から大阪方面の地元駅まで往復をしてみた。

 午後1時20分に広島駅を出てから、途中の三原駅で降りて遅いランチを取った。それで一時間は費やしてしまったのだが……それを含めても復路に9時間あまりかかってしまった。

 岡山―播州赤穂のJR山陽本線がツボだったわあ。往路は昼間だったから、それほどまでに寂寥感はなかったけれども。

 復路、夜の岡山駅を出ると途端に寂しい印象の駅ばかりになる。無人駅が多い印象を受けた。

 停車するたびに制服姿の若い子が、ぽつぽつと降車していく。ホームは申し訳程度の電灯がともるが、改札を降りた先の道には街灯も少ない。

「こんなに暗い道を、若いお嬢さんが歩いて自宅まで帰るの?」

 そんなふうに思ってしまうのは、わたしが現地の人間ではないからだろう。

 お嬢さんたちは、ごく当たり前のような顔でホームへと出ていく。車窓から、なにげなく眺めていた。

 そのうちの、ひとり。清楚な感じいっぱいの制服姿の女の子の背後。

「あっ」

 思わず目を凝らした。

 ペラペラに薄っぺらいが、彼女のリュックにとびつき、しがみついた。

 どことなく黒っぽい。顔は見えないけれども、彼女と同年代の、ヒトのようにも見えた。

 制服のお嬢さんは、ずるずるとソレを引きずっているようだが……背後の重みを感じないのだろうか? わりと急ぎ足で、歩調がゆるまっている様子はなかった。

 ソレは、絶句しているこちらに気づいたのだろう。頭らしき部分は、ゆっくりと動いて見つめてきた。

 ぴかぴか光る眼が、わたしを見据える。

 それから、とても禍々しい笑みを浮かべた。

 窓越しに身震いしたと同時、車掌に肩を叩かれた。

「お客さん、終点ですよ」


 アプリで観ると、ここは一時間に一本しか電車が来ないらしかった。

 ということは、目的地行の電車は一時間後ということになる……見渡すと駅周辺にはコンビニどころか自販機のひとつもない(山陽本線の各停駅は、そんな印象を受ける駅がなぜか多かった)。

 まあいいか……。

 狭いホームの椅子に腰かけて、一時間を待つことにした。

 夜風に、ふわふわと白いモノや黒いモノが浮かんでいたような気がする。いや、きっと気のせいだろう。

 気のせいに決まってる……。








 

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