第20話 不安

 帝都にあるマスケディア侯爵のタウンハウスにて。いよいよ今日、王宮に参じます。


 姿見の中には、医師らしい黒のフロックコートを身に着けたヨーツェ様と、襟の詰まったグレーのワンピースにエプロンをつけた私が並んでおります。

 鏡に映る私の顔は冴えません。


「私、気付いてしまいましたの」


 そう呟くと、ヨーツェ様が怪訝な顔で私を見ました。


 ヨーツェ様は、ルマリツァ様に地上の神を譲ったのが誤りであったと仰いました。

 ルマリツァ様を倒し、苦しみから解放したいとも。

 つまりそれは、新たに地上を治める神としてヨーツェ様が必要だということではないでしょうか。


「呪いの解けた私はあっという間に老いて死ぬ只の人の身となります。ヨーツェ様がルマリツァ様に代わって地上を加護される神となれば、帝国は永く栄えるでしょう。しかし、そこのときヨーツェ様の隣には私が居ないのです。それが、とても苦しいのです」


 気付いてしまった事実に、昨夜は眠れませんでした。

 なんと勝手で醜い感情でしょうか。

 ヨーツェ様が私のため、私の母のため、そして大陸の沈下を止めるために腐心して下さっていることを知りながら……。


「愛と嫉妬が双子神であったこと、こんな形で思い知るだなんて、情けないですわ」


 すると、落ち込む私の背後から、ヨーツェ様がそっと抱きしめてくださいました。


「俺はもう欲しいものを我慢せぬ。俺のティナ、おれを信じて欲しい。決してお前を不幸にする選択はしない」


「ヨーツェ様……」


「今はふたりきりだ。呼んでくれ、旦那様と」


「ん……旦那様……」


 甘い口づけと嫉妬の苦しみは双子神のように表裏一体なのでした。







☆コンテストのため、一旦こちらで完結となります。

☆コンテスト終了後、続きを書く予定です。応援や評価、コメントを頂けますと執筆の励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

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不死の呪いを受けた皇女は冥府の神に溺愛される〜銀色の猫は今日も皇女の膝で眠る〜 髙 文緒 @tkfmio_ikura

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