第6話 いざ帝都へ!

 あっという間に葬儀当日を迎えた。潜伏していたロイヤルスイートルームをチェックアウトし、デリルたちはホテルを後にした。

 

「この辺りで良いかしら?」


 デリルは周囲を見回す。村の外れ、人気ひとけの無い荒野までやって来た。

 

「ではヴェラ殿、よろしくお願いします」


 ミゲイルが頭を下げる。

 

「うむ、任せておけ」


 ヴェラはそう言ったかと思うと強烈な光を放つ。そして次の瞬間、ヴェラは臥竜がりゅうへと姿を変えていた。初めてヴェラの正体を見たミゲイルとペディウスは、その凄まじい存在感に圧倒されていた。

 

 普段、アルとエリザはそのままヴェラの背中に乗って移動しているが、さすがに4人となると背中に乗るのは難しい。ヴェラとしても、1人も振り落とさずに飛ぶのはとても気を使う事になる。

 

「こんな物、よく見つけてきたな」


 ヴェラは呆れたように大きなバスケットを見る。丈夫なワイヤーでヴェラの首から吊り下げて運ぼうという計画である。

 

「僕はいつも通り、ヴェラの背中に乗るよ」


 アルはそう言って手馴れた様子でヴェラの背中に乗った。

 

「あたしはミゲイルたちとバスケットに乗るよ」


 エリザはそう言ってバスケットのワイヤーをしっかりと固定し、ヴェラの首から掛けてセットする。バスケットはその気になれば5、6人は乗れるくらいの大きさがあった。「ミゲイルもペディも早く乗りな!」

 

 エリザに言われ、圧倒されていた2人が我に返ってバスケットに乗り込む。

 

「準備は良いか? それでは出発じゃ!」


 ヴェラは短く甲高い鳴き声を上げ、ゆっくりと浮上を始めた。ワイヤーがピンと張り詰めて、バスケットが浮かび上がる。

 

 初めて空を飛ぶミゲイルとペディウスはバスケットをしっかり掴んで不安そうに周囲を見回す。眼下がんかでは先ほどまでいた温泉の村がどんどん小さくなっていく。人々がまるで蟻のように小さく見える。

 

「じゃ、私たちも行きましょ」


 デリルはほうきまたがり、ネロを後ろに乗せて浮上する。真っ青に晴れ渡る空、遠くに真っ白な雲がいくつか浮かんでいる。「行くわよ、それっ!」


「どうだ、ミゲイル。絶景ぜっけいだろ?」


 エリザがミゲイルに話しかける。


「何だって?! 風が強くて全然聞こえないぞ!?」


 ミゲイルはエリザに耳を近づける。

 

「絶景だろ!? って言ったんだ!!」


「背番号の事か?!」


「そりゃゼッケンだ!」


 訳の分からないやり取りをしているうちに帝都が近づいてくる。先ほどまでの蒼天が嘘のように厚い雲におおわれ、どんよりと暗い雰囲気が帝都を包み込んでいる。観光気分が吹っ飛び、エリザも徐々に真剣な表情に変わっていた。

 

 帝都上空から見てみると黒山の人だかりが出来ており、城の目の前の広場に都民の為の献花台が設けられていた。このまま広場に着陸したのでは目立ちすぎるので、ヴェラたちは少し離れた場所に着陸する事にした。

 

「ここからなら帝都城はすぐそこね」


 デリルはたくさん人の集まる広場の方を見て言う。

 

「おかしい。やけに警備が手薄だ」


 ミゲイルは周りを見渡してつぶやいた。何か起こるとすれば今日しかない。キャスパルもそれは承知しているはずだ。その割には帝都広場にも最低限の警備兵しか配備されていない。「城内に伏兵を用意しているのか?」


 デリルたちはバスケットを片付けてくさむらの中に隠した。ヴェラも人間の姿に戻り、首をさすってコキコキと鳴らしていた。ヴェラにとってもあんな飛行は初めての事で、違和感があったに違いない。


「とにかく城内に入らなきゃ話にならないわ」


 デリルが言う。

 

「そうだな。ミゲイル、案内を頼む」


 エリザがブツブツと呟いているミゲイルを見る。「おい、聞いてるか?」

 

「! う、うむ。軍用の出入口があるからそちらから行こう」


 ミゲイルとペディウスは事前に用意したフード付きのコートを羽織り、深くフードを被って顔を隠すようにしている。

 

 帝都広場には老若男女様々な人たちでごった返していた。すすり泣く声や、嗚咽おえつがそこら中から聞こえてくる。献花台にはすでにたくさんの花が手向たむけられている。お焼香しょうこうの匂いが漂う中、デリルたちは参列者に紛れてゆっくりと歩いた。

 

「こっちだ」


 ミゲイルが広場の先で脇道に入っていく。帝都城の外周に沿ってしばらく歩くと、石で出来た土台部分の途中で道が途絶えた。

 

「あれ? 行き止まり?」


 デリルはミゲイルの方を見る。

 

「皆さん、上の方にある出窓は見えますかな?」


 ミゲイルに言われてデリルたちが見上げる。かなり高い位置にミゲイルの言う出窓のような物が見えた。

 

「あれがどうしたの?」


 デリルが尋ねる。


「特に意味はありません。さ、扉が開きました。どうぞ」


 ミゲイルはさっきまで石の壁だった部分にぼっかりと空いた穴を指して言った。何か仕掛けを作動させたようである。デリルたちに仕掛けを見せないために気をらしたらしい。

 

「味方と言っても所詮しょせんは部外者か。あんたらしいな」


 エリザは少し寂しい気もしたが、ミゲイルに敬意を表した。

 

 ミゲイルは足早に葬儀会場である大広間に向かう。ざわざわとたくさんの参列者が大広間を埋め尽くしている音が近づいてくるが、ミゲイルたちを引き留めようとする者はいない。あっさりと大広間の入口まで到着したミゲイルたちは、キャスパルの悪巧みを暴く為、ざわめく大広間の扉を開いた。






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◆第一部:目覚めし竜と勇者の末裔 https://kakuyomu.jp/works/16817330652185609155

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