タクシーのはなし(改稿)
お客サン、どこまで?
え?そこの市役所?
この時間やってねぇけど、いいのか?
その近くが家?
あぁ~なるほどね。
え?なにか話してくれって?
ったく、注文の多いお客だな。
でも、俺もちょうどなにか話したい気分だったんだ。
え?だって、真夜中の国道って外が妙にしんみりしてるから、なぜか寂しくなってくるんだよ。昼間はセミがミンミン鳴いてるからなのか、他の季節よりも寂しい気がする。
で、なにを話せばいい?
タクシーの仕事について?
なに?若いネエチャンなのに興味あんの?
ごめん、ごめん、偏見か。
えー……俺はもうずーっとタクシーの運転してて……何年って?
40年ぐらいかな。
そうそう、新卒で会社に就職したけど合わなくて、3,4年しか持たなくて。
うん。
それからは、いくつかの仕事を転々としたけど、タクシーが性に合っててかなり続いてる。
そりゃあ、自分でもすごいと思うね。
飽き性が40年もやってるんだから。
タクシーって楽しいんだよ。
色んなお客がいるから、話を聞くのはもちろん面白れぇよ。
俺よりも老いたオッチャンとか、ネェチャンとか、若いネエチャンもええ匂いすんのよ。
あぁ……悪い悪い。
若いネエチャンに言うことじゃねぇな。
お詫びに少し負けてやるから、そんなに怒らないでくれ。
で、タクシー運転手が一番いやな時間帯って分かるか?
……うん。たしかに昼間も暑いから嫌だよ。丸焼きになりそうになる。
でもな、夜のほうが嫌なんだよ。
ん?なぜかって?
それはさぁ…ユウレイさんだよ。
……そんな顔するなって。
ユウレイさんゆうても、嫌なやつばっかじゃねぇよ。
どっちかっていうと、乗せてるときはユウレイさんだって気づかないパターンが多い。
ん?なんでユウレイさんだって気づくかって?
降ろした住所が地図になかったり貰ったはずのお金が消えてたりすんの。
気づいたときに冷や汗がだぁらだら。それで気づくってわけ。
あとは、これは今年の夏の話だけど、ちょうどこの時間帯かな、0時になったかなってないかぐらいの時間に、駅でひろったお客が、酔ってたのかずっと喋ってたんだ。仕事がしんどいだの、妻が相手してくれないだの。俺は適当に相槌してた。その日は俺も結構疲れてて、でも、こんな夜中にタクシーできる人少ねぇんだよな。俺は未婚だからできるけど、おんなじ会社の人はだいたい結婚してて、子どもいたり、奥サンの相手しなきゃいけねぇ。だから、いつも通り夜中も運転してた。
で、なんだっけ?
そうそう、そのお客がふっと消えたんだ。
話が止まったから、どうしたんかなって心配してミラー見たらいないわけ。
カメラ見返したけど、なにも映ってなくて、俺がうんうんいってるだけだった。
そりゃあ、びっくりどっきりよ。
え?私ならユウレイさんと人間は見分けられるぅ?
無理だって。無理無理
そりゃあ、ちょっと喋るとすぐにボロが出るやつもいるけど、大半は人間かユウレイさんかどっちか分かんねぇから。
だってさ、若いネエチャン、俺も人間に見えるやろ?
ユウレイさん 桐崎りん @kirins
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