愛して、愛して、愛しているの

猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ

綺麗な姉さん、だーい好きだよ。ほら、ね?

 真っ白で照明がひとつだけある二人きりの空間で、弟は言った。


「僕はね、姉さんを誰よりも愛しているんだよ」


「だからさ、姉さん。僕の元に堕ちてきてよ」


「ずっと僕と一緒の世界を見て?」


「綺麗な姉さんが堕ちた姿もまた別の美しさがあると思うから」


「姉さん、早く堕ちてきて?」


 うるさいうるさいうるさいうるさい。私はこんな子知らない。私にこんなこと言うこの子を知らない。この子はそんなこと言わない。いつも私の後ろについてくる子しか知らない、私は知らない。私の知ってるこの子は明るくて温厚で穏やかな子、こんな子知らない、私は知らない。いっつも笑顔で優しくて陽気な子しか知らない、こんな子私知らない。私が大学に行ってた頃のこの子の変化を知らない。手を広げて優しく言ってくる、この子を知らない。


「あなたは誰?」


 お前なんて、知らない。


「…………そっか。姉さんは拒否するんだ」


 知らない子は悲しげな表情を浮かべて迫ってくる。

 いやっ。やめて何するの怖い……。

 視界が眩む。照明の光も眩しい。



「大好きだよ、姉さん。バイバイ」



(…………これからはずっと一緒だよ、姉さん。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛して、愛して、愛しているの 猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ @NekotukiRmune

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ