敗退魔王軍の革命戦線
アメリカ兎
プロローグ1
──聖王宮殿の預言の間に集まった神官達は、水晶に映し出される人類の未来に恐怖していた。
百年に一度執り行われる【勇門の儀】を前に、人類の行末を占う預言者はその場にへたり込んでいる。
「なんてことだ……」
ただ、茫然自失とした呟きをこぼしていた。
水晶に映し出された人類の未来は、阿鼻叫喚の地獄絵図。
いいや、そんなはずはないと神官達は改めて預言を賜ろうと儀式を再開した。
しかし、そこに描かれる未来は変わらなかった。
人類は、魔族の手によって滅ぶ宿命──その結末に神官達は恐怖した。だがどれほど嘆き、悩み、苦しんだところでその未来は変えられない。
「此度の【勇門の儀】は、中断すべきでは……」
神官のひとりが提案する。これまでの伝統に則って行えば、間違いなく人類が滅ぶ──ならば、その預言を覆すにはそれしか方法がない。
「滅多なことを言うな! この結末を見よ! 魔族達はきっとこうなることを知って我々に忌まわしき魔獣達を差し向けているに違いない!」
「だが!」
「この預言は聖王様へ違わず報告する! 異論はないな!」
神官長が全員の顔を見渡し、異論がないことを確認してから一度頷く。だが、それでも一人だけ未来を危惧した者がいた。
「お待ちください、神官長! この未来を覆すために我らにできることがあるはず! 此度の【勇門の儀】を取り消すことが出来ないのであれば、せめて魔族達の総意を求めるべきではありませんか!」
「貴様、魔族の肩を持つ気か! この預言を見ろ! 奴らの総意など聞くまでもない! そんなに魔族の声を聞きたければ、貴様一人で聞いてこい! 次なる『勇者』と共にな!」
神官長は純白の外套を翻し、預言の間を足早に立ち去る。
──その預言を一言一句違わず報告された聖王は、大いに嘆いた。そして憤る。
人類の繁栄を望み、繋いできたこれまでの歴史が閉ざされようとしていることに。
ならば、抗うべきだ。争うべきだ。
人類が持つ叡智と、総軍を挙げて。
かの魔王デミトゥル・ヴァン・ヴェーグロードを討ち取り、未来を覆してみせよう。
さすれば人類の栄華は約束されたと同然。
魔族を一掃してしまえば、未来は変えられる。
──これは
剣と魔法の異世界に誘われた、蒼い悪魔の物語だ。
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