第5話 そして再び



………………………あ………………あ……?




 ああ?!




 ああああん?!




 クソクソクソクソクソクソクソ!!

 おい!この状況はかよ?!

 マジで巫山戯んな!クソ神が!!

 

 いくら異世界転生が大好きな日本人にだって限度があるぞ!覚えているだけでも5回目!しかも漏れなく早死ってどうなってんだよ!


 激しく愚痴を脳内再生し、多分母胎内であろう羊水の中で手をギュッと握りしめた。


 レオンだった時の最後の記憶が鮮明に蘇る。


 顔は見えなかったけど、あいつが着ていた服………クソ親父の兵士の物に間違いなかった。


 後妻ケバお化けの子供が生まれたから、速攻で要済みの俺を殺せと命じたんだろう。


 しかも、後妻ケバお化けの時には、複数の回復師を集めて万全の体制を敷いて出産を迎えたらしい。


 マッマの時には1人も居なかったのに……。

 俺は聞こえてたんだぞ!『誰でもい、回復師を呼べ!』って、誰かが叫んでいたのを!!


 あの時だって回復師を控えさせていたらマッマは助かったかもしれないのに!


 どうしてそんなに後妻ケバお化けと違う扱いを…………まさか………マッマも?俺と同じ様な理不尽な扱いを受けていたのか?!


 俺はペンダントの中にあった肖像画のマッマしか見たことが無い。勿論、話した事も無い。

 マッマのペンダントをくれた女性は、その後会うことは出来なかった。会えたら色々と聞く事が出来たかもしれないけど……。


 もしかしたら、出産に耐えられる様な状態じゃなかったのかもしれない。

 マッマが無理をしたのか……それとも誰かに………。そんな事を強いたのだとすれば、それをやったのはクソ親父しか居ないだろう。


 アイツは見た目だけが良い、人の皮を被ったグールみたいな男だ。腐敗した中身を隠して人の振りをしているただのクズ。


 俺の少ない情報からでも十分それが知れた。

 そして、そんな外面だけが良い人間を嫌うやつが1人も居なかったあの館の異常。


 呆気なく死んで、また転生した今ではどうしようもないけど……。考えても無駄だと分かっても、やり切れなさで胸が押し潰される。


 そのせいでジタバタとしていたら、優しく穏やかな声が聞こえて来た。意味は分からないけど、とても落ち着く。そしてゆっくりと撫でられている様な感覚。


 これは今世のマッマか?俺が暴れたせいだよな?心配掛けてごめんなさい。お陰で怒りが収まってきたよ。


 それでもまだ少し、モヤモヤとした気分が抜けなかったけど、5度目の転生時の確認事項をした。




『異世界言語(会話・読み・書き)』

『収納(時間経過無し・容量無限)』

『魔力検知(魔力濃度やその動きが瞬時に分かる)』

『学習(目で見た事を何でも学習し、使える様になる)』

 【学習済】……生活魔法、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、体術、剣術、槍術、弓術、馬術、投擲、鑑定、索敵、血抜き、皮剥、解体、鍛冶、裁縫

『転移(行った事のある場所へ瞬時に移動出来る)』




 転移!……………もっと早く欲しかった!!

 そうしたら前回死なずに済んだかもしれないのに!


 今度……5度目の正直となる今世は、絶対に生き延びてやるぞ!



 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る