もし間違いをおかしそうになって配偶者を裏切る状況が訪れたとき、あなたを思いとどまらせるものは何ですか?
顔でしょうか、思い出でしょうか。それとも、もっと曖昧な何かでしょうか。
毎日、妻の顔が違って見える――そんな不思議な現象を抱えながらも、主人公は妻と共に生き続けています。
穏やかな土曜の朝、愛猫とのやり取り、七年積み重ねた「やぁ」という挨拶。
その何気ない日常の積層があるからこそ、“顔が変わる”という設定が夫婦の本質をあぶり出す装置として機能しはじめるのかもしれません。
やがて物語は、奇妙な現象の説明を超え、主人公の罪悪感に踏み込んでいきます。
——『裏切り』とはどこから始まるのか。
目の前にいるのはいつもの妻のはずなのに、まるで初めて会う人のように感じる日がある。あるいは、抗いがたいほど好みの“他人”として胸が高鳴る日がある。
そのときめきが、すでに裏切りなのではないか。
当然、物語はそこで立ち止まりません。
高校時代の記憶、報われなかった恋、友人との会話――過去を辿りながら、彼は「なぜ自分は彼女を選んだのか」という原点へと向き合っていきます。
そして物語を読み進めながら、ふと最初の問いに立ち返るのです。
愛とは、何に支えられているのだろうか。
この問いの答えは、ぜひ物語の中で確かめてみてください。