居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜
第1話
「私、ガストン様の子を身籠ったの!」
執務室に呼ばれ、私の婚約者のガストン様の横に座る従姉妹のアンナが驚く事を口走った。
「すまない。だが、彼女を好きになってしまったのだ」
「今まで騙していたのね!」
「違う! 一緒にいる間に好きになったんだ」
「え……」
本気で言っているの?
どうしてそうなるのよ。両親が亡くなった時に婚約を解消すればよかったのに。
妊娠するまで待っていたって事なの?
「二人がした事はあなたにとって、裏切りよ。でも、産まれてくる子には罪はないわ」
「………」
エルダ夫人が言う様にそんなのはわかってる。彼の事は別に好きではない。だからと言って許せるわけでもないわ。
「ガストンは、グリンマトル伯爵家に婿入りする予定だった。そこでね。お願いがあるの。実質私達が切り盛りしているでしょう。だからふたりをグリンマトル伯爵夫妻にしてあげてほしいのよ」
「え? あり得ないはそんなの!!」
アンナの母親のウルミーシュ子爵夫人が言う言葉に耳を疑った。だって切り盛りどころか、ただの居候だったから――。
◇
グリンマトル伯爵家は、代々貴族向けの薬屋を営んでいた。それを継いだ父はもちろん薬師だ。
「レネット! これは触ってはダメと言ったでしょう」
「だって、これだけ違うよ」
薬草問屋も兼ねていた為に薬の材料となる薬草が山ほどあった。
5歳ごろから私は両親に付いて回り、それを手に取り色々と見るのが好きだった。
そして、あっという間に見分けがつくようになる。
「まあ、本当ね。私より目利きだなんて、将来が楽しみね。でも困ったわ。仕入れ時にわかれば何とかなったのだけど……」
お母様は、薬草問屋担当だったけど、こういう事が多かった。
「お母様、大丈夫。私がお父様に頼んでみるわ」
「え? そう? ありがとうね」
その日の夜、私はお父様に――。
「私、薬師の学校に行くわ。しかも経営家科も!」
「え? そっち?」
お母様は、驚いていた。
きっと、薬草の事を言うと思ったのよね。
「うんうん。レネットは我が家の跡取りだからな。もちろん学校には通ってもらうつもりだ。しかし、経営家科もか。頼もしいな」
お父様は、嬉しそうに言う。
「うん。来年受けるね!」
「「え!」」
両親は私の言葉に、凄く驚いた。
そりゃそうよね。来年と言えば7歳。小学一年生よ。
そう私は、転生者。でも高校には行けなかった。病気で入院してしまったから。そしてそのまま。
だから私は、病気に苦しむ人を助けたいと思っているの。医師になるのは難しいけど、薬師なら何とかなるわ。
字が読める様になってからは、お父様とお母様の書物を読み漁った。
薬師に関するものから経営に至るまで。
それから実際に、薬草も見て目も養った。
お陰で、お母様より目利きになったのよ。
「そうか。受かるといいな」
髪と同じ若草色の瞳を大きく見開いて私は、大きく頷いた。
お父様は、試験とはどういう物か受けてみるといいという意味で言ったのだと思うけど、私は一発合格を狙っていた。
薬師の学校は、5年間通う。卒業の年に薬師の試験を受け合格するれば、資格を得られる。経営家科もとなると追加で2年通い、その後2年実際に経営に携わると、経営家として国に登録され女性でも店を出す事が可能になる。
薬師だけの資格だと、雇われ薬師になるか問屋に買い取ってもらう事しかできない。
実習は、我が家グリンマトル伯爵家に雇ってもらう。なので、実質14歳から働く事になるのだけどね。
両親もまさか受かるとはと、凄く驚かれたけど私は受かったのだった。
薬師と経営家が一緒になった学校は王都にしかないので、私は寮に入る事になり両親は凄く心配していた。
しかも寮には、侍女は連れていけない。そりゃ心配するわよね。
これでも私は、伯爵家のご令嬢なのだから。
「わあ、建物が凄く立派」
馬車に揺られる事5日。無事王都の国立薬師学校に到着した。
昨年、立て直したらしく真新しい学び舎に、私は胸をワクワクさせるのだった。
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