第40話 結末

 大騒ぎの出産の末に産んだ子は、ピンク色の髪をした男の子でした。

 髪はピンク色ですが、黒い瞳に浅黒い肌と、他はイジュにそっくりです。

 聖力を使えるかどうかは分かりません。

 母子共に健康で、産後の回復も順調でした。

 その代わりといってはなんですが、私の髪は、ほぼ金色になりました。

 

 子育ては大変ですが、手伝ってくれる人がたくさんいるのでなんとかなっています。

 特に両親は孫が可愛くて仕方ないらしくて、構い過ぎではないかと思うほど可愛がってくれています。

 大騒ぎする両親に比べるとおとなしめに見えますが、イジュもかなり子煩悩です。

 とても幸せそうに子どものお世話をしています。


 イジュが進めている薬草栽培も順調です。

 姉のロベリアが、嫁に行った先の隣村でも栽培できないか、と言い出すくらい順調です。

 商売が軌道に乗れば、栽培農家が増えるのは大歓迎。

 それに姉は村長の息子の嫁ですから、色々と考えるところがあるのでしょう。


「村の功労者になったら私の立場が強くなって、好きに動けるでしょ?」


 と姉は言っていますが、今でも十分、好き勝手に生きているような気がしますので、その点についてはいかがなものかと思います。

 私としては、子育てを手伝ってもらえて大助かりではあるのですが。

 義兄さんはどう思っているのでしょうか、ちょっと心配です。


 薬草をより高く売るための加工場も建造中です。

 王都で売る手筈も整いつつあります。

 兄メラスが口八丁手八丁で高く売りさばいてみせる、と張り切っています。


 私は聖女ではなくなって役目は変わりましたが、相変わらずクヌギ村に貢献しています。

 村長として尊重されているかどうかといえば、微妙なところではありますが。

 子育ても忙しいですし、ふたり目を妊娠中ということもあり、村長としてガッツリ仕事をしているわけではないので、そこは仕方ないです。


 イジュのことを孤児だと言う陰口も小さくなってきました。

 未だになんだかんだとケチをつけてくる人たちはいますが、今となってはイジュ自身が親なのです。

 立派な父であり、私の配偶者。

 薬草栽培の立役者でもあります。

 ケチつけてくる人たちの気が知れませんね。

 他人にケチをつけるより、自分の幸せを追求したほうが良いとは思いますが。

 人生の選択肢は自分で選ぶものですから仕方ありません。

 でも私たちは幸せなので、言いたい人たちには言わせておけばいいです。


 エリックさまは、私たちの子どもをのように可愛がっています。

 ちょっと老け込むのが早すぎると思いますので、早くご自身のお子さまを作ればよいのに、と思っているのですが。

 もっとも相変わらずお盛んのようですから、既にどこかにいるのかもしれません。


 村から聖女はいなくなりましたので、聖力石は購入することになりました。

 エリックさまによると予算は特に増やしてはいないそうですが、同じ額でも全く困っていません。

 前村長は、どれだけの額を使い込んでいたのでしょうか。

 村長としての報酬はキチンと出ていたのに。

 意味が分からないです。

 今後は人間の欲について、注意したほうがよいかもしれません。

 もう私は聖女ではなく村長ですから。

 村を預かる責任者として、他人を疑うことも仕事のうちです。

 

 聖女でなくなった私は表向き、聖力を使えないことになっています。

 ですが、小さなものに聖力を注ぐくらいの力は残っています。

 なので、イジュのペンダントヘッドに聖力を注ぐのは私の役目です。

 彼を守ることができる力を残して下さったのは、神の恵みです。


 行き遅れ、などと陰口を叩かれましたが、そのおかげで思いがけずイジュ初恋の男性と夫婦になれました。


 何が幸いするかなんて誰にも分らないことですが。

 人間、幸せになれるときには、幸せになれちゃうものですね。


~おわり~

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行き遅れ聖女の結婚騒動 天田れおぽん@初書籍発売中 @leoponpon

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