第43話 スタンピードの正体

アンリさんの呼び出しに対応していた翌日、俺はギルドに報酬を受け取りに来ていた。


「ん?あ!ジェイルくーん!」


ギルド内のテーブルの1つにアテナさんとレイさんがいて俺を呼んでいる。


「お二人さん、今日は依頼を受けに?」

「いや、私達は君を待ってたんだ」


え?俺を?

何故に?


「私達、ジェイル君と会って結構経つし今回のスタンピードで報酬もたんまり貰えたじゃない?だからジェイル君も交えて復帰祝いで豪華に食事でもしようかなって思ってたの♪」


ルンルン♪という擬音が似合いそうにはしゃぐアテナさん。

あ、この2人、俺を待っててくれたのか。

俺はギルド長に報酬を貰いに行ったら合流する事を伝え、受付にいたアーリアさんにギルド長室へ案内してもらった。



◇◆◇◆◇◆



「ギルド長、ジェイル様がお見えです」


室内から、通してくれ。という声が聞こえる。

アーリアさんが先に入室し、次に俺を入れてくれる。

俺を見るやいなや、テイラーギルド長は執務を中断し、ソファーに俺を促すと同時に自身も座る。


「さて、改めて交易道跡地での作戦立案、本当に感謝するよ」

「ありがとうございます。と言っても立案した私が怪我をしちゃいましたがね…」

「ま、ストライカーが来たら無理も無い…あ、それともう1つ、ここだけの話なんだが…」


突然ギルド長の声が小さくなる。

え?何?かなり込み入った話になるのか?

俺は緊張半分、不安半分でギルド長の話を聞いていた。



◇◆◇◆◇◆



「スタンピードじゃない!?」

「あぁ、ダンジョン研究所がそう結論付けたんだ」


ギルド長の話曰く、今回のモンスターの大群による襲撃はダンジョン内で多くなってしまったモンスターの暴走では無く、ダンジョンそのものの繁殖時期になったので最下層に住むとあるモンスターを強制的に発情期へと迎えさせ、自身が繁殖する為の栄養補給から逃げ出した事による結果らしい。

つまり、あのモンスター達は逃げていただけだったのだ。

というかマジでダンジョンって生きてるのな…

それに他のモンスターすらも使うのか…


「ダンジョンって本当に生きてるんですね…」

「まぁね、さてと、長話もなんだからここらで今回の作戦の提案及び成功の報酬を君に渡そう」


ギルド長が立ち上がり、机にあった鈴を鳴らす。

すると俺が入って来た扉とは違う所の扉が開き、大きめの袋が乗せられたワゴンをギルド役員の女性が押して来ていた。

その袋をギルド長が持ち上げ、テーブルに置く。


「今回の提案と作戦成功で金貨200枚、並びにダンジョン発見によるダンジョン研究所からの報酬である金貨50枚、全て込みで金貨250枚を贈呈しよう」

「250っ!?」


とんでもない金額を渡された。

金貨1枚は日本円の1万円に相当する。

つまり目の前の袋には250万相当の金貨が入っているのだ。

ダンジョン発見は偶然とはいえ、1回の作戦立案と成功でこれ程の金額を受け取ることになった。

ギルド長は一応預けて仮に各国に出向く事になってもその国で受け取る事も出来るとの事なのでありがたく預けさせて貰う事にした。


「さて、今回のスタンピードの真実も報酬の受け取りも済んだな」

「そうですね…けどブロンズランクでこの金額を持てた事の方が驚きですけども…」

「はははっ!確かに君くらいかな?」


テイラーギルド長は笑ってるがこっちとしてはこんな大金持ってる事がバレたら絶対囲まれる…

俺自身喧嘩は苦手だからこの大金はバレないようにしよう…

俺は立ち上がり一礼してからアテナさんとレイさんが待っているギルドの広間へ歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る