第14話 ギルド案件

―side エドワード―



「いやな……お前さん。結構なグルメだろう?」

「ええまあその通りですね、全力で自画自賛させていただくと」

「フハハハッ!本当に少しも謙遜せずに自画自賛したな」

「そりゃねえ」

 


 王族としても冒険者としても色々なものを食べつくしてきたから舌には自信があるからね。


 

 それはそれとして、グランドギルドマスターに依頼されたお題は斜め上のものだった。

 まさか、冒険者ギルドの食堂を名店にして欲しいなんて。所謂、これが最近話題のギルド案件ってやつなのだろうか?



「実は、お恥ずかしながらすべてのギルドの食堂の経営がうまく行っているわけではなくてだな」

「ふむ……」

 


 まあ、だろうな。世の中、冒険者ギルドなんてあちこちある。

 当然、味にバラツキもあるし、食堂に対する力の入れ度合いも違うだろう。

 だって、冒険者ギルドは冒険者をサポートする組織であって飯屋ではない。必要最低限だけやってればいいやと言ったギルドもあると思う。



「かと言って、安くてうまくて冒険者の福利厚生にもなるし、駆け出し冒険者にはなくてはならない存在だ。赤字の店舗もどうしても続けなくてはいけなくてな…それがギルド財政の重荷なんだ…」

「なるほど……世知辛い」

「そうなんだ!頼むっ!もし成功したら暁にはこちらの聞ける範囲内で1つ特権を与えるから、引き受けてくれないか!」



 えっ……それだけのために特権をもらえるの?冒険者ギルドの特権とか、結構な好条件だな。

 もし俺が独立した時もきっと役に立つだろう。

 それにこのグランドギルドマスターに恩を売っておけば色々助けてくれそうだ。

 これを引き受けない手はない。



「分かりました。そちらの方も精一杯やります」

「ありがとう!正直あなたの掲示板での影響力があれば、地方の冒険者ギルドもきっと観光客がわんさか訪れるでしょう」

「いや、言い過ぎでは?」

「言い過ぎではないですよ……昨今のインフルエンサーの影響力を我々は知っていますから」



 それまで黙って背後に控えていたアイクさんもそう言う。



「エドワード様の冒険者ギルドでの影響力はギルド本部としても無視できないレベルになっています。なので特権を与えて囲い込みたいのですよ」

「ちょっ……アイク!」

「図星ですか?」

「うっ……!」



 そうだったんだ。通りで破格の条件なわけだ。自分の事を過小評価してたのかもしれない。

 王族として自分の評価を正しく理解していないのはあまり良くはない。下手に自分のことを低く見積もって安請け負した結果、民たちの不利益になってしまうことがあるからである。反省反省。

 まあでも。

 


「俺はそれでも引き受けます」

「エドワード様」

「はあ……エドワード様が良い人でよかったですね。グランドギルドマスター」

「ガハハハ!本当にな!ありがとうございます!エドワード様!」

「ただし!俺が本当にいいと思うものしか宣伝はしませんよ、そこら辺は厳しくいきます」

「もちろんだ!グランドギルドマスターの元にビシバシしごいて欲しい」



 ニヤリッ!ふはははは!言質はとったぞ!やりたい放題やってやろうではないか!



「そう言うことなら!全力でやらせてもらいます」



 ――ゾクリッ!



 ――ヒソッ

「な、なあアイク……」

「ええ、マスター」

「「((頼む相手、間違えたかも))」」



 後ろで、2人とも何か怯えているが気のせいだろう。



「ところで……グランドギルドマスター」

「は、はい!」

「…………」

「……………………」



 …………………………。



「名前、なんだっけ?」



 ――ドテドテドテッ!



「申し遅れました。ロダンです……」



 ロダンさんと言うらしい。よろしく。

 


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