第47話 崖っぷちの絆
「妾は、寒いのがどうも苦手でな」
これまで、最高神!だと威張っていたヒノキが見せた、はじめての弱みだった。
「そう・・・あ、もしかして、それでアナタ、アスナロを連れて来なかったのね」
ヒノキは、コクンとうなずき、応えた。
「まぁのぅ。最高神たるもの、師匠たるもの。庶民や弟子の前では、常に頼りになる姿を見せたいものじゃ」
ヒノキの告白に、イロハ先生もまた、向き直った。
「ふふ。わかるわ。私も、精霊魔法学校で教鞭を振るっていたころは、生徒の前ではしっかりしなくちゃって、毅然な態度を心掛けていたわ。教え子を持つものとして、とても共感するわ」
「イロハよ。助かったぞ、羽織は返す。そろそろ行こうかの」
ヒノキが立ち上がったそのとき。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
岩肌が突然崩れ、ぼくらは足場を失いかけた。
ぼくは、咄嗟にそばの突き出た岩をつかみ、もう一方の手を差し出し、
「ヒノキ様!イロハ先生、手をつないで!一緒ならなんとかなる!」
と叫んだ。
足場が崩れ落ちる中、ぼくらは互いの手をしっかりと握り合い、必死に体勢を整えた。
崖の風は冷たく、雪が小さな刃のように顔に当たる。
「ふふ、助かったわ。ありがとう、ユウ。」
イロハ先生はぼくの手をぎゅっと握り、安堵の表情を浮かべる。
「ふん!ただの偶然じゃよ!それに、今日は例外じゃ…このようなことは二度とないからな!」
と口では強がるものの、ヒノキ様でさえも、今はその冷たさを感じている余裕すらないようだった。
しばらくして、ようやく安定した足場へ移動し、ぼくらはゆっくりと立ち上がった。
そこから見えたのは、遥か彼方に続く険しい崖の道と、冷たい雪に包まれた山々。
厳しい旅だが、なぜか今は、どこか温かさを感じていた。
「さあ、もう少しじゃ。もう少しで、吊り橋が見えてくる。そこを越えれば、闇医者シキミの住まいが見えてくるはずじゃ」
再び歩き出したぼくらの間に、連帯感が生まれていることに気づいた。
いつのまにか、吹雪はおさまっていた。
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