第32話 ァステリオに抱かれて

そのあとに出てきた、料理もデザートも格別だった。


とくに驚いたのは、「流星小麦」のパスタだった。


なんでも、例の流星に小麦と呼ばれる食材の種がくっついていたそうで、

いつの間にか収穫ができるようになったんだとか。


普段、ぼくが作っているザックスパスタとは全く違う。


麺の中の甘さは、ザックスよりも控えめだったけれど、

奥ゆかしさを感じてソースとの相性が抜群だった。


あの、パスタはレストランでも絶対に出したい。


きっとアミは喜んで食べてくれると思う。


「お風呂もいただいたし、お食事もいただいたし、そろそろおやすみしましょっか。アステリオーーーー!」


イロハ先生・・・元気だなぁ。


「ごちそうさまでした」


「ごちそうになりました」


「ごちそうだったっす!」


「はい、お粗末様でございました。では、ユウ様。明日は食事の支度の際はよろしくお願いいたします。また、お迎えにあがりますね」


「はい!ヨコグラ師匠、よろしくお願いします!」


「おやすみなさいませ」


そう言って、ヨコグラ伯爵はまた、光の粒となって姿を消していった。


さあて、ベッドはどこかな・・・・


ベッド。


あれ?ベッドが・・・ない!


「おいおいおい!ここは、宿だろ?布団やベッドはどこにあるんだ??」


「はっはっは、ユウ殿。なにを言ってるっすか?」


「いやいや、常識的に考えて、どこに眠るかっていうのは、疲れをとるのに大切なことだろ。布団もベッドもないところで眠れるわけがないじゃないか。ただでさえぼくは、枕が変わるだけで、寝つきが悪くなるんだから」


「あぁ、ユウ。あのね、森っていうのは、どこでも自分の好きなところで寝ていいものよ。本来そういうものじゃない?っていうか、その日その時、寝たい場所で寝る。それがどんなに贅沢なことか。ベッドとか布団とか、眠る場所を人間は決めているみたいだけど、そんなの窮屈じゃない。この地球のどこでも眠ることはできるのよ。星がきれいなときは、外で眠ったらいいわ。雨や風が強かったら、洞窟の中とかで眠ったらいいののよ」


「なんて野蛮なんだ。外で眠るだって?考えられないよ。まあ、じゃあ、100歩譲って、自分の好きな場所に眠るとしてさ、寒さはどうしのぐんだい?」


「ふふ。そんなの当たり前よ。その変にある草とか藁をクッション代わりにして眠るのよ。あと、獣と眠る夜なんていうのは、最近ではめっきり減ったけども、もふもふでいいのよ。今日なんかは、アステリオの羽毛の中で眠るんだから!」


「え、あの星ふくろうと眠る?」


「そうよ!動物と一緒に眠るって、あったかくて気持ちいいんだから!ねー、アステリオ」


ホーホー。


アステリオが笑った気がした。


「あーぁ」


イロハモミジが大きなあくびをした。


「じゃあ、私、先に眠るわね。おやすみ、2人とも」


イロハモミジは、左の翼の中へ入っていった。


「おやすみっす、イロハ殿!」


それにしても、この巨大ふくろう・・・どこで寝てもいいっていうのか?


「ユウ殿。自分は右の翼で眠るっす。ユウ殿もよかったらアステリオ殿の中で眠るといいっすよ」


「あぁ」


どこで眠ってもいいのなら、できればこのふくろうの中は避けたいが、こればっかりは。


星ふくろうに食べられる心配はないのか?どこか別の場所で休んだ方がいいのではないか。


けれど、今日初めて出会った星フクロウとともに眠るなんて・・・



「アステリオ・・・。背中にのぼってもいいのか?」


ぼくは、アステリオの背中で眠ることにした。

よじのぼってみると、あたたかくて、ふわふわしていて。


なるほど、こりゃあいい。


今日、大変な目にあったなぁ・・・。


まさか、ぼくが森へ出かけることになるなんて。


今日一日の出来事とき思えないほどの、たくさんの冒険・・・




もうなんだか、すぐに眠れそうな、ここち・・・よ・・・さ。


「ふわあーぁ」


あくびが出る。そういえば家を出てからここまで、ほとんど休んでなかったからな。


いつのまにか、吸い込まれるように眠ってしまった。

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