ドキドキパーティー

20X2.05.04


 パーティーは夜から行われる。きらびやかな繁華街をスマホのナビを頼りに進む。


 進んで行くと人々の喧騒が聞こえてきた。


(夜の街にひとりきりって、やっぱり怖い……)


 本当は怖い……。でも、パーティーに行ってみたい。自分のような人と出会いたい。その為に北海道から出てきたんだ。


 勇気を振り絞って一歩一歩進む。


(ここを曲がるのか……)


 路地を曲がっていくと大通りとは打って変わった街の暗さに少しビビりながら進む。店の前では綺麗なお姉さんが受付していた。


「入場されますか?」


「はい!」


 緊張しながら答える。


「友達募集は緑、恋人募集はピンクの光るブレスレットを付けますがどうしますか?」


「あ、はい! どっちも付けます」


 期待と緊張でドキドキする。中に入って見ると、夢にまで見た世界が広がっていた。


「女の人がいっぱいいる」


 そこには色々な人がいた。ダンスを踊る人、チップをあげる人、友達とワイワイしてる人、その全ての人がレズビアンだとは信じられなかった。


(わーーっ! こんなにレズビアンっているの?)


 人の多さにびっくりする。ダンスフロアでは台の上でセクシーな衣装を来たダンサーのお姉さんが何人も踊っているのが見えた。


 その台の近く、あれはお客さんだろうか? 口にお札を咥えている。その様子を見ていると、ダンサーのお姉さんが反対側を口で咥えてウィンクする。


(え! すご!? 本当にやるんだ!!)


 動画でみた事ある光景が繰り広げられ興奮する。それが終わるとみんなビンを片手に踊ったり、歌ったり楽しそうにしていた。


(うわぁーーなんかすごい!!)


 すごい世界に来てしまった。そう思いながら辺りを見回す。


 ここまで来たんだから人見知りしてられない。とりあえず近くの人に頑張って声を掛けてみる。


「あの、こういうとこ初めて来るんですけど、よく来るんですか?」


「くるよー!」


「そうなんですねー。……あー……えっと、その……」


 あれ? 人との会話って何話せばいいの?


「どうしたの?」


「いえ、何でもないです」


 話しかけておきながら何でもないとか変人だ。意気消沈してその場を離れた。






 その後、何人かに話しかけてみるが上手く会話が続かなかった。話しかけてくれる人もいたが上手く返せずに、去られた。


 期待が大きかっただけにあまりにも上手くいかずバーの片隅で意気消沈していると、バーのお姉さんが話しかけてくれた。


「あなた、見かけない顔だね。もしかして初めて?」


「あ、そうなんです。この前上京してきて……」


「なるほどね、リング付けてるし友達と恋人募集してるの?」


「そうなんです。人見知りだし、上手く話せなくて」


 同じ境遇の人に会いたいと思って上京してきた事や、人見知りでうまく話せない事を相談する。お姉さんは親切に色々教えてくれた。


「そっかー、ここに来る人は結構仲間内で来てたりするからね。オフ会とかは行ったことある?」


「オフ会? 何ですかそれ?」


「好きな趣味同士の人が集まる会だよ。レズビアンの掲示板とかで募集してるから行ってみたら? 趣味が一緒なら話せるかもよ?」


 それだったら私も話が合う人が見つかるかもしれない。希望が見えた。


「初めて知りました! それなら私でも話せそうです。教えてくれてありがとうございます」


 初めての人にこんな優しくアドバイスしてくれるなんて……すごく良い人。


「いいのよ、誰だって最初は上手く行かないんだから。頑張ってね」


「はい!!」


 こうして散々なデビューになったが、最後にお姉さんが教えてくれた事を考えると行って良かったと思えた。


 次はお姉さんが教えてくれた、オフ会に行ってみることにする。

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