丁寧
- ★★★ Excellent!!!
中学生の男の子が自分と向き合い周囲と共鳴する物語です。
正直に言うと最初は少しじれったく感じました。それくらい丁寧。読み進めてその丁寧さが大切なんだと感じました。
もっと衝撃を持って伝えることも出来るし、そうしている創作や主張が多いですよね。例えばアフリカの貧困を伝える時に瘦せ細った子供の映像を見せるような。あれは良い手段の1つではあるのだけど、この物語はより良い手段をとっています。読んでいて側で一緒に過ごしているような感覚がありました。
すでに何かが失われた悲劇で語るのではなく、読者を一緒に過ごさせることで何を守ろうとしているのかをじっくりと、建物を建てるように順を追って見せてくれます。根気強くテーマにあった伝え方を完遂しているところがなによりよかったです。
ただそれだけでじれったさが許されるかと言うとそうではないです。構成の工夫も光ってます。脚本の部分が序盤は笑い、後半は物語の芯を表現していてめっちゃ良かった。また両親との距離感から少しずつテーマを明かしていく速度。最後に万事不安なく解決しないバランス。よいです。
いたずらにおもしろさを追うことをせず、伝えたいテーマと大切に向き合い読む人皆に見事に理解させてしまう物語。おすすめです。