第21話 双子の誕生

 

 翌年、ティナが無事双子の赤ん坊を出産した。


 一人はマルコム家の特徴である黒髪の女の子、もう一人はティナによく似た淡い金髪の男の子だった。


「母子共に健康、あとは助産師の指導に従ってください」


 医師が帰って行くと残った助産師が、きれいにした赤ちゃんを綿布にくるんで連れて来た。


「はい、お母さん。頑張りましたね」

 助産師は金髪の赤ん坊をティナの胸に抱かせた。


「うぁ~、可愛いなぁ。この子は君にそっくりだね~」

 エリオットは生まれたばかりの双子に感動する。


 助産師はもう一人の赤ん坊を抱いて来ると、

「はい、パパさん、抱っこしましょう」

 と黒髪の赤ちゃんをエリオットの手に預けた。


 エリオットは恐る恐る赤ん坊を抱くと、顔を覗き込んだ。


「こっちの子はザ・マルコムって感じだなあ~、ふふ」


 エリオットは落とさないように抱っこすると、そのふわふわの髪にキスをした。

 ティナは胸の上で赤ん坊を抱いて満足げだ。


 助産師が、ティナに

「赤ちゃんに初乳しょにゅうをあげてみますか?」

 と言って来た。


 ティナの胸は妊娠後、どんどん大きくなっていって、体もお母さんになる準備ができていくんだな…とエリオットは『生命の神秘』を感じていた。


 ティナは胸の前を広げると、乳房を赤ん坊の口へ持っていく。

 赤ん坊は乳首を口に入れると、目をつむったまま口を動かし始めた。


「そうそう、上手ですよ~」

 助産師が声を掛ける。


 エリオットはうっかりその様子をガン見してしまい、あわてて目をらす。


「はい、パパさん。次はそちらの子と交代してくださいね」

 そう言われて、抱いていた子をティナの胸に預け、代わりに一人を受け取る。


「今夜は私が面倒を見ますので、明日からパパも手伝ってあげてくださいね」

 助産師は、そう言ってエリオットを励ました。


 双子とあって、ティナひとりでは大変なので、乳母うばを住み込みで雇い入れた。

 一歳の子供がいる乳母のニコルは、ご主人を事故で亡くして困っていた。そこでうちに来てくれるようお願いしたのだ。子供たちが大きくなってくれば、いずれお互い遊び友達になってくれるだろう。


 こうして慌ただしいが、穏やかで平和な赤ちゃんとの生活が始まった。



 それから半年後、ようやくエリオットとティナは結婚式を挙げた。


 もう随分前に、婚姻こんいんの正式な手続きは済ませていたのだが、赤ん坊が落ち着くまで待った形だ。

 エリオットのにとっては初婚なので、元当主としてのお披露目の意味もある。何より彼は、ウェディング・ドレスを着た彼女が見たかったのだ。


 客席ではティナのメイドのメイと、乳母のニコルが最前列に赤ん坊を抱いて座っている。

 騎士団のブランドンや魔法師団の友人も来てくれて、少人数ではあるが落ち着いた式になった。

 ティナはディランからもらった指輪を宝石箱にしまい、新たにエリオットと指輪を交換する。


「汝はこの女を、妻として娶り生涯をかけて愛することを誓うか?」

「誓います」

「汝はこの男を、夫として生涯をかけて敬い愛することを誓うか?」

「誓います」

「誓いのキスを」

 こうして二人は皆に見守られて、結婚を誓った。



 * * *



 結婚式の夜、エリオットとティナは双子を乳母に預けると、久しぶりに静かな夜を取り戻した。

 二人にとっては初夜だ。


 二人はおずおずとベッドに腰掛けると、お互いの顔を見られないほどに照れながら、顔を上げた。


「どう…しようか?ティナはどうしたい?」

「…とりあえず、ベッドに入りましょうか」


「うん…このまま寝てもいいし…」

 そう言いかけたところで、ティナがエリオットの手に自分の手を重ねた。


「それはダメ。…あなたを感じたいの…」

 そう言われて、エリオットは顔が一気に火照ほてる。


 ティナの緑色の瞳がエリオットを写す。

「…キスして…」


 エリオットはゴクリと唾を飲み込んで、そっと唇をティナの唇に重ねる。

 優しい優しいキスだった。

 ティナの柔らかい唇がエリオットの心に火をける。



 二人は抱き合って口付けを交わす。ドクドクと高鳴る心臓の鼓動までも、相手と溶け合ってゆく。


(ティナ、愛してる…ずっとずっと昔から)



 柔らかくて暖かいティナの躰…エリオットは全身でティナを感じる。


「君はどうされたい?」

「…あなたの思うままに…」


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王室付き魔法師ゴーストになる 〜ゴーストだからって何もできないわけじゃない 滝久 礼都 @choukinshi

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