第15話
15話
私達は準備を済ませ、駐車場へと戻ってきていた。
シャーロットは車の整備を終え、エンジンを吹かしていた。
「用意終わったよ」
「もう来たのね、こっちも一応準備を終えたわ」
「丁度終わったか、良かった」
「そうね」
私達はシャーロットの車に乗り込み、全員が乗り込んだのを確認してから、シャーロットも運転席に腰掛けた。
「それじゃあ出発するわね」
そう言うと、アクセルを踏み込み、車が発進する。コンクリートの壁や色鮮やかな車を横目に、車は地下駐車場を出た。
そして。
「止まれ」
いくつかの信号を渡り、いくつかのビル、住宅地、鉱山監視所を抜けた先に工場地帯への入口が見え始める。その境には、灰色の装甲に警察の紋章が貼られた警察ドロイドが検問をしていた。
しかし。
「私が誰かわかってるわね?」
シャーロットが窓を開けてそう言葉を落とすと、警察ドロイドは少し驚いたように赤い目を細め、
「『これはこれは、シャーロット様。もちろんです。ささ、お車をお進めください』」
警察ドロイドは敬礼しながら下がる。そして再度、車を進めた。
「なぁ、サンブルック工場地帯って本当にやばいみたいだな」
境を超えると、パイプや錆びた鉄板が犇めき合い、その間からは見るからにカタギではないギャングやチンピラらしき人物らが覗き込んでいた。
「こっちに来ないことを祈りましょう」
「そうだな……」
ここからは危険地帯だ。私達は各々武器を手にとり、リリーは機関銃の装填を行った。
「襲われたりはしないんだな?」
「私達を襲おうとする者などいないわ。車の価値は持ち主の力を意味するから、下手に手を出せば死ぬということを分かっているの。特にこのあたりに隠れているチンピラに、襲う度胸はないわ。意図的に潜んでいる者を除けばね」
「それを聞けて安心した」
そんな雑談をしながら車を進めていくと、少し異質な工場が目に入った。他の場所は錆びて赤い鉄板が主流であるはずなのに、この区画のみコンクリートによって建物が建造されている。
そして入口付近には数人のチンピラが確認できた。
「近くには停めないわ。近くの駐車場に停める」
「了解」
私達は目的地であろうその場所を通り過ぎ、少し過ぎた場所にある駐車場跡地に車を停めた。
そして。
「全員出ましょうか」
「了解〜」
私達は降りる。
「ユキ、リリー、武器は問題ない?」
「わっちは問題ない、軽機関銃も準備できた」
「ユキは?」
「私も、刀も研げたし準備は万全よ」
「私も問題はないわ」
最後にシャーロットが歩き出し、リボルバーを服の中に入れた。
そしてあの区画へと歩みを進めた。
「おいお前ら!ここで何をしている」
施設のエントランス前に近づくと、十数人はいるであろうチンピラの集団がこちらへ近づき、銃を向けてきた
。
「手を見せろ。武器を捨てて投降しろ」
「……やることは一つよね?」
「ええ、やりましょう」
シャーロットからその一言が出た瞬間に、事が始まった。
私は杖から魔力を放ち、壁を作る。
チンピラの銃撃は魔力の壁が弾き、その間にリリーとシャーロットが銃撃を開始した。
リリーらの弾は魔力の壁に弾かれることはなく、チンピラの肉を貫いていく。
「ぐっ!」「はあっ!」
前列にいた数人のチンピラが血飛沫を上げながら倒れた。
「お、おい!」「ひ、怯むな!」
前列が崩れたことにより、チンピラは統率を失った。
ユキと私が攻撃に転じる。
敵からの銃撃が止んだ瞬間、魔力の壁、結界はまるでガラスのように破片を飛ばしながら砕け散った。質量のある結界の破片が猛スピードで飛び散り、射程圏内にいたチンピラの肉体に刺さり、数人は悲鳴を上げながら倒れた。
ユキも負けじと敵の射程圏外から忍び寄り、刀を振りかぶって腕を切り落とし、攻撃手段を失わせた。
そして、最後のチンピラの脳天をシャーロットが撃ち抜き、戦闘が終了した。
「口ほどにもないな」
「チンピラだからかな?」
「そうよ」
「じゃあ、突入しようか」
私達は小奇麗な玄関扉を一瞥し、杖を向けた。
魔力が杖先に溜まると、急速に放たれ、扉を盛大に破壊した。
「何事だ!」
中にはチンピラだけでなく、スーツを着た男達やドロイドが屯しており、こちらを見るなり銃撃を開始した。
「用心棒、侵入者を迎撃しろ!」
フロントの奥、受付にいたと思われる金髪の少年がそう叫ぶと、黒いスーツを着た男達が一斉にこちらへ拳銃を発砲した。
私達は結界を張ったり散開し、彼らの射程圏外へと出た。
「ここから、どうする?」
「セレナ、結界張ってくれ。わっちが援護する」
「ありがとう!」
私は杖を持ち出し、結界を張り出し、前へと出た。
魔力の壁が弾丸を跳ね飛ばし、後ろからリリーが顔を出し、軽機関銃でフロント一帯を銃撃した。
「時間を稼ぐんだ!」
「クソッ、ここでか」
スーツの男達やチンピラ達は銃弾を受け、血を吹き出し、小さな断末魔を上げながら、倒れたようにバタバタと倒れていった。
そして金髪の少年はスーツ姿の男達に護られながら後ろの通路へと逃げ、その道を塞ぐようにシャッターが下ろされた。
「ちっ、逃げられたようだな」
「中へ入ろう」
「了解」
私達は足を踏み出し、施設の内部へ侵入した。
チンピラや用心棒は殲滅されたのか、ここには残骸しか見当たらなかった。
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