第563話 ボツ案

 以前、人衣魔法と神衣魔法を習得したヌゼに、剣術で追い込まれた事がある。

 随分と長い間、剣術の稽古なんてしないので、俺の腕もなまったもんだなぁ、なんて感想を抱いた。

 その時は悔しいとかそんな感情はあまりなかったのだが……なんか、後になってふつふつと悔しくなってきた。

 そういえば俺、負けるのはあんまり好きじゃないんだよね。いや、負けてないけど。


 ヘブロム曰く女神の襲撃も暫くはなさそうなので、この機会に特訓でもしてみる事にした。

 で、どういう風に特訓しようかなぁと考えていると、自分が生身ではあまりモンスターと戦った事がない事に気が付いた。


 ダンジョンに潜る時は大体パワードスーツゴーレムだし、【ゴーレムダンジョン】では搭乗型ゴーレムだし、その他だとそもそもあまり戦闘自体していない。

 まぁ、俺はロボットに乗って戦うより、誰かが乗ったロボットが戦っている姿を見る方が好きなので仕方ない。


 という事で、生身でダンジョンのモンスターとでも戦ってみようかなぁ、と思ったのだが、ここで問題が2つ。


 1つは虫問題。

 ダンジョンの中には巨大虫型モンスターがうようよといる場所があるので、それがやばい。

 まぁ、この問題は虫型モンスターが出現するダンジョンや階層を避ければ良いだけなので、なんとでもなるだろう。


 もう1つは、ダンジョンのモンスター弱すぎ問題。

 というか、今の俺の体が強すぎる問題?

 腕を振るだけでボスですらボンっ――! ってなる気がする。


 そこで目を付けたのがアバターである。

 敢えて弱いアバターを用意して、それを使うとこで良い訓練になるんじゃないだろうか? と考えたわけだ。

 ただ、ヘブロムの予備のボディやら、薬神のデブボディとイケメンボディ、それと、ホープのセクシーボディなどでは、少々身体能力が高過ぎる。

 出来れば一般人レベルの弱いアバターが欲しい。


 自分で作ろうかと思ったのだが、俺だとどうしてもロボットを作ってしまう。出来れば人間の姿のアバターが特訓には向いているだろう。


 という事で、ちょっとヘブロムに質問してみる。


「ヘブロム様、人形神様に頼んで私用のアバターを作って頂く事って出来ませんかね?」


「なんの見返りもなくか? いくら人形が作れればそれで良いって感じの人形神でも、人間の頼みなんざ一々聞いてはくれんと思うぞ? まぁ、聞くだけ聞いてみてやるが――」


「お願いします」


 直ぐにヘブロムのアバターがガクリと崩れ落ち、ヘブロムが神界に戻った事が分かった。

 見返りか~……ゴーレムも守備範囲だって言ってたし、ゴーレムでも――いや、人形を司る神様に人形をプレゼントするのは逆に失礼か?

 後は……うん。何も思い浮かばない。以前思い付きで建てちゃおうとか考えた、ゴーレム神社を本当に建築して人形神を祀ろうかな。


 数分後――


「作ってくれるってよ。要望を聞いてこいだとさ。――ったく、どいつもこいつも俺様をメッセンジャー代わりに使いやがって」


「すみません。要望ですが、身体能力は一般的な人間レベル。容姿は~……身長が180センチ程度の中肉の男性ならば、顔はなんでもいいです。あ、年齢は大体二十歳ぐらいでお願いします。それと、アバターを作って下さるお礼をしたいのですが、何が良いと思いますか?」


「知らん。人形神が喜びそうな事と言えば人形関連だが……大抵の事は自分で何とかするしな。本人に何かリクエストがないか聞いて来てやるよ」


「有難う御座います。では、お願い致します」


 再びヘブロムのアバターがガクリと崩れ落ちた。

 う~ん、なんだかんだで、ヘブロムってば結構面倒見が良いと言うかなんと言うか……

 今度等身大ゴーレム・ウォーズの新しいフィールドでも用意して上げよう。

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